日英CPTPPが発効します。これにより英国との貿易においては、CTPPと日英EPAのどちらも使用可能となります。 関税率が同一の場合には、証明しやすい協定を選択することとなります。
 日英EPA(ほぼ日EU・EPAと同じ)とCPTPPの原産地基準は異なり、どの協定の証明が容易かは品目によって異なります。ここでは、品目のグループ毎に両協定の原産地基準の傾向を見ていくこととします。
 個別の原産地規則については税関ホームページの協定・法令等のページの品目別原産地規則をご覧ください。
個々の原産地基準については下記をご参照ください。

目次

化学品

 どちらの協定も、一部の品目を除き号変更基準(CTSH:HS6桁変更)です。
 エステルを製造する等の工程では一般に号の変更は生じません。このように号変更を伴わない場合、日英EPAでは、一部品目を除き付加価値基準を使用できます。殆どの物品は、RVC55%又はMaxNOM50%でCPTPPでは、一部の品目についてのみ付加価値基準が採用されています。

加工工程基準

 化学反応等の加工工程基準は、日英EPA及びCPTPPで認められています。
 CPTPPでは、第28類のから第38類の物品について化学反応(生物学的工程を含む。)、精製(36類及び37類の物品を除く。)、標準物質の製造(一部物品を除く。)、異性体分離の工程を行うことで原産地基準を満たすことが出来ます。一方、日英EPAでは、加工工程基準が採用されていない物品があります。
 また、CPTPPでは、30類、31類、33.02項、37.03項の物品の製造を混合又は調合が原産地基準として規定されていますが、日英EPAではこのような規定はありません。CPTPPでは付加価値基準が採用されていない物品について一部加工工程基準で調整を行っていると考えられます。

プラスチック

プラスチックの一次製品(39.01~39.14)

 日英EPAの品目別原産地規則は殆どがCTSHです。一部にCTHもありますが、明快な原産地基準です。付加価値基準や加工工程基準(化学反応、39.07及び39.08を除く)も利用できます。
 CPTPPは、「CTH及び重合体の総含有量の五十パーセント以上が原産品であること」となっており、証明が難しいのでCPTPPの関税分類変更基準を選択することは通常ないと思われます。付加価値基準を利用する場合には、日英EPA(RVC55%)よりもCPTPP(控除方式で45%又は50%)の方が有利です。

プラスチック製品(39.16~39.26)

 日英EPAの品目別原産地規則はCTHです。付加価値基準(RVC55%)も利用出来ます。
 CPTPPは、CTH又はCTSHです。一部の品目のみ付加価値基準が利用できます。

繊維製品

 日英EPAの繊維製品の原産地基準は、場合は多くの品目で加工工程基準となっています。他の多くのEPAと同様に原則2工程基準となっていますが、加工工程基準ですので証明が難しくなっています。
 CPTPPは、他の協定と異なり、協定の中で繊維製品の原産地規則に関する特別の章が設けられています。従って、品目別原産地規則も他の製品とは別建てで附属書4-Aで定められています。関税分類変更基準が採用されています。
 日英EPA、CPTPPともに繊維製品の原産地基準は複雑ですので、下記は概略に過ぎず、詳細は協定をご覧ください。

繊維原料(50類~55類)

日英EPA

 日英EPAでは、原則2工程基準ですので、織物については、糸からの製造の他、糸の染色と製織との組合せ、等の加工の組み合わせが認められています。
 人造繊維の長繊維の糸(54.01~54.06)の品目別原産地規則は「天然繊維の紡績、人造繊維の押出しと紡績との組合せ又はねん糸と機械による作業との組合せ」となっています。人造繊維の長繊維のモノフィラメントの製造においてはこのような工程は含まれませんので、原産材料のみから生産される産品(PE)の規定により証明を行う必要があります。

CPTPP

 織物については原則、糸から製造することが求められています。
 関税分類変更基準ですので、糸からの製造を行う場合には、CPTPPの方が利用しやすいと考えられます。
 また、人造繊維のモノフィラメントの場合にも原材料(第39類、第47類等の物品)から類が異なっていることを証明すればよいのでCPTPPの方が利用しやすくなっています。

衣類(61類及び62類)

