HS条約は1988年に発効し、その附属書であるHS品目表(HSコード)は、これまでに約5年毎に改訂が行われてきました。EPA(FTA)は過去のバージョンのHS品目表に基づき作成されていることがあるので、現行のHSコードからEPA基準年のHSコードを調査する方法を解説します。

目次

HS品目表(HSコード)のこれまでの改正の概要

 HS条約は1988年に発効し、その附属書であるHS品目表(HSコード)は、これまでに1992年、1996年、2002年、2007年、2012年、2017年及び2022年に改訂が行われました。改訂の主たる理由は次の様ななものです。

  1. 社会的な要請を受けた品目の項・号の新設、変更
  2. 技術革新を反映した項、号の新設、変更
  3. 貿易が増加した品目の特掲
  4. 貿易が減少した品目の削除
  5. 分類明確化のための技術的な変更

 1.に関しては、2017年の改正では、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約に基づく残留性有機汚染物質の貿易動向の把握のため、多数の化合物の号が新設されています。
 2.に関しては、2017年の改正でハイブリッドカーの号が新設されています。その他、近年の改正ではIT関連機器等に関して多数の改正が行われています。
 3、4.に関しては、2017年改正ではタイプライターの号が廃止されています。 
 5.に関しては、ただ単に技術的な改正と捉えられがちですが、改正の背景には特定の物品のHS分類の不一致があります。分類の不一致の原因が品目表の記載にあるとHS委員会で判断された場合、リーガルテキスト(部注、類注、項、号のテキスト)の変更が行われます。

 直近の改訂は、2022年です。改訂内容につきましては、「2022年版HS品目表改正の概要」のページをご覧ください。

HS品目表の改正とWTO協定

 HS品目表が改正されると、我が国が定める関税定率法別表及び同別表を引用している関税暫定措置法等の規定も改正されます。また、輸出入統計品目表等も改正されます。
 しかし、WTO協定に定める譲許税率やEPAで定める譲許税率は国家間の約束であり、簡単に改正できません。例えば、HS品目表の改正に伴い高い税率の分類項目に変更となる場合は、輸出国の了解なしにHS品目表の改正という理由だけで分類変更先の高い税率を適用することはできません。
 また、関税率が低い分類に移行する場合、移行先の税率に合わせれば協定上は特に問題ありませんが、我が国として産業政策上元の税率を維持したい場合もあるでしょう。
 このようなことから、我が国としては、HS改正で税率が変更となる分類に移行する場合は、次のような対応を行っています。

  1. 移行する品目に新たな統計細分を設けて元の税率を維持する。
  2. 移行先の品目のWTO税率の方が低い場合は、その低い税率を適用する。
  3. 貿易金額が少ない商品の場合、統計品目表等を改正することなくそのまま元の税率を移行する。この場合は、実行関税率表で次のような対応を行っている。

HS品目表の改正とEPA(FTA)の基準年

 EPAでは、協定毎に使用するHSのバージョンが定められています。(下表参照)
 日EU・EPAと日米貿易協定は2017年版のHSを使用していますが、TPP(及びCPTPP)、RCEP及びオーストラリアとモンゴルとのEPAは2012年版のHS使用しています。他のEPAはそれより古い2007年版又は2002年版のHSを使用しています。
 なお、日タイEPAは、2022年1月1日より、品目別原産地規則については2017年版HSに変更となりました。(譲許表については2002年版HSのまま改正はありません。)
 EPAの譲許税率と原産地規則の品目別規則は各EPAで定めるHSのバージョンに従い決定されます。従って、EPAを利用しようとする産品のEPA税率と品目別規則を調べる際には、EPAで規定するバージョンのHS番号を調査する必要があります。他のバージョンのHS番号は、現在のHS番号と同じ場合が多いですが、念のため、必ず調査を行いましょう。特に新規商品の多い第84類、第85類等の機械、電子機器等の品目は要注意です。

HS改訂年日本が締結したEPA
1998(HS条約の発効)
1992
1996
2002シンガポール、メキシコ、マレーシア、フィリピン、チリ、タイ(譲許税率)、インドネシア、ブルネイ、ASEAN
2007ベトナム、スイス、インド、ペルー
2012オーストラリア、モンゴル、TPP11、RCEP
2017EU、米国、英国、タイ(品目別原産地規則)
2022RCEP(品目別原産地規則、2023年1月1日から)
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日本に輸入する場合のEPA税率・品目別規則の調べ方

