HS品目表第29類の第29.01項から第29.04項までには炭化水素及びそのハロゲン化誘導体、スルホン化誘導体、ニトロ化誘導体及びニトロソ化誘導体が分類されます。第29.05項から第29.29項までの有機化合物は官能基毎に分類されています。同じ官能基を持つ化合物はその性質が似ているので、同じグループの化合物として分類します。
 また、天然由来の化合物のうち、第29.36項から第29.39項、第29.40項及び第29.41項に分類されるアルカロイド、ホルモン、ビタミン、糖アルコール等の化合物は、化合物に含まれている官能基に関わらずこれらの項に分類されます。

目次

  1. 第29類に分類される有機化合物
  2. 官能基による分類を行う化合物
  3. エステルの分類(第29類注5)
  4. 官能基によるHSコード分類を行う天然有機化合物
  5. 官能基による分類を行わない有機化合物
  6. 税関ホームページ「有機化合物の分類集」

第29類に分類される有機化合物

有機化合物とは何か

 有機化合物とは、「炭素を含む化合物の大部分をさす。歴史的背景から、炭素を含む化合物であっても、一酸化炭素、二酸化炭素、炭酸塩、青酸、シアン酸塩、チオシアン酸塩等の単純なものは例外的に無機化合物と分類し、有機化合物には含めない。」(*)とされています。
有機化合物. (2018, May 9). In Wikipedia. Retrieved 22:07, May 9, 2018, from

 HSにおいては、第28類注2において無機化合物として第28類に分類される炭素を含有する化合物を列挙しており、これらの化合物は炭素化合物であっても有機化合物として第29類に分類されません。詳しくはこちらをご覧ください。

第28類に分類される有機化合物

 また、同じ第28類注2で、第28.43 項から第28.46 項までの貴金属、放射性の元素、同位元素、希土類元素、イットリウム又はスカンジウムの有機化合物及び第28.52項の水銀の有機化合物は第29類から除外され、第28類に分類される旨明確にしています。
 なお、尿素は有機物ですが、第31類に分類されます。

第29類に分類される化合物の一覧表

 第29類に分類される化合物を表形式で整理しました。
 この表では、化学的に単一でないけれども第29類に分類される化合物、化学的に単一であるが、第29類には分類されない化合物も整理して掲載しています。
 なお、第29類の化学品の分類でキーワードとなる「化学的に単一」及び異性体の取扱いについては、別ページで解説します。

官能基による分類を行う化合物

 29.05項から29.35項までの有機化合物は官能基ごとに分類されています。官能基とは、その分子を特徴づける原子団のことで、同じ官能基を持つ化合物はその性質が似ているので、同じグループの化合物として分類できます。また、複数の項に属するとみられる物品は、これらの項の内、数字上の最後の配列となる項に分類されることとなっています。

官能基による分類事例(アセトイン)

例:
 アセトインはアルコール(第29.05項)とケトン(第29.14項)の2つの官能基を持つが、数字上の配列の最後となる第29.14項に分類される。

  第2節から第10節(第29.05項から第29.35項)までのHSの分類は系統だっており、大学で化学を専攻した人にとっては、分類はそれほど難しくないと思います。
 構造式が分からない場合でも、EU税制・関税同盟総局の化学品データベースであるECICSや日本のJ-CHECK独立行政法人製品評価技術基盤機構の化審法データベース)で化学名やCAS番号で検索すると多くの化合物で構造式が掲載されているので、それを参考にしてHS番号を決定することができます。但し、ECISでHS番号を検索することが出来ますが、残念ながらJ-CHECKにはHS番号のデータはありません。

第29類における官能基の順序

酸素官能有機化合物(第29.05項~第29.18項)

 非環式アルコール、環式アルコール、フェノール又はフェノールアルコール、エーテル、エポキシド等、アセタール、アルデヒド、ケトン及びキノン、カルボン酸の順に並んでいる。

非金属酸の無機酸のエステル及びその塩(第29.19項及び第29.20項)

 リン酸エステル、その他の非金属酸エステルの順に並んでいる。

窒素官能有機化合物(第29.21項~第29.29項)

 アミン化合物、酸素官能のアミノ化合物、第4級アンモニウム塩及びレシチン等、カルボキシアミド官能化合物等、カルボキシアミド及びイミン官能化合物、ニトリル官能化合物、ジアゾ化合物等、ヒドラジン等、その他の窒素官能化合物の順に並んでいる。