 衣類の製造においては、日英EPAは2工程ルール、CPTPPは3工程ルールとなります。

 日英EPAは2工程ルールですので、糸から直接編物の衣類を製造するホールガーメントでは、糸から製造することが求められます。なせんについては、品目別規則の冒頭に条件が付けられていますので注意する必要があります。
 CPTPPは原則糸からの製造が求められますが、附属書4A 付録1 供給不足の物品の一覧表 に記載された原材料についてはこの条件が緩和されます。

機械類

 日英EPAでは、関税分類変更基準は原則CTHで原産地基準を満たすことが出来ない場合が多いと思われます。
 CPTPPでは一部CTSHが採用されている品目があり、このような品目ではCPTPPの利用が第一選択肢となると考えられます。
 付加価値基準の控除方式では、CPTTPの方が日英EPAより基準が低く設定されている品目があります。また、CPTPPでは原産地基準を満たしやすくするために重点価格方式が設定されている品目もあり、一般にCPTPPの方が原産地基準を満たしやすくなっていると思われます。

84類から85類

 関税分類変更基準の適用に当たっては、部分品のHSコードを理解しておく必要があります。84類及び85類の機械・電気機器の部分品のHSコードについては「機械類の部分品HSコード分類5原則」のページをご参照ください。

日英EPA

 基本的に、日英EPAの84類及び85類の物品の品目別原産地規則は関税分類変更基準(CTH)及び付加価値基準(RVC50%又は55%)です。
 ただし、下記の物品については製品の部分品を分類する項からの製造では品目別原産地規則を満たしません。

  • 建設用機械(84.25~84.30):84.31
  • 繊維用機械(84.44~84.47):84.48
  • 事務用機器(84.70~84.72):84.73
  • 電動機及び発電機(85.01):85.03
  • マイクロホン、音声録音再生器、ビデオレコーダー(85.19~85.21):85.22
  • モニター、プロジェクター、テレビ(85.28):85.29
  • 電気回路用の機器、配電盤、コントロールパネル(85.35~85.37):85.38
     

 日EU・EPAと異なり、工作機械(84.56~84.65)、発電機(原動機とセットにしたもの)(85.02)、ラジオ・テレビ放送用の送信機、デジタルカメラ、テレビカメラ、ラジオ受信機等(852.25~85.27)については、これらの部分品を分類する項はCTHから除外されていませんので、関税分類変更基準を使用しやすくなっています。

CPTPP

 CPTPPの関税分類変更基準は、品目によりCTH又はCTSHが採用されています。CTSHとなっている品目は日英EPAより証明が容易です。
 また、関税分類変更基準では、積上げ方式、控除方式(日英EPAのRVCと同じ)、重点価格方式の3種類あります。
 この内、重点価格方式は関税分類変更基準と付加価値基準の中間的な方式であり、協定で指定されたHSコードの品目の価格のみを考慮すればよく、付加価値基準計算の負担を軽減することが出来ます・

自動車

 自動車及びその部分品(第87.01項~第87.08項)については、日英EPA及びCPTPP共に特別のルールが定められています。概略は下記の通りですが、実際の適用に当たっては、協定を参照してください。
 また、「EPA・FTAの原産地証明と自動車の部分品分類5原則」の記事も是非ご参照ください。

日英EPA

 自動車の品目別原産地規則は付加価値基準(RVC55%又は60%)のみ定められています。自動車部品(87.08)については関税分類変更基準(CTH)も定められています。また、附属書3-B-1を参照する必要があります。

CPTPP

 自動車の車体及び部分品を除き、付加価値基準のみ定められています、控除方式(RVC)では、日英EPAと同じ又は低い基準が設定されています。また、自動車のみに適用される純費用方式という基準も用いることが出来ます。
 自動車の部品に定められている関税分類変更基準はCTSHです。しかしながら、多くの品目では自動車の部分品(例えばブレーキ)とその部分品(例えばブレーキの部分品)は同じ号に分類されますので、実質的にCTHと大きく変わることはないと考えられます。
 なお、同じCTSHとされている協定でも、2002年版のHS品目表に基づいて品目別原産地規則が定められているシンガポール、マレーシア、フィリピン(一部品目のみ)、インドネシア、ブルネイとは状況が異なりますので注意が必要です。詳しくは、上記「EPA・FTAの原産地証明と自動車の部分品分類5原則」の記事をご参照ください。

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