「原産地」とは、ある物品が生産された国・地域のことをいいます。 しかし、物品の製造における一連の生産工程の中で、どの生産行為をもって物品が生産された国・地域である「原産国」であるとするかについては、原産地を決定を厳しくとらえる考え方から緩くとらえる考え方まで、立場よって様々な考え方があります。
 この内、関税賦課の目的としては、大きく分けて非特恵原産地規則と特恵原産地規則があります。

目次

 「原産地」とは

 「原産地」とは、ある物品が生産された国・地域のことをいいます。
 例えば、日本で栽培されたコメの原産地は日本、中国で組立てられたパソコンの原産地は中国となります。
 ここで、ウイスキーの原産地について考えてみたいと思います。ウイスキーの製造工程は下記の通りです。

 では、どの製造工程を行うことをもってウイスキーの原産国を決定することが適当でしょうか。それについては主なものでも次のように色々な意見が想定されます。

  1. 原料である大麦の品質が重要であるので大麦の生産を行った国とする。
  2. ウイスキーの品質にとって発酵の工程が重要であるので発酵を行った国
  3. ウイスキーの品質にとって蒸留の工程が重要であるので蒸留を行った国
  4. ウイスキーの品質にとって熟成の工程が重要であるので熟成を行った国
  5. ウイスキーの品質はブレンドの技術が重要であるのでブレンドを行った国

 ここで、原産地を決定するルールとして、「大麦の生産以降の全ての工程を行った国とする」とします。その場合、例えば米国から大麦を輸入して日本で発酵・蒸留工程を行ったとすると、どこの国が原産国となるでしょうか。大麦を生産した米国でも、発酵・蒸留を行った日本のどちらも原産国でないということとなり、原産国が無いという事態が生じる可能性があります。関税賦課の目的のための原産地を決定する一般的なルールとしては、どこか特定の1国に決定できるような規則が必要です。例えば、上記の工程のうち、どこか一つの工程を行った国を原産地とする、といった規則です。
 一口に「原産地」といっても、様々な場面でそれぞれ異なった定義で使用されています。原産地に関する規則は、非特恵原産地規則、一般特恵の原産地規則、EPAの原産地規則、原産地表示の規則等、それぞれ協定、法令により 異なっていますので、それぞれの規定に基づいて「原産地」を決定することが必要です。上記のウイスキーの原産地の事例では、規則毎にどの工程を行った国が原産国であるのか、異なることがありえます。
  下記の原産地に関する規則はそれぞれ異なっていますので、それぞれの規定に基づいて「原産地」を決定することが必要です

非特恵原産地規則

 MFN税率適用のための「原産地」を非特恵原産地規則といいます。
 詳しくは、こちら
 輸入貿易統計の輸出国もこの非特恵原産地規則に基づく「原産地」によ り決定されることとなっています。(外国貿易等に関する統計基本通達7-2(2))  
  輸出の際に各地の商工会議所が発給する一般の原産地証明書もこの基準に基づいています

国によって非特恵原産地規則は異なる

 国によって非特恵原産地規則は異なり、各国は自国の法令により原産地規則を定めています。
 WTO協定では、「原産地規則に関する協定」があり、加盟国の非特恵原産地規則を統一する交渉が行われていましたが、現在に至るまで合意に達していません。

特恵原産地規則

 特恵原産地規則とは、MFN税率よりも低い関税率を適用できる国の原産地であるか否かを決定する規則です。非特恵原産地規則と異なり、原産地が決定できない場合は、優遇税率が適用しないという規則ですので、必ず原産地を特定の1国に決定できるルールとすることは一般的には求められていません。

一般特恵原産地規則

   一般特恵関税(GSP)適用のための「原産地」を特恵原産地規則といい、関税暫定措置法施行令第26条に定められています。

EPA(FTA)原産地規則

 EPA(FTA)の特恵税率(EPA税率)適用のための「原産地」は、EPA/FTA毎に原産地規則が異なるので、「××協定の原産地規則 」といいます。 
  各協定の原産地基準に基づき、EPAの第三者機関(日本の場合は日本商工会議所)が発給する特定原産地証明書、又は、輸出入者又は生産者が発行する自己申告書を用いて特恵税率適用の申請を行います。
 EPAの原産地基準については、詳しくはこちら

原産地表示に関する規則

 輸入品の原産地表示に関する「原産地」(関税法第71条)  
 原産地表示に関する「原産地」も、原則として上記1の非特恵原産地規則の規定に基づき決定されることとなっています。(関税法基本通達71-3-1(原産地の虚偽表示等に関する用語の定義)  
 EPAの原産地規則が非特恵原産地規則と同じか厳しい場合は特に問題はないと思いますが、EPA原産地規則の方が緩やかな場合や、累積の規定を使用し たことにより、EPAの原産地と非特恵原産地規則に基づく原産地が異なることとなった場合は注意が必要で、誤ってEPAの原産地を基準に原産地表示が行われないように注意することが必要です。
(「原産地を巡る誤解と原産地虚偽表示」参照)

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