日EU・EPA日英EPACPTPPTPP11)等を利用する際に必要な原産品申告書の作成方法について解説します。輸出入者及び生産者が自らの責任で作成する原産地証明書を「原産品申告書」といいます。また、原産品申告書は、「自己証明書」、「自己申告書」と呼ばれることもあります。
 原産品申告書の作成自体はそれ程難しいものではありません。日EU・EPA及び日英EPAの場合は輸出インボイス等の商業上の文書に協定上の申告文を記載するだけです。また、CPTPPは、任意の様式で記載することが可能ですが、税関ホームページに必要記載事項を網羅した英文様式が掲載されていますので、これを利用すれば比較的簡単に原産品申告書を作成することができます。
 但し、産品の原産性の確認を十分に行わずに、安易に原産品申告書を作成したり、代行業者に作成を依頼したりすることは危険です。
 輸入国税関の事後確認(検認verification)で原産性を否認されると、輸入者から追徴された関税やペナルティーについて損害賠償を請求される可能性があります。また、そもそも、虚偽の原産品申告書を作成することは違法です。(「経済連携協定に基づく申告原産品に係る情報の提供等に関する法律」第11条~第13条)
 さらに、EPAの原産品であることを証明する際に使用した証拠書類を協定で定められた期間、保管しておく必要があります。原産品申告書の作成は、税関の事後確認に対応できて完了といえるものです
 では、原産品申告書作成のための手順を以下のステップ毎にみていくことにしましょう。

目次

Step1 原産品申告書基礎資料の作成

 ここでは、原産品申告書の作成に入る前の準備として、産品のHS番号の確定、品目別規則の確認等の作業について説明し、その後、原産品申告書を作成するための基礎資料の作成方法について説明します。
 このステップは、第三者証明制度を利用する際も同じです。

1.産品のHSコードを確認する

 まず、輸出しようとする産品のHSコードを確定します。これまで輸出実績があったとしてもそのHSコードを頭から信用するのは禁物です。HSコードを決定する権限はあくまでも輸入国税関にあります。輸出者(製造者)がHSコードを間違えている場合や、輸入国の通関業者が間違ったHSコードで申告している場合、輸入者が勝手に低い税率のHSコードで申告している場合もあります。その他、種々の理由でHSコードの不一致が生じる場合があります。少しでも不安があれば、輸入者に税関でHSコードを確認してもらいましょう
 もし、過去に関税分類に関してトラブルのあった産品や、輸出者の指定するHSコードと輸入時のHSコードが異なっている場合には、関税分類の事前教示を受けてHSコードを確定しておくと安心です。関税分類の事前教示は多くの国で制度として実施されています。
 HSコードが違えば、適用される原産地規則が大きく異なる場合(特に日EU・EPAの繊維製品)がありますので、注意しましょう。

EPAで規定するバージョンのHSコードを確かめる

 また、EPAの各協定では、基準となるHSのバージョンが規定されているので、現在と異なる分類となっていることがあります。(各EPAのバージョンはこちら
 現在、各国の関税率表と統計品目表は2022年版のHSコードを使用しています。
 日EU・EPA及び日英EPAは2017年版ですが、CTPPは一つ古い2012年版を使用しています。
 日EU・EPAと日英EPAでは、WCOのホームページの2022年HS改正に伴う相関表(Correlation Tables HS 2022– 2017 )にて、HSコードに変更が生じていないかどうか、変更が生じている場合には、2017年版のHSコードを確認しておきましょう。
 CTPPを利用する場合は、さらに、2017年HS改正に伴う相関表(Correlation Tables HS 2017– 2012)も活用して2012年版のHSコードを確定します。
 HS品目表(HSコード)の改正とEPA(FTA)の基準年についてはこちら

原産地証明を行う物品の範囲を確定する

 機械類を輸出する場合などにおいては、附属品や予備部品を本体と一括分類するか否かを決定する必要があります。また、機械を組立てないで、或いは、分解して輸出する場合においては、原産地証明を行う物品の範囲を確定する必要があります。
 このような場合の取扱いについては、「原産地証明の単位と関税分類の単位」のページで詳しく解説していますのでご参照ください。

2.輸出相手国の関税率の確認

 HSコードが確定したら、ワールドタリフで輸出相手国の関税率を調査します。
 ワールドタリフは稀に間違いがあるという話ですので、各国政府のホームページを参照するか、輸入者に確認すると良いと思います。EU向けの輸出の場合は、欧州員会の関税率検索サイトであるTARIC consultationが利用できます。
 EPA税率が通常の税率(MFN税率)より低い場合のみ、EPAを利用します。
 ワールドタリフはJETROのサイトから登録すると、日本国内から無料で利用できます。

