EPA(FTA)の原産地証明制度には、公的な第三者が証明を行う第三者証明制度、政府が認定した輸出者が証明を行う認定輸出者制度、輸出入者又は製造者が自ら証明を行う自己証明制度(自己申告制度)があります。
 これまでのEPAでは主として第三者証明制度が採用されていましたが、日豪EPAにおいて初めて自己証明制度が導入され、最近日本が締結したCPTPP(TPP11)、日EU・EPA及び日米貿易協定では自己証明制度のみが利用可能となっています。
日本が締結しているEPA(FTA)」のページも併せてご覧ください。

日本のEPAの原産地証明制度
証明方法            協   定
第三者証明シンガポール、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、アセアン、フィリピン、ベトナム、インド、モンゴル、オーストラリア、メキシコ、スイス、ペルー、RCEP
認定輸出者自己証明メキシコ、スイス、ペルー、RCEP
輸出者・製造者による自己申告オーストラリア、CTPP(TPP11)、日EU、英国、RCEP(日本、オーストラリア、ニュージーランド相互間輸出入)
輸入者による自己申告オーストラリア、CTPP(TPP11)、日EU、英国、RCEP(日本への輸入時のみ)、日米貿易協定
目次

第三者証明制度

 EPA税率利用する際には、輸出国においてEPAの原産地基準を満たして生産が行われていることを証明する必要があります。この原産地証明を輸出国の公的機関が行うことを第三者証明制度といいます。
 この公的機関が発給する原産地証明書を「特定原産地証明書」又は「第一種特定原産地証明書」と呼んでいます。第三者証明制度では、EPA税率を適用する場合には、特定原産地証明書を提出して輸入申告を行なう必要があります。
 日本では、日本商工会議所が特定原産地証明書を発行しています。第三者証明制度に係る海外の発給機関は、関税法基本通達68-5-14(原産地証明書及び締約国品目証明書の発給機関)に掲載されています。

認定輸出者自己証明制度

  メキシコ、スイス、ペルーとのEPA及びRCEPでは、政府が認定した輸出者が原産地証明書を発行することにより、EPA税率の適用を受ける制度も設けられています。この制度を認定輸出者自己証明制度といい、認定輸出者が発行する原産地証明書を「第二種特定原産地証明書」と呼んでいます。
 認定輸出者に認定されると、日本商工会議所で判定を受けることなく、輸出者自身で原産地証明書を発行できるので、特定原産地証明書発行にかかる手数料や事務負担の軽減を図ることが出来ます。
 認定輸出者の取得については、経済産業省の「認定輸出者制度(第二種特定原産地証明書を作成する者の認定)」のページをご覧ください。

自己申告制度(自己証明制度)

 第三者証明制度と認定輸出者自己証明制度では、原産地証明書の発行にあたり、発行者を指定・認定する等、政府機関が何らかの形で係わっています。一方、自己申告制度では原産地証明書の発行にあたり輸出国政府が関与することはありません。
 自己申告制度は、我が国が締結したEPAでは日豪EPAで初めて採用されました。日豪EPAでは第三者証明との選択制でしたが、TPP(CPTPP)、日EU・EPA、日英EPA及び日米貿易協定においては、自己申告制度のみが利用可能となっています。
 これらのEPAでは、製造者、輸出者、輸入者のうちいずれかがEPAの原産地規則を満たすことを証明する原産地証明書を作成することができ、この証明書のことを我が国では、「原産品申告書」又は「特定原産品申告書」と呼んでいます。
 但し、日米貿易協定では、輸入者による自己申告のみが採用されています。
 自己申告書の作成については、「EPA原産品申告書(自己証明書)の作成方法」のページをご覧ください。
 近年、自己申告制度が採用されることとなった背景には、第三者証明による証明が必ずしも正しいものではないということがあると言われています。
 自己申告制度は、輸出入者等が第三者によらず証明を行う自己証明の一種ですが、認定輸出者自己証明制度との混乱を避けるために、あえて「自己申告制度」という名称を付けたのではないかと筆者は考えています。

第三者証明と自己申告の相違点及び注意事項(まとめ)

 以下に第三者証明と自己申告の相違点をまとてみました。参考にしていただければと思います。

  • 第三者証明及び自己証明共に、作成の最終的な責任は輸出者、製造者又は輸入者にあり、また、証明が否認された場合には、輸入者は税関から関税等が追徴されるほか、加算税等のペナルティーが課されることになります。。
  • 第三者証明の場合に発給機関に虚偽の申告をして特定原産地証明書を取得した場合は、「経済連携協定における特定原産地証明に関する法律」に基づき罰せられることがあります。また、自己証明において虚偽の証明を行った場合は「経済連携協定における申告原産品に係る情報提供等に関する法律」に基づき罰せられることがあります。
  • 第三者証明及び認定輸出者自己証明にかかる特定原産地証明書は、「経済連携協定における特定原産地証明に関する法律」により経済産業省が、自己申告に係る特定原産品申告書は「経済連携協定における申告原産品に係る情報提供等に関する法律」に基づき、財務省が所管しています。従って、輸出国からの問合せには、特定原産地証明書の場合は経済産業省(日本商工会議所)、自己申告に係る特定原産品申告書については、財務省(税関)が一義的に対応していくこととなります。
  • 第三者証明においては、公的機関である第三者が証明者となりますが、その証明が正しいことが保証されているものではありません。最終的には輸出者、輸入者自身で輸出入する産品がEPAの原産地規則を満たしているか否か確認しておく必要があります。確認が不十分な場合、税関事後確認、事後調査等で特定原産地証明書が否認されることがあります。
    特定原産地証明書を入手したらそれで全てOKというわけではありません。)
  • 自己証明では、公的な第三者の確認を受けていないことから、第三者証明と比べてリスクが高いと判断され、輸入国税関による事後確認(検認)が飛躍的に増加することが想定されます。輸入国税関からの問い合わせに備えて、証拠書類の準備をしておくことをお勧めいたします。

貴社の原産地証明書に間違いはありませんか?

原産地証明の根拠資料として必要な原材料表・対比表中のHSコードには多くの誤りが見受けられます。
間違ったHSコードに基づき日本商工会議所から特定原産地証明の発給を受けている場合、輸入国税関の事後確認(検認)によりEPA(FTA)税率の適用が取り消され、貴社の信用が失墜することは勿論、輸出先から損害賠償を提起される恐れがあります。
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