「完全生産品」とは、その生産が1か国(注)で完結している産品をいいます。 主として、農水産品、鉱業品等の一次産品に利用される原産地基準です。
(注)日メキシコ協定では日本とメキシコを一つの国、CPTPPでは加盟国全てを一つの国、日EU・EPAではEUを一つの国と捉えている。
目次
完全生産品とは
例えば、次のような産品が完全生産品となります。
- 一の国で生まれ、生育した動物(家畜等)
- 一の国で採捕された動物(野生動物等)
- 一の国で生きている動物から得られた産品(卵、牛乳等)
- 一の国で収穫・採捕された植物(野菜、果物、切花等)
- 一の国で抽出・採掘された鉱物性生産品(原油、鉱石等)
- 一の国の船舶により公海等で採捕された水産物
- 一の国で収集され、又は発生したくず、廃棄物
- 上記の産品のみから得られ、生産されたもの
理論上は、上記8の物品のように完全生産品のみから製造された物品も完全生産品となりますが、完全生産品であることを証明することが大変な場合も多いので、もし、産品が実質的変更基準を満たしたものであるならば、通常、実質的変更基準を満たした産品として証明を行います。
完全生産品であることの証明
第三者証明の場合
日本商工会議所に申請する場合は、輸出しようとする産品に応じて、「農林産品に係る生産証明書」、「漁獲・養殖証明書」等の書類を提出する必要があります。
日本商工会議所から特定原産地証明書の発給を受けた後も、生産証明書に記載されている通り、生産者名並びに生産者の所在地及び連絡先、並びに収穫地が特定できる取引等の記録を協定で定められた期間保管しておく必要があります。
自己証明の場合
自社で直接生産者から仕入れをしている場合は、生産証明書の作成は必要ではないかもしれません。卸売り業者から間接的に仕入れている場合は、卸売業者に生産証明書等の作成を依頼することになるでしょう。
何れの場合も肝心なことは、第三者証明の場合と同様に、生産者名並びに生産者の所在地及び連絡先、並びに収穫地が特定できる取引等、完全生産品であることの証拠書類を保管し、輸入国税関からの問合せ、事後確認(検認)に対応できるようにしておくことです。
品目別規則において完全生産品であることを要求される原材料の取扱いについて
農産加工品を中心に、品目別規則では関税分類変更基準となっていても、使用する特定の原材料は完全生産品であることを要求されている場合があります。
例えば、日EU・EPAの20.09項(果実又は野菜のジュース)の品目別規則は、「CTH。ただし、生産において使用されるパイナップル、オレンジ、トマト、りんご及びぶどうが締約国において完全に得られるものであることを条件とする。」となっています。この場合は、原料としてパイナップル、オレンジ、トマト、りんご又はぶどうを使用する場合は、これらの果実・野菜が日本又はEUの完全生産品であることを証明する必要があります。
少し分かりずらい事例としては次のようなものがあります。
例えば、日EU・EPA・タイEPAの第2001.10号(果実・野菜の食酢の調製品)の品目別原産地規則は、「第2001.10号の産品への他の類の材料からの変更(第7類の非原産材料を使用する場合には、当該非原産材料のそれぞれが東南アジア諸国連合の加盟国である第三国において収穫され、採取され、採集され、又は完全に生産される場合に限る。)」となっています。この場合、アセアン原産の胡瓜(第7類)を使用していた場合は品目別原産地規則を満たしますが、それ以外の外国産の胡瓜の使用は認められません。従って、日本から輸出する場合は、日本産、即ち、完全生産品である胡瓜を使用する必要があります。
何れにしても、これら使用原材料が完全生産品であることが原産地規則により義務付けられている場合には、生産者証明書や生産者名並びに生産者の所在地及び連絡先、並びに収穫地が特定できる取引等、完全生産品であることの証拠書類を保管しておく必要があります。