3.品目別規則の確認

 EPAを利用することを決定したら、税関ホームページの品目別原産地規則の検索で、産品のHS番号(6桁)に対応する品目別原産地規則を調べます。
 産品の品目別規則が判明したら、原材料表と製造工程表を作成しましょう。
(当ホームページの記事は、付加価値基準については積み上げ方式(TPP等)及び純費用方式(TPPのみ)には対応していません。)

4.原材料表を作成する

  産品の製造に直接使用する原材料・部品をリストアップしましょう。
 リストアップが終わったら、原材料・部品一つ一つにHSコードをつけていきます。
 もし、HS番号がわからなければ、通関業者に聞く、又、税関相談官に照会することもできます。
 原材料一覧表(対比表)のHSコードは誤りが多いので注意しましょう。
 当コンサルティングにご用命頂くことも可能です。
 品目別規則に付加価値基準しかない場合など、付加価値基準を使用することを予め決定している場合には、原材料表にはHSコードの代わりに輸入通関価額(CIF価額)又は調達価格を記載します。輸入通関価額は、関税評価条約に基づく価格であり、インボイス価格と異なる場合があるので注意しましょう。
 原材料表は、実際に使用した原材料に基づいて作成する必要があります。ある輸出者は製品安全データシート(SDS)に基づいて根拠資料となる原材料表を作成していました。原料として幾つかの化学品を混合した調製品が使用されている場合、根拠資料に記載する原材料のHSコードは、その調製品HSコードであり、SDSに記載された個々の物質のHSコードではありません。 

5.製造工程表を作成する

 簡単な製造工程表を作成します。
 製造工程表には、必ず製造工場名及びその所在地を記載します。
 複数の工場にまたがっている場合には、それぞれの工場でどの工程が行われているかがわかるように記載しましょう。
 製造工場名及び所在地を記載するのは、産品の製造が日本で行われたことを証明するためです。製造の工程で海外の工場が含まれる場合は、累積の規定を利用できる場合を除き、輸入後の製造のみでEPAの原産地基準を満たしていることの証明を行う必要があります。下記の事例では、最後の日本での製造工程(非原産材料M2と材料Nから産品Pの製造)のみを作成すればよいことになります。

 製造工程表作成の際に注意すべきことは、製造工程が産品のHS番号と矛盾しないようにすることです。もし、現実の製造工程がHSで規定されている工程と異なる場合は、HSコードが間違っている可能性があるので注意しましょう。
 また、加工工程基準を用いる場合は、原産地基準を満たしていることが明らかになるような工程表が必要です。

Step2 使用する原産地基準を決定する

 原産地判定に必要な基礎資料ができたら、使用する原産地基準を決定し、その原産地基準を満たしているかどうかを確認します。

1.原産地基準を決定するに当たり考慮すべき事項

 品目別規則に複数の原産地基準がある場合、使用する原産地基準を決定する必要があります。単発の輸出であればどの原産地基準を利用しても大きな違いはありません。まず、自社の知識で簡単に証明できる原産地基準を利用しましょう。
 しかしながら、恒常的に輸出する場合、使用する原産地基準により後々の事務処理や証明の負担に大きな違いが出てきます。この場合、原産地基準の決定に当たり考慮すべきことは以下の事項です。

 a.証明に必要な情報が入手出来ていること
 b.原産品申告書発行の都度、原産性を満たしているか否か検証する必要がないこと
 c.保管すべき証拠書類が少ないこと
 d.税関への説明が容易であること

 a.は、これが出来ていないと通常、原産品申告書を作成することはできませんので、全ての原産地基準の条件に当てはまります。a.の条件を満たさない場合として、サプライヤー証明書により原産地基準を満たしていることを証明している場合で、企業非秘密等の理由により情報開示を受けていない場合があります。その際は他社に証明行為を依存していることとなり、リスクが高くなりますので留意しましょう。
 一般に、関税分類変更基準は上記の条件をすべて満たすことから、使用する原産地基準を決定する際には第1選択肢としましょう。
 付加価値基準は上記のb.~d.の条件を満たさないことから、出来るだけ避けた方良いと考えています。
 加工工程基準は、一般に上記のa.~c.の条件を満たしますが、説明に専門的な知識を要することが多く、税関職員もそのような専門知識は一般的には無いと思われることから、関税分類変更基準を満たす場合は避けた方が良いと思います。なお、一般の方には関税分類変更基準も十分に専門的かと思われるかもしれませんが、税関職員はその辺はプロですので、税関への説明の際に関税分類変更基準を用いて説明に苦労することは一般的にはないと思います。
 EPAの解説書・解説記事では、原産品申告書の作成者にどの基準を採用するか、優劣を付けることなく原産品申告書の作成者に委ねている場合が多いと思われます。当コンサルティングでは、後々の輸入国税関等による事後確認(検認)も想定して、下記の通り関税分類変更基準を第1選択肢として、原産地基準を決定していくことをお勧めしています。

