「原産資格を与えることとならない作業」とは、例え表面上原産地規則を満たしているとしても、行われた作業が包装、物品の取りそろえ、仕分け等の簡単な作業のみでは、産品に原産品としての資格を与えないという規定です。

目次

第三者証明のEPAにおける規定

各EPAにおける規定ぶり

 原産資格を与えることとはならない作業については、協定により、以下のように規定されています。

  • 日・シンガポール協定及び日・スイス協定の原産地規則
    日・シンガポール協定では、「十分な変更とみなさない作業」、日・スイス協定では、「十分な作業又は加工とみなさない工程」と規定されています。
  • 日・メキシコ協定、日・チリ協定、日・インド協定、日・ペルー協定、日・オーストラリア協定及び日・モンゴル協定の原産地規則
    「特定の作業が行われることのみをもって原産品としない。」と規定されています。
  • 日・マレーシア協定、日・タイ協定、日・インドネシア協定、日・ブルネイ協定、日・アセアン協定、日・フィリピン協定及び日・ベトナム協定の原産地規則
    「特定の作業が行われることのみをもって関税分類変更基準又は加工工程基準を満たすとはしない」と規定されています。 

各EPA共通の項目

 原産資格を与えることとはならない作業として、次の作業が各協定に規定されています。

  1. 輸送又は保管の間に産品を良好な状態に保つために行われる作業(乾燥、冷凍、塩水漬け等)
  2. 改装及び仕分
  3. 瓶、箱等の容器に詰める包装作業
  4. セットにすること

特定のEPAにのみ規定されている項目

 次の作業については、規定されているEPAと規定されていないEPAがあります。
 その他の具体的な内容については、各EPAを個別に参照する必要があります。

  • マーク、ラベル等の貼付け(日・メキシコ協定、日・インド協定、日・シンガポール協定及び日・スイス協定)
  • 分解(日・シンガポール協定、日・スイス協定、日・メキシコ協定、日・チリ協定、日・インド協定、日・ペルー協定、日・オーストラリア協定、日・マレーシア協定、日・タイ協定、日・インドネシア協定、日・ブルネイ協定、日・アセアン協定、日・フィリピン協定及び日・モンゴル協定)
  • 単なる切断(日・インド協定、日・シンガポール協定及び日・スイス協定)
  • 単に再分類する作業(日・オーストラリア協定)

日EU・EPAの規定

 日EU・EPAでは、第3・4条に「十分な変更とはみなされない作業又は加工」として、締約国において次の加工のみからなる産品の生産は、原産品とはならないことが規定されています。
 上記の第三者証明のEPAでは各協定共通に規定されている「セットにすること」については、日EU・EPAでは別途の規定が設けられているので、「十分な変更とはみなされない作業又は加工」の規定には含まれていません。

  1. 輸送又は保管の間に当該産品を良好な状態に保つことを確保することのみを目的とする保存のための工程(乾燥、冷凍、塩水漬け等)その他これに類する工程
  2. 改装
  3. 仕分
  4. 洗浄、浄化又は粉じん、酸化物、油、塗料その他の被覆の除去
  5. 紡織用繊維及びその製品のアイロンがけ又はプレス
  6. 塗装又は研磨の単純な工程
  7. 穀物及び米について、殻を除き、一部若しくは全部を漂白し、研磨し、又は艶出しする工程
  8. 砂糖を着色し、これに香味を付け、若しくはこれを角砂糖とするための工程又は固体の砂糖の一部若しくは全部を粉砕する工程
  9. 果実、ナット又は野菜の皮、核又は殻を除く工程
  10. 研ぐこと、単純な破砕又は単純な切断
  11. ふるい分け、選別、分類、格付又は組み合わせる工程(物品をセットにする工程を含む。)
  12. 瓶、缶、フラスコ、袋、ケース又は箱に単純に詰めること、カード又は板への単純な固定その他の全ての単純な包装工程
  13. 産品又はその包装にマーク、ラベル、シンボルマークその他これらに類する識別表示を付し、又は印刷する工程
  14. 産品の単純な混合(異なる種類の産品の混合であるかどうかを問わない。) (注)
    (注)この条の規定の適用上、産品の単純な混合には、砂糖の混合を含む。
  15. 単に水を加えること、希釈、脱水又は産品の変性(注)
    注)この条の規定の適用上、変性には、特に、毒性を有する物質又はひどい味の物質の添加による食用に適しない産品の製造を含む。
  16. 完成した物品若しくは統一システムの解釈に関する通則2 の規定に従って完成したものとして分類される物品とするための部品の単純な収集若しくは組立て又は産品の部品への分解
  17. 動物のとさつ

TPP(TPP11)の規定

 TPP(TPP11、CTTPP)では、「原産資格を与えることとはならない作業」の規定はありません。
 しかしながら、原産品としての資格を得るためには、締約国の領域において、「完全に得られ、又は生産される」ことが必要であり、ここで、「生産」とは、「産品の栽培、耕作、成育、採掘、収穫、漁ろう、わなかけ、狩猟、捕獲、収集、繁殖、抽出、養殖、採集、製造、加工又は組立てを含む作業をいう。」とされています。
 なお、「生産」についての英文の規定は次のようになっています。

production means operations including growing, cultivating, raising, mining,harvesting, fishing, trapping, hunting, capturing, collecting, breeding, extracting,aquaculture, gathering, manufacturing, processing or assembling a good

TPP協定 Article 3.1: Definitions 

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