HSの解釈に関する通則4は、通則1~3までの原則によりHSコードを決定することができない物品について、HSコードを決定する方法を定めたものです。このような物品は、当該物品に最も類似している物品が属する項に分類します。
前記の原則によりその所属を決定することができない物品は、当該物品に最も類似する物品が属する項に属する。
目次
通則4の概要
通則1から3までの原則によりその所属を決定することができない物品については、当該物品に最も類似している物品が属する項に分類します。
通則4の規定に基づいて所属を決定する場合、提示された物品に最も類似している物品を決定するために、提示された物品と同種の物品とを比較することが必要です。提示された物品は、それに最も類似する同種物品と同一の項に属します。
類似性は、品名、性質、用途等の多くの要素によって決定することになります。
通則4を適用する事例は極僅かです。もし、どの項にも該当しないと判断したら、自己判断せずに、権限のある当局(輸入国税関等)にHSコードを照会すべきと考えています。
通則4の適用事例
下記の事例は国際分類例規に記載されている事例です。
ナイロンの糸の破片:5601.30
国際分類例規56.01
本品は、それぞれが933 デシテックスのマルチフィラメントを撚った2本の単糸から成る黒く染色したマルチプルヤーンから製造したもので、貨物自動車のタイヤ製造の際に補強材として使用するために、約2~6ミリメートルの長さに切断したものである。
【解説】
本品は、人造繊維の短繊維に似ていますが、第55.03項及び第55.04項の人造繊維の短繊維は第55類総説に規定された方法により製造されたものに限定されています。
人造繊維の短繊維は、通常多数の(時には数千の)穴を有する紡糸口金(ジェット)から押し出すことによって製造される。多数の紡糸口金(ジェット)から押し出された長繊維は、トウの形状に寄せ集められる。このトウは、トウの形状のまま直ちに、あるいは各工程(洗浄、漂白、浸染等)を経たのちに、延伸して短く切断される。切断される繊維の長さは、通常 25 ミリメートルから 180 ミリメートルの間であるが、人造繊維の固有の性質や、混用される他の紡織用繊維の性質及び製造しようとする糸のタイプによって変わる。
関税率表解説第55類総説
本品は、マルチフィラメントを撚った2本の単糸から成る黒く染色したマルチプルヤーンから製造したもので、この規定の製造方法に該当しないことから、第55類の人造繊維の短繊維には該当しません。
本品は「くず」ではないので第55.06項(人造繊維のくず(ノイル、糸くず及び反毛した繊維を含む。))にも該当しません。
本品は、第56.01項の紡織用繊維のフロックに該当するとも考えられますが、第56.01項に該当するのは長さが5ミリメートル以下のフロックに限定されており、本品は該当しません。
繊維製品のバスケット項(下記参照)である第63.07項に分類することも考えられますが、同項は「その他のものもの(ドレスパターンを含むものとし、製品にしたものに限る。)(Other made up articles, including dress patterns)」とあり、繊維素材である本品は製品にしたもの(made up articles)には該当せず、第63.07項には該当しません。
従って、通則1~3の規定に従って所属を決定できないので、通則4を適用して、最も類似している物品(紡織用繊維のフロック)を分類している第56.01項に分類されたのではないかと考えています。
【参考】第56.01項
紡織用繊維のウォッディング及びその製品並びに長さが5ミリメートル以下の紡織用繊維(フロック)、紡織用繊維のダスト及びミルネップ
第56.01項
雑談コーナー
☆ 通則4の適用はHS品目表の欠陥?
HSは、部、類の最後の項等に「その他の~(その他の調製食料品、その他の化学調製品、その他のプラスチック製品等)」という項を設け(他の項に分類されない商品をまとめて分類するので「バスケット項」といいます。)、新規商品ができた際にも商品がどの項の規定にも該当しないという事態を回避しています。しかし、これらの枠に当てはまらない新規商品が出現しますし、上記の例のように、折角設けられたバスケット項の条件に当てはまらない場合も出てきます。
HS品目表は、世界中のありとあらゆる商品が一つの項に分類されるように作成していなければなりません。2つ以上の項に分類される可能性があるという事態(通則3の適用)は許容範囲でも、品目表のどこの項にも属さないという事態は本来的にはあってはならないことでしょう。そういう事態も想定して通則4がありますが、私の税関の先輩は、通則4の適用は品目表の欠陥だ、と言っていました。
多くの場合、通則4を適用しなければならない商品が出現した場合は、次のHS改正の際に通則4を適用せずに分類できるように品目表が改正されていると考えています。
ただし、本品のように貿易量の関係から品目表の改訂に至らず、国際分類例規で分類を明記するということもあります。