2.全ての原材料が関税分類変更基準(CTC)を満たすか否か確認する

 産品のHSコードとStep1 の「4.原材料表を作成する」で作成した原材料表のHSコードを比較して品目別原産地規則に定められた関税分類変更基準を満たすかどうか調べます。関税分類変更基準には、
  CC:HSコードの上2桁の番号の変更が必要
  CTH:HSコードの上4桁の番号の変更が必要
  CTSH:HSコードの6桁の番号の変更が必要
があります。
 まずは、原料を国内で調達したか、外国から輸入したかに関わらず、全ての原材料についてHSコードを調査し、関税分類変更基準を満たすか否か調査します。もし、全ての原材料が関税分類変更基準を満たしている場合は、全て「非原産材料とみなして」証明を行います。
 また、使用する原料に条件がついている場合は、その条件を満たしているかどうかも調査しましょう。

3.加工工程基準を満たすか否か確認する

 関税分類変更基準を満たさない場合、もし、産品の品目別規則に加工工程基準があれば、加工工程基準を満たすか否か調査しましょう。加工工程基準を満たす場合は、加工工程基準を採用します。
 なお、日EU・EPAでは、繊維製品の殆どが加工工程基準のみとなっています。

4.関税分類変更基準を満たさない原材料が原産材料である場合

 関税分類変更基準を満たさない原材料が日本で製造されている場合は、その原材料がEPAの原産地規則を満たしているか否か調査しましょう。もし、その原料がEPAの原産地規則を満たしている場合は、原産材料として、関税分類変更基準の適用にあたっては無視することができます。
 また、原材料が全て原産材料の場合は、「原産材料のみから生産される産品」となります。
 この場合、通常、原料の調達先から「サプライヤー証明書」を入手することになりますが、原産材料である旨の宣誓書だけでは不十分です。輸入国税関による事後確認(検認)の際には、原産材料と申告した原材料が本当に原産材料であるか否かの確認が行われることは十分に想定されます。
 税関による事後確認に備えて、原産材料についてもEPAの原産地規則を満たすことを確認しておくことが必要です。企業秘密等の関係で確認ができない場合は、税関の事後確認(検認)の際には協力する旨の確約を得ておきましょう。
 これらの原産材料の価額等が「僅少の非原産材料(許容限度)(デミニミス)」の規定を満たす場合は、原産材料として証明を行うのではなく、デミニミスの規定を用いて証明することも検討しましょう。特に企業秘密等でサプライヤー証明書の内容確認できない場合は大きなリスクとなりますので、デミニミスの規定の採用の方がより安全と考えられます。

5.関税分類変更基準を満たさない原材料がEPA締約国の原産品である場合

 他のEPA締約国の原産品を原材料として使用する場合は、我が国の原産材料と見なすことができます。(累積
 もし、当該原材料の輸入申告の際の原産品申告書、原産品申告明細書等の関係書類を入手できれば、それを証拠書類とすることが可能です。もし、入手できない場合は、上記の原産材料のサプライヤー証明書と同様の対応が必要となります。

6.僅少の非原産材料の規定(デミニミス)を利用する

 関税分離変更基準を満たさない非原産材料が、産品の価額の10%(協定、品目によって基準が異なるので、使用する協定で確認のこと)以下の場合には、産品が原産品であるか否かを決定する際には考慮しないという、僅少の非原産材料(許容限度)の規定が設けられています。
 この規定を利用する場合は、僅少の非原産材料の価額に関する資料が必要となります。

