EPA/FTAにおいては、多くの場合、附属品、予備部品及び工具等の取扱いについても規定されています。一般的には、附属品、予備部品及び工具は関税分類変更基準及び加工工程基準の場合は考慮せず、付加価値基準の場合は考慮する、というものです。しかしながら、協定によっては、別の規定となっている場合がありますので、利用する協定の規定に従い対応する必要があります。
目次
日EU・EPAの取扱い
機械の附属品・工具・予備部品・解説資料等の原産地規則上の取扱いについては日EU・EPA第3・12条では次のように規定されています。
- 附属品、予備部品、工具及び解説資料その他の資料は、次の場合には、この条の規定の適用の対象となる。
- 附属品、予備部品、工具及び解説資料その他の資料が、産品に含まれるものとして分類され、及び当該産品と共に納入されており、並びにその仕入書が当該産品の仕入書と別立てにされていない場合
- 附属品、予備部品、工具及び解説資料その他の資料の種類、数量及び価額が産品について慣習的なものである場合
- 産品が完全に得られたものであるかどうか又は産品が附属書三Bに定める生産工程の要件若しくは関税分類の変更の要件を満たすかどうかを決定するに当たり、附属品、予備部品、工具及び解説資料その他の資料については、考慮しない。
- 産品が附属書三Bに定める価額の要件を満たすかどうかを決定するに当たり、当該産品に価額の要件を適用するための算定において、附属品、予備部品、工具及び解説資料その他の資料の価額を場合に応じて原産材料又は非原産材料として考慮する。
- 産品の附属品、予備部品、工具及び解説資料その他の資料は、これらと共に納入される当該産品の原産品としての資格と同一の資格を有する。
上記の既定の1.は、附属品、予備部品、工具及び解説資料その他の資料を本体の産品と一括して原産地証明を行うための条件を規定していると考えられます。
2.では、本体の産品が完全生産品である場合又は関税分類変更基準及び加工工程基準を用いて原産地証明を行う際には、附属品、予備部品、工具及び解説資料その他の資料については考慮する必要が無いことを規定しています。
3.では、付加価値基準を用いる場合は、附属品、予備部品、工具及び解説資料その他の資料が原産品であるか又は非原産品であるかに応じてその価額を付加価値基準を計算するときに用いることを規定しています。
4.では、上記2.及び3.の規定も踏まえ、本体の産品が原産品であると証明できた場合は、産品の附属品、予備部品、工具及び解説資料その他の資料も原産品であることを規定しています。
TPP(TPP11)の取扱い
TPP(TPP11)では、第3.30条において、附属品、予備部品、工具及び解説資料その他の資料について、次のように規定されています。
- 各締約国は、次のことを定める。
- 産品が、完全に得られるかどうか又は附属書三-D(品目別原産地規則)に定める加工の要件若しくは関税分類の変更の要件を満たすかどうかを決定する場合には、3に規定する附属品、予備部品、工具又は解説資料その他の資料については、考慮しないこと。
- 産品が域内原産割合の要件を満たすかどうかを決定する場合には、当該産品の域内原産割合を算定するに当たり、3に規定する附属品、予備部品、工具又は解説資料その他の資料の価額を場合に応じて原産材料又は非原産材料として考慮すること。
- 各締約国は、産品の3に規定する附属品、予備部品、工具又は解説資料その他の資料が当該産品と共に納入される場合には、原産品としての資格を有することを定める。
- 附属品、予備部品、工具及び解説資料その他の資料は、次の場合には、この条の規定の適用の対象となる。
- 附属品、予備部品、工具及び解説資料その他の資料が、産品に含まれるものとして分類され、及び当該産品と共に納入され、並びにその仕入書が当該産品の仕入書と別立てにされない場合
- 附属品、予備部品、工具及び解説資料その他の資料の種類、数量及び価額がに規定する産品について慣習的なものである場合
TPPにおいても、完全生産品である場合又は関税分類変更基準及び加工工程基準を用いて原産地証明を行う際には、附属品、予備部品、工具及び解説資料その他の資料については考慮する必要が無いこと、付加価値基準を用いる場合は、附属品、予備部品、工具及び解説資料その他の資料が原産品であるか又は非原産品であるかに応じてその価額を付加価値基準を計算するときに用いることを規定しています。
その他のEPA/FTAの規定
その他の第3者証明のEPA/FTAにおいても同様の規定が設けられています。
RCEPにおいても、同様の取扱いとなっています。
しかし、メキシコ協定では加工工程基準についての規定はなく、チリ協定では、付加価値基準であっても考慮しないとされています。
附属品等に関するHS品目表と原産地規則の規定との関係
上記の附属品、予備部品、工具及び解説資料等の規定は、輸入の際に常に適用されるわけではありません。この規定の適用に際しては、次のような条件が設けられています。
- これらの物品が本体の産品と一体となって関税分類されること
- 本体の産品と一緒に輸入されること
- 本体の産品と同一のインボイスに記載されていること
