EPAで定められた特定の工程が施された場合に「原産品」となる基準を「加工工程基準(Specific Process Rule)」といいます。
 主として化学品の原産地基準として用いられていますが、日EU・EPAにおいては繊維製品も殆どが加工工程基準となっています。
 なお、 メキシコ、アセアン、マレーシア、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー及びモンゴルと日本とのEPAには加工工程基準はありません。

加工工程基準の例(化学反応が行われること)

 第2916.31号の安息香酸と第2905.11号のメタノールから安息香酸メチルを製造し、ドイツに輸出する場合を考えます。安息香酸メチルは第 2916.31号に分類されますが、日EU・EPAにおいて、第2916.31号の品目別原産地規則は

CTSH、
化学反応、精製、粒径の変更、標準物質の生産、異性体分離若しくは生物工学的工程が行われること、
MaxNOM五十パーセント(EXW)又は
RVC五十五パーセント(FOB)

となっています。原料の安息香酸と製品の安息香酸メチルは同じ第2916.31号に分類されるので、関税分類変更基準を満たすことが出来ません。しかし、安息香酸メチ ルは、安息香酸とメタノールがエステル化という化学反応により製造された化合物ですので、上記の「化学反応が行われること」という基準を満足します。

加工工程基準の事例(安息香酸メチル)

 加工工程基準で「化学反応が行われること」という基準を使用する場合は、少なくとも化学反応式を用いて説明できる程度の準備はしておきましょう。

日本のEPA/FTAの化学品の加工工程基準

 化学品においては同一の項又は号に全く異なる物質が含まれていることが数多くあります。一般に化学品においては、化学反応を経た物質は原材料の物質と全く異なる物質となり、実質的な加工が行われたとみなすことができると考えられます。このため、関税分類変更基準を満たさない場合の救済策として化学品に加工工程基準を設けている協定が多くあります。
 付加価値基準でも関税分類変更基準を満たさない物品の救済措置として機能すると考えられますが、加工工程基準は一般に一度証明を行うと何度でも利用できますので、付加価値基準に比べて利用者の負担は軽いと考えられます。

日EU・EPA及びTPP11の化学品の加工工程基準

 日EU・EPA及びTPP11では幅広く化学品に加工工程基準が定められています。化学反応、混合・調合、精製、粒径の変更、標準物質の生産、異性体の分離、生物学的工程(日EU・EPAのみ)などです。混合・調合、粒径の変更、標準物質の生産に関する規定はアセアン諸国とのEPAにはありません。

RCEPの加工工程基準

 RCEPにおいては、化学反応のみが加工工程基準として下記の品目に設けられており、「CR」という記号で表されています。

HSコード品名
29.01非環式炭化水素
29.02環式炭化水素
29.07フェノール及びフェノールアルコール
29.09エーテル、エーテルアルコール、エーテルフェノール、エーテルアルコールフェノール、アルコールペルオキシド、エーテルペルオキシド及びケトンペルオキシド(化学的に単一であるかないかを問わない。)並びにこれらのハロゲン化誘導体、スルホン化誘導体、ニトロ化誘導体及びニトロソ化誘導体
29.14ケトン及びキノン(他の酸素官能基を有するか有しないかを問わない。)並びにこれらのハロゲン化誘導体、スルホン化誘導体、ニトロ化誘導体及びニトロソ化誘導体
2916.15オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸並びにこれらの塩及びエステル 
29.20非金属のその他の無機酸のエステル(ハロゲン化水素酸エステルを除く。)及びその塩並びにこれらのハロゲン化誘導体、スルホン化誘導体、ニトロ化誘導体及びニトロソ化誘導体
38.11アンチノック剤、酸化防止剤、ガム化防止剤、粘度指数向上剤、腐食防止剤その他の調製添加剤(鉱物油(ガソリンを含む。)用又は鉱物油と同じ目的に使用するその他の液体用のものに限る。) 
38.24鋳物用の鋳型又は中子の調製粘結剤並びに化学工業(類似の工業を含む。)において生産される化学品及び調製品(天然物のみの混合物を含むものとし、他の項に該当するものを除く。)

その他のEPA/FTAの化学品の加工工程基準

加工工程基準のあるEPA/FTA

 シンガポール、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイとの協定においては、化学反応、精製、異性体分離、生物工学的工程に関する規定があります。

加工工程基準の無いEPA/FTA

 メキシコ、アセアン、マレーシア、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー及びモンゴルとの協定には加工工程基準はありません。

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