7.付加価値基準を満たすか否か確認する

 上記2.から6.で原産地基準を満たさない場合で、産品のHS番号の品目別原産地規則に付加価値基準がある場合に、産品が付加価値基準を満たすか否か調査します。
 付加価値基準を利用する際には、産品の価額、原材料等の価額に関する資料が必要となります。
 控除方式、MaxNOM方式の場合、計算上は、産品の価額と非原産材料の価額のみが必要となります。しかしながら、事後確認の際には、当然、原産材料であると申告した産品に対しては、本当に原産材料であるかどうかの確認があることは想定されます。日EU・EPAの協定上、原産材料の価額も検認対象となりえることが明記されているので留意しましょう。

Step3 原産品申告書の作成

 使用する原産地基準が確定したら、次にいよいよ原産品申告書を作成します。
 使用する原産地基準さえ確定すれば、原産品申告書の作成は難しいものではありません。

1.日EU・EPAの原産品申告書の作成

 日EU・EPAの原産品申告書は、インボイス等の商業上の書類に協定で定められた下記の申告文を記載することにより行われます。協定上は日本語での記載も可能ですが、現実問題としてインボイスは英語で作成されると思いますので、申告文も通常は英語を使用します。

(Period: from …………… to …………(1))

The exporter of the products covered by this document (Exporter Reference No ………(2)) declares that, except where otherwise clearly indicated, these products are of ………… preferential origin(3).

(Origin criteria used(4)) ……………………………………………………………………………………………………

(Place and date(5)) …………………………………………………………………………………………………

(Printed name of the exporter) …………………………………………………………………………………………………

 (1)の期間欄は、複数回有効の原産品申告書の場合に、その有効な期間を記載するもので、インボイスに申告文を記載する場合はブランクのままにしておきます。
 (2)の「Exporter Reference No 」欄には証明者の法人番号(行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(いわゆる「マイナンバー法」)第 2 条第 15 項に規定する法人番号(13 桁))を記載します。
 (3)には、日本からの輸出の場合は、「Japan preferential origin」と記載します。
 (4)には、使用する原産地基準の記号を記載します。(下記3の表参照)
 (5)の欄は、インボイスに場所、日付、輸出者の名前が記載されている場合は省略可能です。

 日EU・EPAについては、税関ホームページに「自己申告書の手引き(日EU・EPA)」が掲載されています。この手引きには、以前のバージョンのように具体的な記載事例は掲載されていません。その代わり、インボイス以外の商業上の書類についての解説、輸出者ではなく製造者が証明を行う際の申告文の記載方法、複数回有効の原産品申告書の作成方法についての解説があります。
 また、2020年2月に開催された、公益法人日本関税協会一般社団法人日本通関業連合会一般社団法人日本貿易関係手続簡易化協会(JASTPRO)及び駐日欧州連合(EU)代表部共催の「日EU・EPA発効1周年記念セミナー」において、インボイス以外の文書への原産品申告文の記載方法等の事例が具体的に解説されていますので、当該セミナーの配布資料及び本サイトの質疑応答に関する記事をご参照ください。

原産品申告書作成者は法人番号を国税庁英語版サイトへ登録

 税関ホームページに、日本の輸出者・生産者が日EU・EPAの原産品申告書(原産地の自己証明書)を作成する場合に、国税庁法人番号公表サイト(英語版Webサイト)に法人番号を登録するようにとの案内文書が掲載されています。
 国税庁法人番号公表サイト(日本語版Webサイト)には、法人番号についての情報が公表されていますが、英語版サイトには輸出者(生産者)が登録手続きを行わない限り法人番号についての情報が掲載されないそうです。
 EUの税関当局は、国税庁法人番号公表サイト(英語版Webサイト)を参照して法人番号の確認を行っているとのことです。法人番号の確認が行えないと、EU税関の原産地証明に関する事後確認(検認)に支障が出る恐れがあり、最悪の事態を想定すれば、EPA特恵関税の否認という事態も考えられますので、日EU・EPAの原産品申告書を作成して輸出を行っている場合は、登録をお勧めいたします。
 国税庁への登録方法につきましては、こちらをご覧ください。 