- これらの物品の種類、数量及び価額が本体の産品の取引において慣習的なものである場合
ここで注意が必要なのは、常に附属品、予備部品、工具及び解説資料等が本体の産品と一体となって分類されるとは限らないことです。
どのような場合に、これらの物品が本体産品と一体となって分類されるかについては、HS品目表のリーガルテキスト(品目表の部注、類注、項の規定)には明示的な規定はなく、関税率表解説(Explanatory Notes)においてこれらは本体と一括して分類することが出来る旨記載されています。ここでは、我が国の取扱いをご紹介したいと思います。国によって具体的な取扱いが異なる可能性があるので注意が必要です。
原産地規則とHS品目表との関係については、「EPA(FTA)の原産地証明と関税分類の単位」のページもご参照ください。
附属品、予備部品、工具等の我が国の関税分類上の取扱い
第16部の国内関税分類例規には、附属品、予備部品、工具等の関税分類について次のように取り扱うこととされています。
- 次の各項に掲げる物品が、機械の輸入に際し、輸入者の特別の注文によることなく、当該機械の製造者又は販売者により通常提供されるものであることが明らかである場合においては、a.からd.までの各項に掲げる物品については、これらの種類、寸法等が異なるごとに1個又は1組(同一の物品が同時に多数使用されるものである場合には、その同時に使用される個数までとする。以下同じ。)を、またe.からi.までの各項に掲げる物品については、通常さし当たり必要であると認められる数量までのものを当該機械に一括分類することとする。
- 当該機械の予備部分品(伝動用ベルトその他のはん用性の部分品を含む。)
- 当該機械に使用される互換性工具類(関税率表の第 16 部の注1(o)に規定する物品のほか、同表の第 82.02 項、第 82.06 項、第 82.08 項又は第 96.03 項に属する物品を含む。)
- 当該機械に使用される成形用の型(例えば、関税率表の第 69.03 項、第 69.09 項、第 70.20項又は第 84.80 項に属するもの)
- 当該機械に使用されるボビン、スプールその他の巻取用品
- 当該機械の組立て用、保持用、保守用、整備用又は修理用等の手工具及び手道具
- 当該機械又は前各項に掲げる物品等に使用されるカバー、ケース、キャビネット、ラックその他これらに類する保管用品
- 当該機械に使用される消耗品(例えば、潤滑油、グリース、インキ、補修用塗料、タイプライターリボン及び自動記録用紙)
- 当該機械による製造又は加工に使用される材料及び当該機械による試作品
- 当該機械の説明書、カタログその他これらに類する物品
- 次の各項に掲げる物品は、輸入者の特別の注文によるものであるかないかを問わず、その種類、寸法等が異なるごとに1個又は1組を、当該機械に一括分類することとする。
- 当該機械の交換式部品(例えば、チェンジギヤ及びプーリー)
- 常時又は必要時に当該機械に取り付けて使用される附属品(例えば、関税率表の第 84.66項に属するアタッチメント、ダイ等のほか、圧力計、ダイヤルゲージその他これらに類する計測機器を含む。)
- (略)
- (略)
- (略)
- この取扱いは、同一契約により輸入を行う場合に限り適用するものとする。なお、この取扱いを、関税率表分類、統計品目表分類等のため分割すべき2種類以上の機械が申告された場合に、それぞれの機械ごとに適用し、また、分解された機械、未組立の機械又は2種類以上の機械等で分船で輸入され、申告されるものについて、許可前引取りを認め、後にこれらをセット扱いとする場合にも適用することはさしつかえないが、機械と予備部品等とが分船で輸入される場合においてこの取扱いのみを目的とする許可前引取りは認めないものとする
- この取扱いは、関税率表における別段の定め又は関税率表解説により、機械とともに輸入される場合でも分割して分類することと規定されている物品については、適用しないこととする。
- 前記1.及び前記2.のそれぞれ各項に掲げる物品に適用される関税率が、機械に適用される関税率よりも低いこと等の理由によって、申告者が分割申告を行った場合又は分割申告を希望する場合においては、前記1.から前記4.までの取扱いは行わない。(後略)
上記の取扱いはあくまでも我が国の取扱いであり、他の国での取扱いは異なると想定されます。しかし、日EU・EPA第3・12条の規定とは整合的であると考えられます。
附属品、予備部品、工具及び解説資料を本体の機械と一体として関税分類を行うと輸出入申告が簡単になり、EPAを利用する場合には、本体と一緒にEPA税率が適用されるので、一般的に個別に分類を行って申告するより有利となります。
一括分類できる附属品、予備部品、工具及び解説資料の取扱いについて疑義がある場合は、輸入者を通じて輸入国税関に照会することをお勧めいたします。
日EU-EPA/TPP11の原産品申告書作成のアドバイス
これまでの日本商工会議所が発給する特定原産地証明書と異なり、日EU・EPAやTPP11の原産品申告書では、第三者によるチェックがありません。
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