プラスチック、鉄等卑金属等の板、シートや繊維の織物は形状によりHSコードが異なることがあります。一般に、長方形(正方形を含む。)の形状のものは一次製品として、板、シートが分類される項に属しますが、円形やその他の長方形以外の形状のものは、製品にしたものとしてそれ以外の項に分類されます。
 これらの形状による分類の違いを理解しておくことは、特に関税分類変更基準(CTC)を利用したEPAの原産地証明を行う上で非常に重要です。

目次

プラスチック及びゴムの板、フィルム、シート等のHSコード

 第 39.20 項及び第 39.21 項のプラスチックの「板、シート、フィルム、はく、ストリップ」及び第40.01 項から 第40.03 項まで、第40.05 項及び第 40.08 項のゴムの「板、シート、ストリップ」は、切っていないもの及び単に長方形(正方形を含む。)に切ったもののみが分類される旨規定されています。
 従って、特定用途に適するために長方形に切ったプラスチックのシートは第 39.20 項又は第 39.21 項に分類されますが、円形やひし形その他、長方形以外の形状に切断したプラスチックのシートは第 39.20 項又は第 39.21には分類されず、その用途等により製品にしたものとして分類されます。

第39類注10
 第 39.20 項及び第 39.21 項において板、シート、フィルム、はく及びストリップは、板、シート、フィルム、はく、ストリップ(第 54 類のものを除く。)及び規則正しい幾何学的形状の塊(印刷その他の表面加工をしてあるかないかを問わない。)で、切ってないもの及び単に長方形(正方形を含む。)に切ったもの(長方形(正方形を含む。)に切ったことによりそのまま使用することができる製品になったものを含む。)に限るものとし、更に加工したものを除く。

第40類注9
 40.01 項から 40.03 項まで、40.05 項及び 40.08 項において板、シート及びストリップは、板、シート、ストリップ及び規則正しい幾何学的形状の塊で、切ってないもの及び単に長方形(正方形を含む。)に切ったもの(製品としての特性を有するか有しないか又はプリントその他の表面加工をしてあるかないかを問わない。)に限るものとし、その他の特定の形状に切ったもの及び更に加工したものを除く。

繊維製品の織物のHSコード

 第11部の紡織用繊維の織物も、第50類から第55類には、通常、織ったままのもの及び単に長方形(正方形を含む。)に切ったもののみが分類されます。
 第50類から第55類に分類される紡織用繊維の織物については、第39類のプラスチックの板とは異なる方法で規定されています。
 まず、第11部注7で「製品にしたもの(made up)」とは何かを定義し、その上で注8で「注7に定義する製品にしたものを含まない。」と規定しています。注7(a)には、「長方形(正方形を含む。)以外の形状に裁断した物品」が「製品にしたもの」に該当する旨規定されています。従って、長方形以外の形状、例えば円形やひし形に裁断した織物は、第50類から第55類の紡織用繊維の織物には分類されず、製品として、通常、第61類から第63類に分類されることとなります。
 また、長方形(正方形を含む。)の織物であっても、第注7に規定された加工(縁がかり、縫製等によるなぎ合わせ等)が施されている場合は、第61類から第63類に分類されることとなります。

第11部注7

 この部において「製品にしたもの」とは、次の物品をいう。

  1. 長方形(正方形を含む。)以外の形状に裁断した物品
  2. 完成したもので、単に分割糸を切ることにより又はそのままで使用することができるもの(縫製その他の加工を要しないものに限る。例えば、ダスター、タオル、テーブルクロス、スカーフ及び毛布)
  3. 特定の大きさに裁断し、少なくとも一の縁を熱溶着し(縁を先細にし又は圧着したのが見えるものに限る。)、その他の縁をこの注に規定される他の加工をした物品(反物の裁断した縁にほつれ止めのための熱裁断その他の簡単な加工をしたものを除く。)
  4. 縁縫いし、縁かがりをし又は縁に房を付けた物品(反物の裁断した縁にほつれ止めのための簡単な加工をしたものを除く。)
  5. 特定の大きさに裁断した物品でドロンワークをしたもの
  6. 縫製、のり付けその他の方法によりつなぎ合わせた物品(同種の織物類を二以上つなぎ合わせた反物及び二以上の織物類を重ね合わせた反物(詰物をしてあるかないかを問わない。)を除く。)
  7. メリヤス編み又はクロセ編みにより特定の形状に編み上げたもの(単一の物品に裁断してあるかないかを問わない。)


第11部注8
 第 50 類から第 60 類までにおいては、次に定めるところによる。

  1. 第 50 類から第 55 類まで、第 60 類及び、文脈により別に解釈される場合を除くほか、第56 類から第 59 類までには、7に定義する製品にしたものを含まない。
  2. 第 50 類から第 55 類まで及び第 60 類には、第 56 類から第 59 類までの物品を含まない。

ハンカチーフの形状に裁断した織物、ネクタイの形に裁断した織物

 絹織物(第50.07項)をハンカチーフの製造に使用するために裁断したものは、形状が長方形又は正方形の場合は、上記の注の規定により、第50.07項に留まります。これに縁掛りをすると、ハンカチーフとして第62.13項に分類されます。
 縫製するとネクタイになるように裁断した絹織物(第50.07項)は、長方形の形状をしていないことから、上記の注7(a)の規定により第50.07項には分類されません。通則2(a)の規定により、ネクタイのブランクとしてネクタイと同じ第62.15項に分類されます。