2.CPTPPの原産品申告書の作成

 CPTPPの原産品申告書は、任意の様式に下記の事項を記載することが定められています。

  1. 証明者:輸出者、生産者又は輸入者のいずれであるかを記載
  2. 証明者の氏名又は名称、住所(国名を含む。)、電話番号及び電子メールアドレス
  3. 輸出者の氏名又は名称、住所(国名を含む。)、電子メールアドレス及び電話番号を記載する(輸出者が証明者と異なる場合に限る。)。
  4. 生産者の氏名又は名称、住所(国名を含む。)、電子メールアドレス及び電話番号(証明者又 は輸出者と異なる場合に限る。)
  5. 輸入者の氏名又は名称、住所、電子メールアドレス及び電話番号
    (不明の場合は省略可)
  6. HS番号6桁、品名、仕入書の番号
  7. 原産性の基準
  8. 包括的な期間 (同 一の産品の二回以上の輸送を対象とする場合)
  9. 正規の署名及び日付
  10. 次の誓約を付記する。
    「私は、この文書に記載する産品が原産品であり、及びこの文書に含まれる情報が真正かつ正確であるこ とを証明する。私は、そのような陳述を立証することに責任を負い、並びにこの証明書を裏付けるために 必要な文書を保管し、及び要請に応じて提示し、又は確認のための訪問中に利用可能なものとすることに 同意する。」

 中々大変そうに思われる方もいらっしゃると思いますが、税関ホームページに掲載されているTPP用の英文の原産品申告書の様式は、上記の情報を網羅したものになっていますので、この書式をダウンロードし、記載していくことにより、原産品申告書が完成します。
 記載例については、税関ホームページの「自己申告の手引き」(日豪EPA・TPP)にある原産品申告書の記載事例を参考にしていただければと思います。
 なお、使用する原産品申告書に記載する原産地基準に関する記号は下記の表を参考にしてください。

(参考)TPP用の英文の原産品申告書の様式(Word文書)ダウンロード
    上記の原産品申告書の日本語版には、記載要領が掲載されています。
     (Word文書)ダウンロード

3.原産品申告書で使用する原産地基準に関する記号

 CPTPPと日EU・EPAの原産品申告書に使用する原産地基準をの記号を下記に纏めましたので、参考にして下さい。

Step4 事後確認に備えた証拠書類の作成

 事後確認に備えた証拠書類の保管に関しては、経済産業省のホームページに「原産性を判断するための基本的考え方と整えるべき保存書類の例示」がありますので、参考にしてください。
 ただし、この例示にとらわれることなく、これまでの原産性の判定に使用した資料は全て保管しておく必要があります。

1.原産地基準判定の根拠資料を整理する

 これまでの原産地基準を満たしているかどうかを確認する作業の中で作成した資料(原材料表、製造工程表等)は、原産性判定の根拠資料として整理して保管します。

2.総括説明資料を作成する

 自己申告制度を利用して輸入申告する際に「原産品申告明細書」を税関に提出しなければなりません。輸出の際に自己申告書を作成した場合、これと同様な資料を上記1.の根拠資料を基に総括説明資料として作成しておくと良いでしょう。
 この資料には、下記の事項を記載しておきます。

  • 産品の名称
  • 産品のHS番号6桁
  • 使用したEPA
  • 当該HS番号の品目別原産地規則
  • その内、使用した原産地基準
  • 製造工場名及び所在地
  • 根拠資料から原産地基準を満たしていることを証明した論拠

3.輸出管理資料を作成する

 同一の産品は繰り返し輸出することになると思いますが、特に関税分類変更基準や加工工程基準を採用した場合は、原料や製造方法に変更がない限り、上記1.及び2.の資料は繰り返し使用することができます。
 輸入者からの問合せや税関の事後確認の際にスムーズに対応するために、2.の総括説明資料の添付書類として、輸出管理資料を作成しておくとよいと思います。
 管理資料の記載項目は会社の実情に応じた項目となるでしょうが、原産品申告書を作成した日付、インボイス番号、輸出相手先は記載しておいた方がよいのではないかと考えます。
 なお、付加価値基準の場合は、理想を言えば輸出の都度、原産地基準を満たしていることを証明する資料を作成しておくのが望ましいと考えられます。

【参考】日EU・EPAの証拠書類

 日EU・EPAでは、第三・二十一条(原産品であるかどうかについての確認)第2項で税関の事後確認の際に要求される情報が下記の通り規定されています。協定上、これらの情報以外のことは求められません(自主的に追加情報を提供することは可。)が、先に示した経済産業省のホームページに「原産性を判断するための基本的考え方と整えるべき保存書類の例示」と若干異なる部分もあり、協定に従い必要とされる情報を整理して保管しておく必要があります。

