第17部には、鉄道用車両(第86類)、自動車及び自転車(第87類)、航空機(第88類)及び船舶(第89類)の輸送用機器が分類されます。
 第17部注2及び注3に輸送用機器の部分品及び附属品の分類方法が規定されています。この規定を基に、自動車(第87類)、鉄道用車両(第86類)を含む輸送機器(第17部)の部分品のHSコードの分類について、5原則・1例外にまとめて解説しています。
 第89類(船舶及び浮き構造物)には部分品を分類する項が無いため、変則的な部分品分類4原則となります
 実際の分類に当たっては、該当する部注・類注・項の規定及び関税率表解説の規定に従って下さい。

目次

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原則1 汎用性の部分品は材質により分類

 第17部の輸送機器の部分品についても、第15部注2に規定する汎用性の部分品及びプラスチック製のこれらに類する物品は第17部注2(b)の規定により除外されています。除外される汎用性の部分品についてはこちらをご覧ください。

原則2 第17部注2に規定する物品

 第17部注2に規定する物品は、この部には分類されません。第17部注2に規定する物品の内、第84類、第85類、第90類及び第91類の物品は下記の原則3としてまとめています。原則1の汎用性の部分品及び原則3の物品以外の第17部注2に規定する物品としては、次のようなものがあります。

  • ジョイント、ワッシャーその他これらに類する物品(構成する材料により該当する項又は第 84.84 項)
  • 加硫ゴム(硬質ゴムを除く。)製品(第 40.16 項参照)
  • 第 82 類の物品(工具)
  • 第 83.06 項の物品(ベル、ゴング等)
  • 武器(第 93 類)
  • 第 94.05 項のランプその他の照明器具
  • 車両の部分品として使用する種類のブラシ(第 96.03 項)

原則3 84類、85類、90類及び第91類に特掲されている物品は当該項に分類

 第17部注2(e)~(h)の規定により、第84類、第85類、第90類及び第91類の各項に特掲されている輸送機器の部分品は、それぞれの項に分類されます。
 例えば、自動車用のエンジン(第84.07項又は第84.08項)、エアーコンディショナー(第84.15項)、ウインドスクリーンワイパー(第84.79項)、モーター及び発電機(第85.01項)、蓄電池(第85.07項)、電気式の照明用又は信号用の機器(第85.12項)、速度計、回転速度計その他の機器(第90.29項)、時計(第91類)などは、輸送機器の部分品ではなく、それぞれ特掲された項に分類されます。

第84類に属する部分品の分類(第17部注2(e))

 第84類に該当する物品ついては少し注意が必要です。
 第17部注2(e)には、次の物品が第17部から除外される旨規定されています。

第 84.01 項から第 84.79 項までの機器及びその部分品(この部の物品のラジエーターを除く。)、第 84.81 項又は第 84.82 項の物品並びに第 84.83 項の物品(原動機の不可分の一部を構成するものに限る。)

 逆に言うと、次の物品で輸送機器の部分品として専ら使用されるものについては、当該輸送機器の部分品として分類されます。
 (輸送機器の部分品として専ら使用されるものの定義については、下記原則4を参照)

  • 第84.80項に相当する物品:金属鋳造用鋳型枠、鋳型ベース、鋳造用パターン及び金属、金属炭化物、ガラス、鉱物性材料、ゴム又はプラスチックの成形用の型(金属インゴット用のものを除く。)
  • 第84.83 項に相当する物品(原動機の不可分の一部を構成しないものに限る。):ギヤボックスその他の変速機(トルクコンバーターを含む。)、伝動軸(カムシャフト及びクランクシャフトを含む。)、クランク、軸受箱、滑り軸受、歯車、歯車伝動機、ボールスクリュー、ローラースクリュー、はずみ車、プーリー(プーリーブロックを含む。)、クラッチ及び軸継手(自在継手を含む。)
  • 第84.87項に相当する物品:機械類の部分品(接続子、絶縁体、コイル、接触子その他の電気用物品を有するもの及び第84類の他の項に該当するものを除く。)

 従って、自動車用の変速機は第84.83項ではなく、自動車の部分品として第87.08項に分類されることとなります。
 なお、第84.84項のガスケット、ジョイント、ワッシャー等については、第17部注2(e)ではなく、第17部注2(a)により第17部から除外されています。(原則2参照)