鉄鋼の板、シート等のHSコード

 鉄鋼の板、シート等は第72類注1(k)に規定されている「フラットロール製品」の項に分類されます。
 フラットロール製品は、鉄鋼の種類により次のように分類されます。

  • 72.08:鉄又は非合金鋼のフラットロール製品(熱間圧延をしたもので幅が600ミリメートル以上のものに限るものとし、クラッドし、めっきし又は被覆したものを除く。)
  • 72.09:鉄又は非合金鋼のフラットロール製品(冷間圧延したもので、幅が600ミリメートル以上のものに限るものとし、クラッドし、めっきし又は被覆したものを除く。)
  • 72.10: 鉄又は非合金鋼のフラットロール製品(クラッドし、めっきし又は被覆をしたもので、幅が600ミリメートル以上のものに限る。)
  • 72.11:鉄又は非合金鋼のフラットロール製品(幅が600ミリメートル未満のものに限るものとし、クラッドし、めっきし又は被覆したものを除く。)
  • 72.12:鉄又は非合金鋼のフラットロール製品(クラッドし、めっきし又は被覆したもので、幅が600ミリメートル未満のものに限る。)
  • 72.19:ステンレス鋼のフラットロール製品(幅が600ミリメートル以上のものに限る。)
  • 72.20:ステンレス鋼のフラットロール製品(幅が600ミリメートル未満のものに限る。)
  • 72.25:その他の合金鋼のフラットロール製品(幅が600ミリメートル以上のものに限る。)
  • 72.26:その他の合金鋼のフラットロール製品(幅が600ミリメートル未満のものに限る。)

 これら鉄鋼製のフラットロール製品に分類される物品は長方形(正方形を含む。)のものに限りませんが、長方形の物品とそれ以外の形状の物品では明らかに分類方法が異なります。
 長方形の板、シートは、無条件にフラットロール製品に分類されるのに対し、他の形状の板、シートは「他の項の物品の特性を有しないもの」という条件が付いており、もし他の項に該当するのであれば、そちらの方が優先されて分類されることとなります。
 従って、鉄鋼製の板をある機械に使用するために長方形に切断したものはフラットロール製品に留まるのに対し、それ以外の形状、例えば円形に切断したものは、その機械の部分品等、フラットロール製品以外の項に分類される可能性が大きいということになります。

第72類注1(k)
「フラットロール製品」とは、横断面が長方形(正方形を除く。)であり、かつ、中空でない圧延製品で、(ij)の規定に該当しないもののうち次のものをいう。

 連続的に層状に重ねて巻いたもの
 巻いてないもので、厚さが 4.75 ミリメートル未満、幅が厚さの 10 倍以上であるもの又は厚さが 4.75 ミリメートル以上で、幅が 150 ミリメートルを超え、かつ、幅が厚さの2倍以上であるもの

 フラットロール製品には、圧延工程中に直接付けた浮出し模様(例えば、溝、リブ、市松、滴、ボタン及びひし形)を有し、穴をあけ、波形にし又は研磨したもので、他の項の物品の特性を有しないものを含む。
 フラットロール製品で、長方形(正方形を含む。)以外の形状のもの(大きさを問わない。)のうち、他の項の物品の特性を有しないものは、幅が 600 ミリメートル以上の物品とみなしてその所属を決定する。

参考 (ij)の規定
「半製品」とは、中空でない連続鋳造製品(第一次の熱間圧延をしてあるかないかを問わない。)及び第一次の熱間圧延をし又は粗鍛造した中空でないその他の物品(形鋼のブランクを含むものとし、更に加工したものを除く。)をいうものとし、巻いたものを除く。

鉄鋼以外の卑金属の板、シート等のHSコード

 銅の「板」、「シート」、「ストリップ」及び「はく」の定義については、第74類注1(g)で規定しています。
 ニッケル(第75類)、アルミニウム(第76類)他の第15部に分類されるその他の卑金属についても、ほぼ同様の規定ぶりとなっています。
 これら卑金属の「板」、「シート」、「ストリップ」及び「はく」に分類される物品は長方形(正方形を含む。)のものに限りませんが、長方形の物品とそれ以外の形状の物品では明らかに分類方法が異なります。
 長方形の物品は、厚さが幅の 10 分の1以下である場合には無条件に「板」、「シート」、「ストリップ」及び「はく」に分類されるのに対し、他の形状のものは、「他の項の物品の特性を有しないもの」という条件が付いており、もし他の項に該当するのであれば、そちらの方が優先されて分類されることとなります。
 ここでも、ある機械の部分品として使用するために長方形以外の形状に切断したものは、その機械の部分品として分類される可能性が大きいので注意が必要です。

第74類注1(g)

 「板」、「シート」、「ストリップ」及び「はく」とは、均一な厚さを有し、かつ、中空でない平板状の製品(巻いてあるかないかを問わないものとし、第 74.03 項の塊を除く。)で、横断面が長方形(角を丸めてあるかないかを問わないものとし、横断面の一の相対する辺が凸の円弧で、他の相対する辺が長さの等しい平行な直線から成る変形した長方形を含み正方形を除く。)のもののうち次のものをいう。

長方形(正方形を含む。)のもので厚さが幅の 10 分の1以下のもの
長方形(正方形を含む。)以外のもの(大きさを問わない。)で他の項の物品の特性を有しないもの

 第 74.09 項又は第 74.10 項の板、シート、ストリップ及びはくには、模様(例えば、溝、リブ、市松、滴、ボタン及びひし形)を有し、穴をあけ、波形にし、研磨し又は被覆したもので、他の項の物品の特性を有しないものを含む。

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