EPA・FTAの原産地証明と自動車の部分品分類5原則

 関税分類変更基準を用いて自動車及び自動車の部分品の原産地証明を行う場合、生産に使用した部分品・原材料のHSコードを正しく附番していく必要があります。
 自動車及び自動車の部分品のHSコードの附番は、HS品目表の部注、類注及び項の規定に従い行うこととなりますが、これらの規定は難解です。これら難解な規定をFFTAコンサルティングで分かりやすくまとめたのが「自動車等、輸送機器(第17部)の部分品HSコード分類5原則」です。
 ここでは、「自動車等、輸送機器(第17部)の部分品HSコード分類5原則」及び「機械類部分品分類5原則」を適用してEPAの原産地証明を行う際の注意点等について解説していくこととします。

目次

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自動車の部分品分類5原則

自動車の部分品分類5原則の概要は以下の表の通りです。詳しくはこちらをご覧ください。

自動車の部分品の部分品のHSコード

 自動車の場合は部分品の種類が多く、部品の製造業もサプライチェーン上大きな比重を占めています。従って、EPAを利用する上で自動車の部分品の部分品のHSコードについても、どのような原則に従い決定されていくのか理解しておくことは重要です。
 自動車の部分品の部分品のHSコードは、母体となる自動車の部分品のHSコードが上記の「自動車の部分品分類5原則」のどの原則の適用によって決定されたものであるかによって、下記のように決定していきます。

原則1及び原則2が適用される自動車の部分品

 これらは、第84類から第91類に分類されない自動車の部分品です。これら部分品の部分品は当該物品の材質、形状、機能等によりHSコードを決定します。

原則3が適用される自動車の部分品

 原則3が適用される第84類、第85類、第90類及び第91類に該当する自動車の部分品の部分品のHSコードは、「機械類の部分品のHSコード分類5原則」、「測定機器・医療用機器等(HS90類)の部分品HSコード分類5原則」等に従い決定します。
 例えば、自動車のウインドスクリーンワイパーは第8512.40号に分類され、その部分品であるワイパーブレードはウインドスクリーンワイパーの部分品として第8512.90号に分類されます。

原則4が適用される自動車の部分品

 自動車の部分品として第87.08項に分類される物品の部分品のHSコードは、もう一度「自動車の部分品分類5原則」を適用してHSコードを決定します。
 例えば、懸架装置用ショックアブソーバーは、第8708.80号に分類されます。この物品の部分品は通常原則4を適用し第8708.08号に分類されますが、ショックアブソーバーの鉄鋼製のバネは原則1を適用して第73.20号に分類されます。
 なお、第87.08項の号(HSコード6桁)は、2007年の改正でそれ以前と異なっているので、2002年版HSに基づくEPAを利用する際には注意が必要です。詳しくは、下記の「自動車の部分品(第87.08項)の品目別原産地規則とHS品目表改正」の項目をご参照ください。

原則5が適用される自動車の部分品

 例えば、乗用車と自動二輪車に共用の部分品があった場合には、主として使用する物品の部分品として分類するというのがこの原則です。
 例えばツクツクのような三輪自動車は、乗用車として第87.03項に分類されます。その梶取装置として主として自動二輪車に使用するハンドルを使用している場合には、このハンドルは乗用車の部分品としてではなく、自動二輪車の部分品として第87.14項に分類されます。このハンドルの部分品は、自動二輪車の部分品として、自動車等、輸送機器(第17部)の部分品HSコード分類5原則を適用してHSコードを決定します。。

自動車の品目別原産地規則

 自動車(乗用車(第87.03項の場合)の品目別原産地規則は、付加価値基準のみの場合が多くなっています。
 関税分類変更基準を採用しているのは、日・インドネシア協定(CTSH)、日・スイス協定(一般ルール(CTH))、日・シンガポール協定(CTSH)、日・ブルネイ協定(CTSH)、日メキシコ協定(CTH)、日・モンゴル協定(CTH)です。
 自動車は、第87.06項(原動機付きシャシ)、第87.07項(車体)、第87.08項(自動車の部分品)及び第16部のエンジン、モーター等多くの部品から組み立てられます。CTH及びCTSH何れの場合にも部品の組立だけで品目別原産地規則を満たすこととなります。
 多くのEPAで、関税分類変更基準を採用していないのは、自動車は国にとって重要な産業であり、貿易相手国での単なる組立(ノックダウン)ではEPAを利用することが出来ないようにしていると考えられます。