 我が国に輸入する場合で、現在のバージョンのHS番号が判明している場合は、税関ホームページに「旧品目表に基づくEPA税率が適用される品目一覧表」があるので参照すると良いでしょう。この表で、2022年は2022年版、2021年は2017年版、2016年は2012年版、2011年は2007年版、2006年は2002年版のHSをそれぞれ表しています。また「ex」とある場合は、その番号の一部が分類されることを表しており、他の番号にも分類されていますので注意しましょう。
 ここで、EPAのHS番号の見当をつけたら、EPAのHSのバージョンで作成されている年の実行関税率表(2002年版のHSの場合は、2006年の実行関税率表)で、本当に輸入しようとしている産品のHS番号が正しいかどうか確認します。
 HS番号が判明したら、税関ホームページの品目別規則の検索のページで輸入する産品の品目別規則を検索します。

日本から輸出する場合の過去のバージョンのHSコードの調べ方

 輸出する際は、EPA協定で規定する年の輸出統計品目表と現在の輸出統計品目表(2022年版)と比較して同一かどうか確認すると良いでしょう。
 ただし、輸入の際のような日本語の比較表がないので、WCOのホームページに掲載されている相関表を利用することが出来ます。
 WCOのホームページには、2022年と2017年のHS品目表と改正の概要が掲載されています。それ以前のバージョンの改正の相関表は「HS Nomenclature previous editions」のページに掲載されています。これらのページで「Correlation Tables 2007 – 2012」等の項目をクリックすると、相関表が掲載されている文書があります。
 但し、2007-2012、2012-1217、2017-2022といった各改正毎の相関表しか掲載されていないのが難点ですが、最近の改正分から辿っていくと、過去のHSコードを調べることが出来ます。 
 最終的には、相関表から導かれたHSコードが正しいかどうか、当該バージョンの輸出統計品目表で確認を行う必要があります。

 これらの表に記載がないHSコードは、現在も古いバージョンと同じと考えられます。
 これらの表に記載がある場合で、最も簡単なのは古いバージョンのHSコードが新たに幾つかに分割された場合です。この場合には、過去のHSコードは、一つになります。
 逆に、幾つかのHSコードが一つに纏められた場合には、古いバージョンのHSコードは複数考えられるので、その内のどのHSコードに該当するか、当該バージョンの輸出統計品目表等で確認する必要があります。
 最も複雑な場合は、下記の事例のように分類体系が完全に変更となった場合です。

デジタル複合機の分類事例

 今もし、上記の第8443.31号に分類される皆様のオフィスにも設置されているようなデジタル複合機(複写機、ファクシミリ、パソコンのプリンターが一体となったコピー機)を輸出しようとしているとします。
 2022年版HSでは第8443.31号は次のようになっています。

 ところが、2007年版HSと2022年版HSの相関表は次のようになっています。

 次に上記の相関表に従い、2002年版HSでは第8443.51項(インクジェット方式の印刷機)、第8471.60号(自動データ処理機の入力装置及び出力装置)、第8517.21項(ファクシミリ)、第90.09項(感光式複写機)の何れかに分類されることとなっています。2002年頃は、プリンター、複写機、ファクシミリが一体となったデジタル複合機は新規商品であったことに注意する必要があります。
 デジタル複合機のHS分類はWCOのHS委員会で、第90.09項の複写機として分類するか、第84.71項のコンピューターと接続して使用する機械して分類するか、EUと日本の間で大きな問題となりました。
 EU側が第90.09項の複写機であると主張し、日本側が第84.71項のコンピューターと接続して使用する機器(プリンター)であると主張しました。このデジタル複合機の分類がここまで紛糾したのは、第84.71項に該当するとWTO情報技術協定(Information Technology Agreement : ITA)の対象で関税は無税となり、EUの主張する第90.09項に分類されるとITAの対象外となって、EUへの輸入に際し関税が発生することとなるからでした。
 このデジタル複合機の分類問題はHS委員会を二分する議論となり、結局、2007年のHS改正で複合機、複写機、ファクシミリ及びプリンターを第84.43項(印刷機)にまとめることで決着しました。
 このように、HS品目表において想定していない新商品が出てくると、複数の項目に該当し、各国の分類の不統一が発生することとなります。
 この相関表では、「No consensus on this correlation.」と記載されています。これらの物品について、2002年版のHSコードについて、WCOの最終的な決定がなされていないことに由来すると考えられます。
 このような場合、2002年版のHSコードについては国により判断が分かれるので、輸入国税関に確認しておく必要があります。

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原産地証明の根拠資料として必要な原材料表・対比表中のHSコードには多くの誤りが見受けられます。
間違ったHSコードに基づき日本商工会議所から特定原産地証明の発給を受けている場合、輸入国税関の事後確認(検認)によりEPA(FTA)税率の適用が取り消され、貴社の信用が失墜することは勿論、輸出先から損害賠償を提起される恐れがあります。
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