EPA(FTA)の対比表作成に当たって注意すべきこと
関税分類変更基準を用いる際のEPAの原産性を証明する資料のうち、輸出する産品のHSコードと生産に使用した非原産材料(非原産と扱った「材料・部品」)のHSコードを一覧表の形にして対比させるようにした資料の事を、経済産業省及び日本商工会議所では「対比表」と呼んでいます。
関税分類変更基準を用いたEPAの根拠資料では、原材料表(対比表)の原材料に正しいHSコードを記載していくことが非常に重要ですが、これらに記載されているHSコードには多くの誤りがみられることがあります。原材料表のHSコードの誤りがEPAの否認に必ずしも直結するものではありませんので、原材料表(対比表)のHSコードの誤りに気が付かいていない輸出入者の方も多いのではないかと思われます。しかしながら、誤ったHSコードを放置しておくと、いつかは重大な事故につながりかねません。特に、機械類においては、EPAの否認に直行しかねませんので、注意が必要です。
日本商工会議所では、対比表に記載されたHSコードのチェックは行われないと考えて、誤りのない対比表を作成するようにしましょう。
(本稿は、「関税分類変更基準」に関する本ホームページの記事の抜粋です。)
目次
外部の専門家へのHSコード判定の依頼
HSコードに馴染みの無い輸出入者や製造者が使用原材料の一つ一つに正しいHSコードを付けていくことはなかなか難しいのではないかと思われます。各種のHSデータベースを利用することも考えられますが、このようなデータベースでカバーされない物品も多いと思われますし、データベースをうまく使用して正しいHSコードを付けるには、HSコードに関する知識が必要です。出来れば、HSコードに詳しいコンサルタントや通関業者(通関士)等、外部の専門家に依頼する方が安全と考えます。HSデータベースは、HSコードの見当をつける際には非常に有効ですが、データベースのみで最終決定を行うのはリスクがあります。
通関業者に依頼する場合は、信頼のおけるHSコード(関税分類)に詳しい通関士のいる業者に依頼しましょう。通関士も普段扱っている品目ですと良いのですが、馴染みの無い品目ですとそれほど詳しくないことがあるので注意が必要です。
また、外部の専門家に依頼する際には、原材料の成分、スペック等、出来るだけ詳しい情報を提供するようにしましょう。品名だけですと、誤ったHSコードを付けられる原因となりかねません。HSコードは些細なスペックの違いで異なることがあるので注意が必要です。
実際に使用している原材料に基づいて対比表を作成する
ある商社の方から、SDS(安全データシート)を手渡されて、「これでEPA原産地証明ができるでしょうか。」と聞かれたことがあります。化学品の場合、SDSを含めて、成分表では原産地証明を行うことはできません。
同様に、食品の場合も、使用原材料の表示が必要となりますが、食品に表示されている使用原材料表ではEPA(FTA)の原産地証明を行うことは出来ません。
EPA(FTA)の原産地証明を行う際には成分表あるいは食品表示のための原材料表ではなく、実際に生産工場で使用された原材料一覧表が必要となります。
この点、SDSの成分表あるいは食品表示のための原材料表と、EPAの原産地証明で必要となる原材料一覧表を混同されている方が多いようですので、注意が必要です。
(「EPA(FTA)原産地証明における成分表の役割」のページをご参照ください。)
防御的なEPA原産地証明の根拠資料を作成する
一つの物品に対してはただ一つのHSコードが対応すべきですが、しばしば不一致がみられます。(「HSコード(関税分類)の不一致が生じる理由」のページ参照)
しかし、不一致が生じそうな物品は予め想定がつきます。輸入国のHSコードの判断によっては原産性を満足しない可能性がある場合には、防御的なEPA原産地証明の根拠資料を作成しておくことが望ましいと考えられます。このため、輸入国税関から原材料が関税分類変更基準を満たさないという指摘される可能性がある原材料について、以下の準備をしておくことが考えられます。
- 関税分類変更基準を満たさない原材料を自社で生産している場合は、その物品の原材料に遡り証明の根拠資料を作成する。
- 他社で生産した原材料の場合はサプライヤー証明書を入手しておく。
- 僅少材料(許容限度)の規定を満たす場合には、価格資料を整えておく
原材料表には、必ずしも自社に不利となるHSコードを記載する必要はないと考えますが、どのHSコードを記載するにかかわらず、防御的な根拠資料の準備をしておくと良いと考えます。
EPA/FTA原産地証明のコンサルティング
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