原則4 特定の種類の輸送機器に使用される部分品は当該機器の部分品を分類する項に分類

 特定の種類の輸送機器に使用される部分品は当該機器の部分品を分類する項に分類します。
 第86類から第88類までの機器の部分品は以下の項に分類されます。

  • 鉄道用車両等(第86.01項~第86.06)の部分品:第86.07項
  • 自動車等(第87.01項~第87.07項)の部分品:第87.08項
  • 自転車・自動二輪車等(第87.11項~第87.14項)の部分品:第87.14項
  • 飛行機等(第88.01項~第88.06項)の部分品:第88.07項
  • 本体の機器と同一項に分類する部分品
    • 鉄道用信号機器・線路用の装備品等(第86.08項)
    • 自走式作業トラック等(第87.09項)
    • 戦車・装甲車(第87.10項)
    • 乳母車(第87.15項)
    • トレーラー及びセミトレーラー等(第87.16項)
    • 落下傘(第88.04項)

自動車用の部分品の分類(第87類)

 自動車に使用する部分品は、第87.08項に分類されます。これらには、例えば、次のような物品が含まれます。

  • 組み立てたシャシのフレーム(エンジンを取り付けてないもの)
  • 車体用、エンジン用、歩み板用、蓄電池用又は燃料タンク用等の支持具
  • 床板、側面、前部又は後部のパネル、荷物入れ等、ドア及びその部分品、ボンネット(フード)、枠付きの窓、窓枠、泥よけ(フェンダー)、ダッシュボード、ラジエーター覆い、バンパー及びバンパーガード、ステアリングコラムのブラケット
  • クラッチ
  • トランスミッション、トルクコンバーター、シャフト(原動機の内部部分品を除く。)、ギヤピニオン
  • 駆動軸(差動装置を有するものに限る。)、非駆動軸(前車軸又は後車軸)
  • 推進軸、ハーフシャフト、
  • ステアリングコラムの管、かじ取り用の連接棒及びレバー
  • ブレーキ装置(シュー、セグメント、ディスク等)及びその部分品(板、ドラム、シリンダー、取り付けたライニング、液圧式ブレーキ用の油タンク等)、サーボブレーキ及びその部分品
  • 懸架装置用ショックアブソーバー(摩擦式、液圧式等)その他の懸架装置用部分品(ばねを除く。)及びねじり棒
  • 車輪
  • ハンドル、ステアリングコラム、ステアリングボックス及びハンドルの軸、チェンジレバー、ハンドブレーキレバー、アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダル、ブレーキ用のコネクティングロッド及びクラッチ
  • ラジエーター、消音器(マフラー)、排気管、燃料タンク等
  • フレキシブルなアウターケーシングと可動性のあるインナーケーブルから成るクラッチケーブル、ブレーキケーブル、アクセルケーブルその他これらに類するケーブル。
  • エアーバッグ

 なお、第87類の自動二輪車、自転車、車いす等の部分品は第87.14項に分類されますが、自走式の作業用トラック、戦車、ベビーカー、トレーラー等の部分品は、それらの物品の属する項に分類されます。

機械の部分品の材質によるHSコードの相違

第17部の物品を除外している類に属する材質からなる部分品のHSコード

 下記の物品については、それぞれの部注又は類注により第17部の物品が除外される旨規定されています。従って、これらの材質により制作された機械類の部分品は、本原則により第17部の部分品を分類する項に属することとなります。但し、原則1~原則3により分類される物品は除きます。また、第89類(船舶)には部分品を分類する項が無いので、下記の規定は、第86類~第88類までの車両及び航空機に適用されます。

  • 第39類:プラスチック製品(第86類~第88類まで)
  • 第44類:木材製品
  • 第15部:卑金属製品

第17部の物品を除外していない類に属する材質からなる部分品のHSコード

 第40類(ゴム製品)、第45類(コルク製品)、第48類(紙製品)、第11部(紡織用繊維製品)、第68部(石、セメント、石綿製品)、第69類(陶磁器製品)、第70類(ガラス製品)については、第17部の物品を除外する規定がありません。従って、これらの材質で製作された車両及び航空機の部分品は、これら材質の属する項又は第17部のどちらにも分類される可能性があり、他に特別な規定がない限り、通則3(a)により分類が決定されることとなります。
 なお、第40類の物品のうち、加硫ゴム製品については原則2により、第40類の該当する項に分類されます。

