EPA(FTA)の積送基準(日EU・EPAの場合は「変更の禁止」)とは、貨物が輸入国に到着するまでに原産品としての資格を失っていないかどうかを判断する基準です。次のいずれかの条件を満たす場合は、産品は原産品としての資格を保持すると認められます。

  1. 直送されること。
  2. 第三国を経由する場合は、税関の管理下に置いて、積替え、一時蔵置及び産品に実質的な変更を加えない程度の作業のみが許される。

 通常、積送基準を満たしていることの証拠書類として、直送B/L又は通しのB/Lが要求されます。第三国で積替えが行われる場合でも、通常、通しB/Lで輸送すれば特に問題はありません。
 ただし、インドネシア税関では通しB/Lの場合でも第三国で積替えが行われる際にはEPAが否認される場合がある(JETROレポート参照)とのことですので、注意しましょう。
 なお、日EU・EPAではEU域内、CPTPPではCPTPPの締約国間では積送基準の適用はありません。

目次

  1. 協定締約国以外の第三国を経由したEPAの利用
  2. 日・アセアン協定の連続する原産地証明書(back-to-back)

協定締約国以外の第三国を経由したEPAの利用

 積送基準に関する上記の2.の条件については、協定締約国以外の第三国を物流拠点としてEPAを利用して輸出入しようとする際に重要な規定となります。
 第三者証明のEPAでは、通しB/Lを利用しない場合は、積替えが行われる第三国の「税関その他の権限を有する官公署が発給した証明書又はその他税関長が適当と認める書類」を税関に提出しなければなりませんが、経験上、多くの場合、税関その他の権限を有する官公署(港湾当局等)がそのような証明書を発給することはないので、「その他税関長が適当と認める書類」を提出して税関に認めてもらう必要があります。
 なお、日本への輸入の際しては、運送上の理由等により通しのB/Lを利用できず、締約国でない国を経由して運送される場合、特定原産地証明書に積替え地等の記載を行うことがにより、積送基準の証明と認められる取扱いとなっています(関税法基本通達68-5-1(1)ハ 非原産国における積替え等に関する確認)。
 日EU・EPA及びCPTPPでは、第三者証明の場合と異なり、「税関その他の権限を有する官公署が発給した証明書」の提示が求められることはありませんが、やはり日本への輸入の際には第三国での作業が上記2に該当することを証明できる書類を提出する必要があります。輸出の場合は、輸入国の税関によっては、輸入時に書類の提出を求められないこともありますが、その場合は、証拠書類、帳簿を等を保管しておく必要があります。
 何れ場合にも、事前にどのような書類等が必要か税関に確認を行った方が良いと考えます。 

日・アセアン協定の連続する原産地証明書(back-to-back)

 アセアン包括協定の下では、通常の原産地証明書発給に加えて、一の締約国(締約国A)の原産品が、別の締約国(締約国B)を経て更に別の締約国(締約国C)に輸入される場合に、締約国Bにおいて貨物に対して何ら加工がなされず、締約国Aで得た原産資格に変更がない場合に、締約国Aで発給された「最初の原産地証明書(original CO)」に基づき、締約国Bにおいて「連続する原産地証明書(back-to-back CO)」の新たな発給を受けることができます。
 この規定により例えばタイ産の貨物をシンガポールでストックし、日本に輸入する場合に、上記の「その他税関長が適当と認める書類」を提出するのと比べて、簡単な手続きでEPA(日・アセアン協定に限る。)を利用することが出来ます。
 ただし、バック・ツー・バックの原産地証明書は発効しないとしている国があるので注意が必要です。日本商工会議所は、蔵置中に加工されていないということを実務上確認を行うことが出来ないことから、バック・ツー・バックの原産地証明書は発効しないとしています。詳しくはこちら

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③ 手続的規定

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