オルガノインオルガニック化合物・複素環式化合物(第29.30項~第29.35項)

 有機硫黄化合物、その他のオルガノインオルガニック化合物、複素環式化合物、スルホンアミドの順に並んでいる。

エステルの分類(第29類注5)

第29類注5では、有機酸のエステルの分類等について次のように規定しています。


(A)第1節から第7節までの酸官能有機化合物とこれらの節の有機化合物とのエステルは、これを構成する酸官能有機化合物又は有機化合物が属する項のうち数字上の配列において最後となる項に属する。
(B)エチルアルコールと第1節から第7節までの酸官能有機化合物とのエステルは、これを構成する酸官能有機化合物が属する項に属する。

 ここで、エステルとは、有機酸または無機酸とアルコールまたはフェノールのようなヒドロキシ基(OH基)を含む化合物が反応し、水分子が取れてできる化合物のことです。
 HS分類上は、アルコール、フェノール(以上、ヒドロキシ基を有する。)、エーテル、アルデヒド、ケトン、カルボン酸の順に並んでいますので、エステルは一般的にカルボン酸(有機酸)の属する項に分類されることとなります。
 ただし、ベンゼンスルホン酸(29.04項)とメチルアルコール(29.05項)のエステルは、アルコールの方がHS配列上で後に来るのでメチルアルコールの属する項(29.05項)に分類されることとなります。
 一方、エチルアルコールは第29類に分類されず第22類に分類されるため、別途(B)として規定したもので、構成する酸官能有機化合物が属する項に属することとなります。通常は(A)の規定と同じく有機酸の属する項に分類されることとなります。 しかし、ベンゼンスルホン酸とエチルアルコールのエステルは、(A)の規定と異なりベンゼンスルホン酸が分類される29.04項に分類されることとなります。
 なお、糖エステル及びその塩は 第29.40 項に属するので注意が必要です。

官能基によるHSコード分類を行う天然有機化合物

官能基による分類を行わない有機化合物

 第11節から第12節(第29.36項から第29.39項)までに分類される天然と同一の構造を有するビタミン、ホルモン、グリコシド、アルカロイド、第29.40項の糖及び糖アルコール等及び第29.41項の抗生物質については、官能基による分類を行いません。第29.36項から第29.39項、第29.40項及び第29.41項が優先されます。
 難しいのは、問題となる化合物が天然と同一構造を有する化合物(その誘導体を含む。)かどうか、文献をみてもよくわからない場合です。アルカロイドでは、窒素官能化合物に分類されるのか、それとも、アルカロイドに分類されるか構造式を見ただけではよくわからない場合があります。

methamphetamine

 例えば、覚せい剤の1種であるメタンフェタミンは、麻黄アルカロイドであるエフェドリンの誘導体として第2939.71号に分類されますが、構造式を見ただけでは、単純に第29.21項のアミン官能化合物として分類してしまいそうです。 
 このように、官能基による分類を行うのか、天然由来の有機化合物として分類されるのか、少しでも疑義がある場合は、ECIS等のデータベースで確認すると良いと思います。
 場合によっては、税関によって見解が異なることもあり得ます。文献等でも天然由来の化合物か否か見当がつかない場合は、最終的には輸入地の税関に照会すると良いと考えます。
 なお、「化学的に単一であるかないかを問わない」と規定されていなくても、天然由来の有機化合物であるビタミン、ホルモン、グリコシド、アルカロイド等の第29.36項から第29.39項までの物質、29.40項の糖エーテル等、第29.41項の抗生物質は必ずしも単一の化合物でなくてもそれらの項に分類されることがありますので注意が必要です。具体的な取扱いは税関ホームページの「関税率表解説」をご参照ください。 

税関ホームページ「有機化合物の分類集」

 税関ホームページに「有機化合物の分類集」が掲載されています。項毎に分類される有機化合物の構造式が掲載されていますので、各項にどのような官能基の化合粒が分類されているか分かるので参考になります。
 ECISJ-CHECK(独立行政法人製品評価技術基盤機構の化審法データベース)等のデータベースで個々の化合物のHS番号や構造式を検索することが出来ますが、税関ホームページに「有機化合物の分類集」は各項毎に構造式が示されているので、HS品目表の分類体系を理解する上で助けとなります。

EPA/FTA及びHSコードに関する社内研修

当コンサルティングでは、EPA/FTA及びHSコードに関する従業員様向け研修、サプライヤー様向け研修を実施しています。