HS品目表の第39類には合成重合体と天然重合体が分類されます。
 ここでは、HS分類に必要な重合体と単量体という言葉及び重合の種類について解説し、さらに、第39類に分類される合成重合体と天然重合体についてみていきたいと思います。

目次

  1. 重合体と単量体
  2. 重合の種類
  3. 第39類に分類される合成重合体
  4. 第39類に分類される天然の重合体及び化学的誘導体

重合体(ポリマー)と単量体(モノマー)

 プラスチックの定義で「重合」という言葉が出てきましたが、「重合」とは「炭素数が2個以上の有機低分子化合物が化学反応により結合してより大きな化合物ができること」を言います。
 化学反応が起こる前の低分子化合物を「単量体(モノマー)」、化学反応後のより大きな分子を「重合体(ポリマー)」といいます。重合体は一般に1種類又は数種類の単量体の重合により形成されます。
 例えば、エチレンの重合体は、ポリエチレンとなります。

 ポリエチレンと酢酸ビニルの重合体は、エチレン-酢酸ビニル共重合体となります。このように、2種類以上の単量体の重合体は「共重合体」と呼ばれます。

 また、2種類以上の単量体の重合体の内、酸素、窒素等の官能基を有する単量体が、エステル化等による縮合反応により形成される場合には、共縮合物と呼ばれます。

(例)エチレングリコールとテレフタル酸がエステル化して水が取れ、 ポリエチレンテレフタレートが形成される 。

重合の種類

関税率表解説には、重合の種類には、次の3種類ある旨記載されています。

付加重合

 上記のポリエチレンやエチレン酢酸ビニル共重合体の生成のように、炭素原子間の不飽和結合の部分が反応して、水等の他の副産物を生成することなく重合鎖を形成するものをいいます。

転移重合

 酸素、窒素等の原子を含む官能基を有する分子が、水その他の副産物を生成することなく反応し、エーテル結合、エステル結合、アミド結合その他の結合によって重合鎖を形成するものをいいます。

(例1) 6-ナイロン(ポリアミド-6)
(例2) ポリウレタン

縮合重合

 酸素、窒素等の原子を含む官能基を有する分子が、水その他の副生成物を伴い、エーテル結合、エステル結合、アミド結合その他の結合によって重合鎖を形成するもの

(例)6,6-ナイロン(ポリアミド-6,6)

第39類に分類される合成重合体(第39類注3)

 第39類注3では、第39類に分類される合成重合体(一次製品)について、次のように規定しています。

3 第39.01項から第39.11項までには、化学合成により製造した物品で次のもののみを含む。
(a)減圧蒸留法により蒸留した場合において1,013ミリバールに換算したときの温度300度における留出容量が全容量の60%未満の液状の合成ポリオレフィン(第39.01項及び第39.02項参照)
(b)低重合のクマロン-インデン系樹脂(第39.11項参照)
(c)その他の合成重合体で平均5以上の単量体から成るもの
(d)シリコーン(第39.10項参照)
(e)レゾール(第39.09項参照)その他のプレポリマー

 以下、この規定について解説していきます。

低重合度のポリオレフィン

 (a)の規定は、低重合度のポリオレフィン(例えば、ブタジエン重合体)について、この規定を満たすもののみを第39.01項又は第39.02項に、満たさない物品は第27.10項に分類されることを明確にしています。(第27類注2後段参照)

クマロン-インデン系樹脂

 (b)の規定の、「クマロン-インデン系樹脂」とは、関税率表解説第39.11項(1)に「石油樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、クマロン-インデン樹脂及びポリテルペンは、それぞれ十分に分解した石油留分、コールタール又はテレビン油その他の種類のテルペンから得た多少とも不純な分画物を重合することによって得たもので、低重合度の一群の樹脂である。」と記載されています。分子量数百のクマロン-インデン系の樹脂が多く市販されており、これらは第39.11項に分類されることとなります。

平均5以上の単量体から成るもの

 (c)の「その他の合成重合体で平均5以上の単量体から成るもの」という規定は、注3の中で最も重要な規定です。
 通常、合成重合体は、数百、数千、数万の単量体からなっており、この「平均5以上の単量体からなるも」という基準が問題となることはありませんが、一般の合成重合体はこの規定により第39類に分類されることとなります。
 しかしながら、注3の(a)、(b)、(d)及び(e)以外の低重合度の合成重合体については、第39類に分類されるか、それとも他の類の項(例えば第38.24項)に分類されるかが問題となる場合があります。その基準を定めたのが本規定です。
 単量体単量体ユニットという概念は、合成重合体を分類する上で重要な概念ですので、ページを改めて解説したいと思います。

シリコーン

 (d)39.10項に分類されるシリコーンは、分子内に二以上のケイ素-酸素-ケイ素結合を含み、かつ、ケイ素原子に直接ケイ素-炭素の形で結合している有機の基を含む化学的に単一でない物品です。
 低分子のシリコーンはポリシロキサン、シロキサン、高分子のシリコーンはシリコン樹脂、シリコンとも呼ばれます。

レゾールその他のプレポリマー

 (e)のプレポリマーは、モノマーの重合または縮合反応を適当な所で止めた中間生成物のことです。ポリマーとなる前段階にあり、硬化剤などを使用することにより容易に重合や架橋反応を起こす事ができ、その性質を利用して接着剤の成分などに利用されます。
 レゾールは、化学辞典第2版の解説によれば、「アルカリ触媒存在下で、フェノールとホルムアルデヒドを反応させたときの反応初期生成物で、架橋はあまり進行していない。」とあります。加熱により架橋してフェノール樹脂となることから、まさにプレポリマーの一種です。
 プレポリマーは、硬化剤、重合開始剤等によりさらに重合する性質を持っていることが重要であり、そのまま最終用途に利用するような非常に低分子量のポリ(オキシエチレン)(ポリエチレングリコール)等の物質は含まれません。

第39類に分類される天然の重合体及び化学的誘導体

 第39類には、セルロース及びその化学的誘導体(第39.12項)、アルギン酸等セルロース以外の天然の重合体及びその化学的誘導体(第39.13項)が含まれます。

第39.12項 セルロース及びその化学的誘導体

 セルロースは、β-グルコース分子がグリコシド結合により直鎖状に重合した天然の高分子です。植物繊維の主成分で、綿はそのほとんどがセルロースであり、木材繊維もセルロースからできています。
 セルロースの化学的誘導体には、酢酸セルロース、ニトロセルロース、セルロースエーテル等があります。
 本項には、他の項に該当する物品、例えば、第11部に該当する紡織用繊維(綿、麻等の天然の紡織用繊維、レーヨン等の再生繊維、アセテート繊維等の半合成繊維)は含まれません。

第39.13項 天然の重合体(例えば、アルギン酸)及び変性させた天然の重合体

 本項には他の項に該当しない天然の重合体及び変性させた天然の重合体が分類されます。例えば次のような物品です。

  • アルギン酸並びにその塩及びエステル
  • 硬化たんぱく質
  • 天然ゴムの化学的誘導体
  • デキストラン、グリコーゲン(「動物性でん粉」)
  • キチン及びリグニンから得られたプラスチック
  • でん粉から単離したアミロペクチン及びアミロース

 本項には、変性させてない天然樹脂(13.01)、エーテル化でん粉及びエステル化でん粉(35.05)、ロジン、樹脂酸及びこれらの誘導体(エステルガム及びランガムを含む。)(38.06)等は含まれませんのでご注意ください。

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