自動車の部分品(第87.08項)の品目別原産地規則とHS品目表改正

2007年HS改正

 自動車の部分品を分類する第87.08項は、2007年のHS改正により号の構成が以下のように変更となっています。 

(変更部分のみ記載)
2002年版HS 2002年版HS
HSコード 号の規定 HSコード 号の規定
8704.40

- ギヤボックス

8704.40

- ギヤボックス及びその部分品

8708.50

- 駆動軸(差動装置を有するものに限るものとし、伝動装置のその他の構成部品を有するか有しないかを問わない。)

8708.50

- 駆動軸(差動装置を有するものに限るものとし、伝動装置のその他の構成部品を有するか有しないかを問わない。)及び非駆動軸並びにこれらの部分品

8708.60

- 非駆動軸及びその部分品

8708.80

- 懸架装置用ショックアブソーバー

8708.80

懸架装置及びその部分品(ショックアブソーバーを含む。)

8708.91

-- ラジエーター

8708.91

-- ラジエーター及びその部分品

8708.92

-- 消音装置及び排気管

8708.92

-- 消音装置(マフラー)及び排気管並びにこれらの部分品

8708.94

-- ハンドル、ステアリングコラム及びステアリングボックス

8708.94

-- ハンドル、ステアリングコラム及びステアリングボックス並びにこれらの部分品

8708.99

-- その他のもの

8708.95

-- 安全エアバッグ(インフレーターシステムを有するものに限る。)及びその部分品

8708.99

-- その他のもの

 2002年版HS品目表においては、第87.08項に属する自動車の部分品の部分品の多くは第8708.99号に分類されていました。しかし、2007年版のHS品目表においては、部分品は完成品と同じ号に分類されることとなりました。

CTSHを採用している協定

 2002年版のHS品目表に基づいて品目別原産地規則が定められている協定のうち、CTSHを採用しているのは、シンガポール、マレーシア、フィリピン(一部品目のみ)、インドネシア、ブルネイとの協定です。
 2002年版のHS品目表では、8708.40(ギアボックス)、8708.50(駆動軸)、8708.80(懸架装置用ショックアブソーバー)、8708.91(ラジエター)、8708.92(消音装置及び排気管)、及び8708.94(ハンドル、ステアリングコラム及びステアリングボックス)の各号にはこららの部分品は含まれていませんでした。これらの自動車の部分品分類5原則の原則4に該当する部分品は、第8708.99号に分類されていましたので、部品を組立てるだけで品目別原産地規則を満たすことが出来ます。

原産地基準の判定は協定に記載されたHS品目表に基づき行う

 現在の2022年版のHS品目表では、これらの物品とその部分品は同じ号に分類されますが、EPAの原産地判定はあくまでも協定に規定されたバージョンのHSコードに基づいて行われます。対比表に記載される原材料のHSコードは、現在適用されているHSコードではなく、協定に規定されたHS品目表に基づくHSコードを確認することが重要です。
 税関ホームページの品目別原産地規則の検索ページのHSコードは、協定に規定されたHSのバージョンで記載されているので、参考にすると良いと思います。

品目別原産地規則のバージョンアップに伴う改正

 2002年版のHS品目表に基づくEPAのうち、日タイEPAと日アセアンEPAは、それぞれCTHと付加価値基準となっていますので、品目別原産地規則をバージョンアップするのにするのに特に問題はありませんでした。
 来年、品目別原産地規則を2022年版のHS品目表に改定する日インドネシアEPAでは、現在の品目別原産地規則はCTSHとなっています。改定後の品目別原産地規則は「CTSH若しくは第八七〇八・四〇号のギヤボックスの部分品からの変更(第8708.40号)」等と規定されており、2002年の協定の内容を変更しないように工夫されています。

EPA/FTA原産地証明のコンサルティング

コンサルティング
*原産地証明書の根拠資料の作成方法が分からない。
*JETROや商工会議所に相談したが、原材料のHSコードが分からない。
*輸入国税関から問い合わせが来たが、どのように対応したらよいかわからない。

初歩の初歩から対応いたします。
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