(a) 原産地に関する申告が第三・十六条2(a) に規定する関税上の特恵待遇の要求の根拠である場合には、 当該原産地に関する申告
(b) 産品の統一システムの関税分類番号及び用いられた原産性の基準
(c) 生産工程についての簡潔な記載
(d) 原産性の基準が特定の生産工程に基づくものである場合には、当該生産工程についての具体的な記載
(e) 該当する場合には、生産工程において使用された原産材料及び非原産材料についての記載
(f) 原産性の基準が「完全に得られるものであること」である場合には、該当する区分(収穫、採掘、漁ろう、生産された場所等)
(g) 原産性の基準が価額方式に基づくものである場合には、産品の価額及び生産において使用された全ての非原産材料又は価額の要件の遵守を確保するために適当なときは生産において使用された原産材料の価額
(h) 原産性の基準が重量に基づくものである場合には、産品の重量及び産品に使用された関連する非原産材料又は重量の要件の遵守を確保するために適当なときは産品に使用された原産材料の重量
(i) 原産性の基準が関税分類の変更に基づくものである場合には、全ての非原産材料の一覧表であって、当該非原産材料の統一システムの関税分類番号(原産性の基準に基づく二桁番号、四桁番号又は六桁番号の様式によるもの)を含むもの
(j) 第三・十条に規定する変更の禁止に関する規定の遵守に関連する情報

 上記の(a)から(c)及び(j)に関する情報は全ての産品に必要な情報です。
 (d)は加工工程基準、(f)は完全生産品、(g)は付加価値基準、(i)は関税分類変更基準の場合に必要な情報です。(e)は原料に原産材料を使用して生産した(として証明を行った)場合に該当します。(h)は原産性の基準が重量に基づくものである場合が該当します。

4.情報を輸入者(輸出相手先)と共有する

 税関の事後確認は、通常、先ず、自国に所在する輸入者に対して行われると考えられます。輸入者が税関に産品が原産地規則を満たすことを説明できれば、そこで事後確認は終了します。
 できれば、輸出相手先に上記1.及び2.の根拠資料と総括説明資料を英訳したものを提供しておけば、輸入国税関から事後確認を受ける確率を大きく下げることができるでしょう。 

5.輸入者に根拠資料を提供できない場合

 企業秘密等で輸入者に根拠資料を提供できない場合は、事後確認の際に、直接、輸入国税関に情報提供することになります。

(1) 日EU・EPA

 税関から輸入者に対し事後確認が行われた際、輸入者から根拠資料の提出要請があると思いますが、企業秘密等で輸入者に情報提供できない場合は、協定上、直接輸入国税関に資料を送付することができるようになっています。
 輸入者から情報提供依頼が来た場合、英文資料の作成を避けるために、直接輸入国税関に回答せずに、輸入国税関に日本国税関が調査を行うように依頼することを申し出ることも協定上は可能な場合もあると考えます。しかし、日本の税関職員は生真面目ですので、輸入国税関に資料を送付すれば簡単に済んだものが、日本の税関に調査してくれるように依頼したばかりに詳細な調査が行われる可能性もあります。どうしても、輸入国に企業秘密を提供できない場合、輸入国税関との見解が分かれる場合など、特殊な場合を除いてお勧めできる方法ではありません。

(2) CPTPP

 輸入国税関から原産品申告書作成者に直接、メール、文書等で質問が来ることになると思われます。
 某社で、メキシコ税関から原産地証明に関する質問状が届いたが、会社宛てに届いたので、事後確認に関する書類とは気付かずに、2週間ほど宛先不明文書として保管され、貴重な回答書作成のための時間を空費したという話も聞きましたので、注意しましょう。
 原産品申告書には、証明者の住所、電話番号、E-メール番号を記載することになっています。これからは、輸入国税関からの質問もE-メールで行われることが想定されます。原産品申告書に記載するE-メール番号は、担当者の個人のE-メール番号を記載することは避け、部門メール等、輸入国税関からの照会が来たらすぐに対応できるようにしておきましょう。

日EU-EPA/TPP11の原産品申告書作成のアドバイス

コンサルティング
日EU・EPAやTPP11の原産品申告書の作成についてついてお困りではありませんか?
これまでの日本商工会議所が発給する特定原産地証明書と異なり、日EU・EPAやTPP11の原産品申告書では、第三者によるチェックがありません。
簡単に作成できますが誤った原産品申告書の作成した場合は、損害賠償のリスクや顧客からの信用失墜など大きなリスクがあります。
原産品申告書の作成に必要な根拠資料の作成から輸入国税関の調査に備えた書類の保存迄、初歩から丁寧にアドバイスいたします。
作業に着手するまでのご相談は無料です。お気軽にお問合せください。