商品の製造者は、その商品について一番知識を持っており、提供する情報には誤りはないと一般的には思います。
 しかし、私の経験からは、メーカーの指定するHSコードは必ずしも正しいとは限りません。商社勤務時代のことですが、私が直ぐにメーカー指定のHSコードが誤りであると判断するような明らかな間違いについても、メーカーの担当者は自社の商品のHSコードに自信を持っており、中々誤りを認めてもらえなかったので大変だったことがあります。長年、そのHSコードで輸出入を行っていた場合は、コードを訂正するのが大変という事情もあると思います。
 また、EPA(FTA)の根拠資料となる原材料表(対比表)のHSコードも誤りが多いので注意が必要です。

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メーカーがHSコードを間違える理由

 これまでの経験から、メーカーのHSコードは必ずしも正しいものではありません。日本の企業、外国の企業に限らず、明らかに間違えていたとしても、多くの場合、自ら指定したHSコードは誤りのないものだと主張し、間違いを納得してもらうのは大変です。何年もそのHSコードで輸出入してきたので間違いはないはずだという主張です。
 メーカーがHSコードを誤る場合は、同種の製品と同じHSコードに分類されている場合や、製品の分類にHSコードの専門知識を要する場合が多いようです。税関職員もHSコードに詳しくなければ見過ごしてしまうかもしれません。しかし、正しくないHSコードですので、何らかの機会にHSコードの修正を迫られる可能性があります。 
 メーカー指定のHSコードに誤りが散見される理由は、私の経験からいうと次のような理由が考えられます。 

  1. 業界又は会社の商品分類とHSの分類方法が異なる
  2. HS4桁(項)、HS6桁(号)に掲げられたテキストのみから判断し、分類している。
  3. HS品目表の部注、類注、号注の規定を無視している。
  4. 関税率表解説、関税分類例規等、HS分類に必要な資料を読んでいない、又は、理解していない。

 紛らわしい物品のHSコードの分類とは言え、上記の何れもが、HSコードの分類に関する基礎知識の欠如によるものです。メーカーの担当者はその製品については専門家かもしれませんが、HSコードの分類については専門家ではないと思いますので、その点、ご留意頂ければと考えています。特に、部注、類注の無視といった事例が多いように思います。
 関税率表解説にはHSコードを決定する際に必要な情報が書かれています。部注・類注の規定に精通していなくても、関税率表解説の除外規定を読めば、誤った分類を行うことをある程度避けることが出来ます。HSコードを決定する前に是非一読をお願いします。
 また、EPAの原産地証明の資料として原材料表と加工工程表を提出することがあるかもしれませんが、詳細な商品情報が明らかとなる結果、これまで税関に申告していたHSコードが誤りであることが判明する可能性もあります。日EU・EPAやTPP11(CTTPP)のように自己証明(自己申告)の場合は、税関職員が直接原材料表や製造工程表を見ることとなりますので、HSコードの誤りの指摘も増えることが予想されます。
 商品のHSコードと、原産地証明の根拠資料に齟齬がないか、十分に注意する必要があります。 

輸出国と輸入国のHS番号の違い?

 輸出については、米国のように届出制の国もありますし、日本の税関でも輸出の際にHSコードを十分にチェックしているわけではありません。
 よく、輸出国と輸入国のHSコードが異なっていることがあるといわれますが、メーカーの付けたHSコードが間違っていただけということはかなり多いのではないでしょうか。輸出の際には、税関に厳しくチェックされることは稀なので、通関士の方も不十分な情報に基づいてHSコードを付けている可能性があります。インボイスの品名だけで正確なHSコードを付けていくのは不可能に近いと言えるでしょう。
 どこの国でも、輸入の場合は、税関職員によって厳しくHSコードをチェックされることも多いと思われます。
 もちろん、国によってHSコードが異なる場合はありますが、商品数からいえばむしろ例外的と考えた方が良いのではないかと思います。
 詳しくは、「HSコード(関税分類)の不一致が生じる理由」のページをご参照ください。

EPA(FTA)原産地証明書の原材料表(対比表)のHSコードは誤りが多い

 商社に勤務していた時、EPAを利用する産品が原産地基準を満たしているかどうかを確認するために原材料表を営業部門に提出してもらっていましたが、その原材料表に記載されたHSコードに多くの誤りがみられました。感覚的には、完璧に正しいHSコードが記載された原材料表は半分程度だったと思います。
 関税分類変更基準では、項変更基準か号変更基準が殆どですので、多少原材料のHSコードが間違っていたとしても原産性の認定には影響はない場合も多いのですが、いい加減なHSコードを記載しているといつか大きな事故につながるリスクは大きいと言えるでしょう。特に機械類の場合は、特定の部分品が非原産材料ですと原産地基準を満足しない場合が多いので、注意が必要です。本ホームページの「機械類の部分品のHSコード分類4原則」中の「原則3 特定の機器のみに使用される部分品は機械と同じ項に分類」に該当する部分品は、多くの場合、関税分類変更基準を満たしません。
 日本商工会議所に対して原産品判定依頼を行う際に、関税分類変更基準を用いる場合は原材料のHSコードを記載した表を提出しなければなりませんが、誤ったHSコードを記載した原材料表を提出したとすれば、日本商工会議所は誤った情報に基づいて原産性の判定を行うことになります。
 産品ばかりではなく、原材料表のHSコードも信頼のおける通関業者に依頼して確認してもらう等の対策を講じた方が安心です。
 原材料の納入先から入手したHSコードをそのまま使用する場合でも、少なくとも、輸出統計品目表で明らかなHSコードの間違いがないかどうかは確認しておくべきと考えます。
 当コンサルティングでも、原材料表のHSコードの記載に関するサービスを行っていますので気軽にご相談ください。

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