化学品のEPA(FTA)の原産地証明根拠資料作成の注意点

 化学品のEPA(経済連携協定)又はFTA(自由貿易協定)の原産地証明書の根拠資料の作成には、他のカテゴリーの製品と異なる注意点が幾つかあります。
 関税分類変更基準(CTC)を利用した場合を中心に、輸入国税関からの調査(検認)に耐えうる根拠資料を作成するための注意点について見ていくこととします。

目次

原材料表の作成

実際に使用した原材料に基づき対比表を作成する

 原産地証明においては、実際に使用した原材料に基づき対比表をはじめとした根拠資料を作成する必要があります。
 対比表は、製品のHSコードと原材料のHSコードを比較してEPAの原産地基準を満たしていることを証明するための資料です。
 成分表示やSDSを基に原産地証明を行っている場合がありますが、これは誤りです。特に、商社等が生産者の協力を得ることなく原産地証明を行っている場合は要注意です。成分表示やSDSに記載されている原材料は、必ずしも実際に使用された原材料と一致しているわけではありません。
 また、場合によっては、対比表に記載すべき原材料が欠落している場合があります。特に水(水道水は2201.90、精製水は2853.90)が結晶水として残存している場合や、中和や緩衝溶液として使用した酸やアルカリが塩として残存している化学品などは要注意です。化学反応式等から、対比表に記載すべき原材料が網羅されていることを確認する必要があります。

原材料と製品のHSコードが正しいか確認する

 原材料メーカーや通関時のHSコードは間違っていることがあります。特に製品のHSコードについては、輸入国税関に確認しておくと安心です。輸入国の通関業者のHSコードを輸入国側のHSコードであるとしている輸出者がいますが、必ず税関に確認してもらいましょう。
 化学品は製造工程、純度、用途等で同じ物品名でもHSコードが異なることがあります。このような場合には、専門家に確認を行うと良いと思います。
 

対比表記載に記載していない原材料に関する資料を作成する

 貴社が作成した対比表には製造に使用した原材料がすべて記載されていますか?
 もし記載していないとすれば、その理由を説明出来ますか?
 化学品の原産地証明が他の物品の原産地証明と大きく異なる点は、対比表記載の原材料と実際に投入した原材料が一致していないことが多いことです。
 これは、化学品の製造において、通常、溶媒、触媒、その他最終製品に残損しない間接材料(中間的要素)に該当する原材料を使用することが一般的であるためと考えられます。これらの原材料は関税分類変更基準においては、考慮する必要はないとされているので、対比表には記載しないことが多いと思われます。
 ただし、何が間接材料(中間的要素)に該当する原材料であるか否かは税関が決定する、というのが、税関の基本的なスタンスと思われます(少なくとも日本の税関は。)。従って、間接材料に該当する物品については、溶媒、触媒、PH調整剤、脱水剤等、その役割と対比表に記載する必要がない理由を説明できるようにしておきましょう。

製造工程表の作成

 化学品の原産地証明の根拠資料として製造工程表の作成は必須です。製造工程表には必ず生産工場名と工場の住所を記載します。生産工程が複数の工場にまたがる場合には、それぞれの工場で行われる工程が明確になるように製造工程表を作成します。工程表は、製品のパッキングのところまでは作成しておきましょう。
 化学反応が伴う場合には、化学反応式も作成し、対比表に記載した物品が記載すべき原材料を網羅していることを容易に確認できるようにしておきましょう。
 製造工程表には、製造に使用した原材料をすべて記載しておきましょう。そうすると、社内の原材料投入実績表や工程管理表との整合性がとりやすくなります。この際、対比表に記載した原材料とそれ以外の原材料が明確になるように作成しておくと、根拠資料の説明がしやすくなります。

根拠資料で製品のHSコードが説明できるか確認する

 原産地証明の根拠資料を見せてい頂いて、それでは原産地証明を行っている製品のHSコードにはならないのではないか、ということがあります。
 これには、①製品のHSコードが間違っている、②原材料のHSコードが間違っている、③製造工程表が間違っている(不十分である。)、といった理由が考えられます。
 化学品は、原材料の由来、製造工程、純度、添加物の有無等でHSコードが異なることがあるので、論理的に、根拠資料から製品のHSコードが導き出されような資料を作成しておく必要があります。

EPA/FTA原産地証明のコンサルティング

コンサルティング
*原産地証明書の根拠資料の作成方法が分からない。
*JETROや商工会議所に相談したが、原材料のHSコードが分からない。
*輸入国税関から問い合わせが来たが、どのように対応したらよいかわからない。

初歩の初歩から対応いたします。
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