第5部「鉱物性生産品」、第6部「化学工業の生産品」及び「第7部プラスチック、ゴム及びこれらの生産品」は、しばしば化学品関係のグループとして纏められることがあります。これらのHSコードについて解説していきます。
化学品関係のHS分類は、化学についての専門知識がないと中々分かりずらい分野です。しかし、特に第28類の無機化学品、第29類の有機化学品については系統だった分類体系となっており、また、HSの前身のCCCN(関税協力理事会品目表)の時代から60年以上の議論の蓄積もあり、比較的、各国の間で分類相違の少ない分野であるといえるでしょう。
目次
- 第5部 鉱物性生産品
- 第6部 化学工業(類似の工業を含む。)の生産品
- 第28類 無機化学品及び貴金属、希土類金属、放射性元素又は同位元素の無機又は有機の化合物
- 第29類 有機化学品
- 第30類 医療用品
- 第31類 肥料
- 第32類 なめしエキス、染色エキス、タンニン及びその誘導体、染料、顔料、着色料、ペイント、ワニス、パテ、インキ
- 第33類 精油、レジノイド、調製香料及び化粧品類
- 第34類 せっけん、有機界面活性剤、洗剤、調製潤滑剤、人造ろう、調製ろう、磨き剤、ろうそく、歯科用ワックス及びプラスターをもととした歯科用の調製品
- 第35類 たんぱく系物質、変性でん粉、膠(こう)着剤及び酵素
- 第36類 火薬類、火工品、マッチ、発火性合金及び調製燃料
- 第37類 写真用又は映画用の材料
- 第38類 各種の化学工業生産品
- 第7部 プラスチック及びゴム並びにこれらの製品
第5部 鉱物性生産品
第5部は下記の3つの類からなっています。
第25類 塩、硫黄、土石類、プラスター、石灰及びセメント
第25類には、原則として粗のもの、洗ったもの、破砕し、粉砕し、粉状にし又はふるい分けたもの及び浮遊選鉱、磁気選鉱その他の機械的又は物理的な方法により選鉱したものが分類されます。また、水分若しくは不純物の除去又はその他の目的のため、熱処理されていてもよいこととなっています。
ただし、これらの工程で化学構造の変化が生じたものや、結晶法により選鉱したもの及び焙焼、溶融又はか焼等の熱処理が施されていているものは除外され、第28類や第68類等に分類されます。
焙焼、溶融又はか焼等の熱処理を行われた物品を含む項
第25.07項、第25.08項、第25.11項の粘土類及び重晶石は「焼いてあるかないかを問わない。」とされているので、焼いてあってもこれらの項に属します。
第25.13項、第25.17項のコランダム、ガーネット、小石、砂利等は熱処理してあっても、これらの項に属します。
第25.18項のドロマイトは、「焼いてあるか焼結してあるかを問わない。」とされていますので、これらの熱処理をしてあっても第25.18項に属します。
第25.19項の溶融マグネシア及び焼結マグネシアはこれらの熱処理を行ったものも、第25.19項に分類されます。
第25類に分類される化学的に単一な化合物
第28類注3(a)で「第5部の塩化ナトリウム、酸化マグネシウム(純粋であるかないかを問わない。)その他の物品」が第28類から除外されている旨規定されています。
従って、第25.01項の塩化ナトリウム、第25.19項の酸化マグネシウムは化学的に単一な化合物であっても第28類ではなく、これらの項に分類されます。
また、第25.03項には、第28.02項の昇華硫黄、沈降硫黄及びコロイド硫黄以外の全ての形態の硫黄(例えば精製硫黄)が分類されます。
第26類 鉱石、スラグ及び灰
第26.01項から第26.17項までには金属鉱(精鉱を含む。)が分類されます。
第26.18項から第26.20項までには、鉄鋼製造の際に生じるスラグや鉱石若しくは金属製錬中間生産物(例えば、マット)の処理、又は電解法、化学的方法その他の機械加工を伴わない金属の処理工程において生ずる物品が含まれます。
第27類 石炭、石油、石油ガス、アスファルト
第6部 化学工業(類似の工業を含む。)の生産品
第6部は下記の11の類からなっています。
第30類 医療用品
第31類 肥料
第31類には肥料が分類されます。
第31類に分類される化学的に単一な化合物
化学的に単一な化合物であっても、下記の物品は第28類又は第29類には分類されず、第31類に分類されます。
- 第31.02項に分類される化合物(窒素肥料)
硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウムと硝酸アンモニウムとの複塩、硫酸アンモニウム、硝酸カルシウムと硝酸アンモニウムとの複塩、硝酸カルシウムと硝酸マグネシウムとの複塩、カルシウムシアナミド、尿素 - 第30.04項に分類される化合物(カリ肥料)
塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウムカリウム - 第31.05項に分類される化合物(肥料成分(窒素、りん及びカリウム)のうち二以上を含有する肥料)
オルトりん酸二水素アンモニウム(りん酸一アンモニウム)及びオルトりん酸水素二アンモニウム(りん酸二アンモニウム)
第32類 なめし剤、染料、顔料、ペイント、パテ、インキ
第33類 精油、レジノイド、調製香料及び化粧品類
第34類 石鹸、有機界面活性剤、洗剤、調製潤滑剤、ロウ
第35類 たんぱく系物質、変性でん粉、膠(こう)着剤及び酵素
第36類 火薬類、火工品、マッチ、発火性合金及び調製燃料
第36類には、火薬及び爆薬が含まれます。これらは、通常みずからの燃焼に必要な酸素を含有すること及び燃焼に際し高温で膨大な容量のガスを発生することを特徴とする混合物です。
また、花火、発煙筒、ライター、フェロセリウム等の発火性合金もこの類に含まれます。
第37類 写真用又は映画用の材料
第37類には、写真用又は映画用の物品が分類されます。しかし、第37類注2には次のように規定されて「写真用」にはかなり広範囲の物品が含まれます。
この類において「写真用」とは、光又はその他の放射線の作用により、感光性(感熱性を含む。)を有する表面に直接又は間接に可視像を形成するために使用することをいう。
この類の写真用のプレート、フィルム等は、可視光ばかりではなく、ガンマー線、X線、紫外線及び近赤外線及び粒子(核)放射線に対して感受性を有する乳剤の層を一以上有するものとされています。
第3907.90号には、フォトリソグラフィによる半導体材料の製造に使用される感光性プラスチック樹脂溶液(「フォトレジスト(photoresists)」が含まれることとなっています。
第38類 各種の化学工業生産品
第7部 プラスチック及びゴム並びにこれらの製品
第7部は次の2つの類からなっています。詳しくは、それぞれの解説記事をご参照ください。
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