原則5 複数の種類の輸送機器に使用される部分品は専ら又は主として使用する機器の部分品として分類

 複数の種類の輸送機器に使用される部分品は専ら又は主として使用する機器の部分品として分類します。
 例えば、自動車用の部品として専ら使用する部品は自動車の部品として第87類に分類し、鉄道用の車両の部品とし専ら使用するものは、鉄道用車両の部分品として第86類に分類します。
 第17部注3には、次のように規定されています。

第 86 類から第 88 類までにおいて部分品及び附属品は、当該各類の物品に専ら又は主として使用するものに限るものとし、これらの類の二以上の項に属するとみられる部分品及び附属品は、主たる用途に基づきその所属を決定する。

「各類の物品に専ら又は主として使用するもの」とは

 一つの部分品又は附属品が第 17 部とその他の部の機械等の部分品又は附属品と同じ場合は、その主たる用途に基づいて最終的にその所属を決定します。例えば、84 類に属する多くの移動式の機械(フォークリフト、建設用機械、農業用機械等)に使用する操縦装置、ブレーキ装置、道路走行用車輪、泥よけ等は実際には 87 類の車両(トラックター、自動車)に使用するものと同一であり、また、それらの主たる用途は車両用であることから、当該部分品及び附属品は第87類に分類されます。
 また、第17部の二以上の項に属するとみられる部分品及び附属品あは、一種類以上の乗物(自動車、航空機、モーターサイクル等)に使用できるようになっています。そのような物品として、例えば、ブレーキ、操縦装置、車輪、車軸等がありますが、そのような部分品及び附属品は、それらを主として使用する乗物の部分品及び附属品に関する項に分類されます。

例外 より特殊な限定をしている項への分類(通則3(a)の適用)

 他の項において、より特殊な限定をして記載をしている部分品及び附属品として、S品目表の解釈に関する通則3(a)の適用により、第17部に分類されない輸送機器の部分品及び附属品には次のようなものがあります。

  • ゴム製のタイヤ、交換性タイヤトレッド、タイヤフラップ及びインナーチューブ(40.11から 40.13 まで)
  • 革製、コンポジションレザー製、バルカナイズドファイバー製等の工具袋(42.02)
  • 自転車用又は気球用の網(56.08)
  • けん引用の綱(56.09)
  • 紡織用繊維製のじゅうたん(57 類)
  • 枠付きでない安全ガラス(強化ガラス及び合わせガラスに限るものとし、成形してあるかないかを問わない。)(70.07)
  • バックミラー(70.09 又は 90 類。)
  • 乗物の前照灯用で枠付きでないガラス(70.14)及び一般に 70 類の物品
  • 94.01 項の乗物用の腰掛け

番外 第84部~第91部の機器の部分品と特定できない物品の分類

 機械類の部分品のHSコード分類5原則の当該部分をご参照ください。

船舶(第89類)の部分品分類4原則

 第89類に船舶の部分品を分類する項が無いので、船舶の部分品は第89類以外の項に分類されます。
 原則1及び2の適用は、上記の原則と共通です。
 しかし、原則3の適用には注意が必要です。第17部注2(e)により、変速機、クランクシャフト等は第17部に分類する適当な項があれば、自動車用の変速機のように第17部に分類されますが、船舶用の変速機は第89類に船舶の部分品を分類する項が無いので、船舶用の変速機は通常の機械と同じ第84.83項に分類されます。
 また、船舶用のプロペラ及びその羽は、他に該当する項が無いその他の機械の部分品として第84.87項に分類されます。
 原則4では、船舶用の部分品を分類する項が第89類にないことから、船舶用の種々の部分品、附属品はその素材、形状、主たる機能等により分類されます。これらの部分品には次のようなものがあります。

  • 木製の櫓(ろ)及び櫂(かい)(44.21)
  • 紡織用繊維材料製の綱及びケーブル(56.07)
  • 帆(63.06)
  • 船舶用のマスト、昇降口、舷門、手すり及び隔壁並びに船体の部分品で、73.08 項の鉄鋼製の構造物としての特性を有するもの
  • 鉄鋼製のケーブル(73.12)
  • 鉄鋼製のいかり(73.16)
  • プロペラ及び外輪車(84.87)
  • 舵(44.21、73.25、73.26 等)

 なお、船舶の部分品を分類する項が無いことから、「例外」として取扱っている、通則3(a)の適用を考慮する必要はありません。

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