石炭、石炭ガス、石油、天然ガス、石油ガス、石油アスファルト、天然アスファルト等の鉱物性燃料は第27類に分類されます。
 第29類の炭化水素、第34類及び第38類の石油を含む調製品やバイオディーゼル燃料との相違についても解説します。

目次

Petroleum oil

第27.01項~第27.4項 石炭及びコークス

 これらの項には、石炭(27.01)、亜炭(27.02)、泥炭(27.03)及びコークス、半コークス、レトルトカーボン(27.04)が含まれます。
 第27.01項には、無煙にするために炭化した練炭その他これに類する加工燃料も含まれます。

第27.05項~第27.08項 石炭ガス、鉱物性タール、高温タールの蒸留物、ピッチ及びピッチコークス

第27.05項 石炭ガス、水性ガス、発生炉ガス

 石炭ガスは、通常ガス工業又はコークス炉において空気を遮断して石炭を乾留して得られるものです。水素、メタン、一酸化炭素等の複雑な混合物で、天然ガスが普及する前は、都市ガスには石炭ガスが使用されていました。

第27.06項 石炭等を乾留して得たタール

 これらのタールは、通常、石炭、亜炭又は泥炭を乾留して得られるもので、様々な割合で芳香族成分と脂肪族成分とが混合した非常に複雑な混合物です。

第27.07項 高温コールタールの蒸留物及びこれに類する物品

 第27.08項には、次の物品が分類されます。

  • 高温コールタールの蒸留物
    • ベンゾール(ベンゼン)、トルオール(トルエン)、キシロール(キシレン)及びソルベントナフサ
    • ナフタレン油及び粗ナフタレン
    • アントラセン油及び粗アントラセン
    • フェノール油(フェノール、クレゾール、キシレノール等)
    • ピリジン、キノリン及びアクリジン塩基
    • クレオソート油
  • 高温コールタールに類する物品で芳香族成分の重量が非芳香族成分の重量を超えるもの
    • 低温コールタール及びその他の鉱物性タールの蒸留物
    • 石油の精製等によって得られる芳香族成分を主成分とする油状物質

第29類の物品との純度基準

 本項には、上記の物品を精製したものも含まれますが、第29類の化学的に単一な化合物は含まれません。
 下記の物品については、第29類に分類される化合物どうか純度基準が関税率表解説に規定されています。

化合物第27.07項第29類
ベンゼン、トルエン、キシレン95%未満95%以上29.02
ナフタレン79.4度未満で結晶化79.4度以上で結晶化29.02
アントラセン90%未満90%以上29.02
ヒドロキシベンゼン(フェノール)90%未満90%以上29.07
クレゾール、キシレノール95%未満95%以上29.07
ピリジン95%未満95%以上29.33
メチルピリジン(ピコリン)、5-エチル-2-メチルピリジン(5-エチル-2-ピコリン)及び2-ビニルピリジ90%未満95%以上29.33

第29.08項 ピッチ及びピッチコークス

 ピッチ及びピッチコークスは、高温コールタールその他の鉱物性タールの蒸留の際に得られる残渣です。

第27.09項 原油

 この項に含まれる原油は、その組成を問わず、通常の油層や凝結した油層から得られるか又は歴青質鉱物の分解蒸留によって得られるかを問わないものとされています。
 また、この項には、天然ガスの抽出直後の安定化の過程で得られる原油(ガスコンデンセート)も含まれます。

第27.10項 石油及び歴青油及びこれらの調製品

 第27.10項には、石油及び歴青油を含有する多数の物品が分類されます。

第27.10項における「石油及び歴青油」の定義

 第27.10項における「石油及び歴青油」について第27類注2で次のように規定されています。

 第27.10項において石油及び歴青油には、石油及び歴青油のほか、その製法を問わず、これらに類する物品及び主として混合不飽和炭化水素から成る物品で、非芳香族成分の重量が芳香族成分の重量を超えるものを含む。
 ただし、同項の石油及び歴青油には、減圧蒸留法により蒸留した場合において、1,013ミリバールに換算したときの温度300度における留出容量が全容量の60%未満の液状の合成ポリオレフィンを含まない(第39類参照)

 この注から、第27.10項の「石油及び歴青油」には、天然から得られる「石油及び歴青油」のほか、幅広く不飽和炭化水素及び不飽和炭化水素からなる物品が含まれることが分かります。
 

第27.10項に分類される物品

抜頭原油及び原油の蒸留又は精製により得られた各種の石油

 これらは、揮発油、ホワイトスピリッツ、灯油、軽油、燃料油、スピンドル油・潤滑油、白灯油等です。

非芳香族成分の重量が芳香族成分の重量を超える油

 石炭の低温乾留や石油及び歴青油の水素添加又はその他の方法(例えば、クラッキング、改質等)によって得られる物品です。
 トリプロピレン、テトラプロピレン、ジイソブチレン、トリイソブチレン等と呼ばれる混合アルキレンも含まれます。

石油及び歴青油の調製品

 上記の2つのカテゴリーの油に特定の用途に適するために種々の物質が加えられた調製品で、次のような物品が含まれます。

  • アンチノック剤又は酸化防止剤を少量添加した揮発油
  • 潤滑油調製品
  • トランス油及び回路遮断器用油
  • 切削油
  • 洗浄油(モーター、エンジンその他の装置の洗浄に使用するもの。
  • 離型油
  • 液圧ブレーキ用の液等
  • 石油又は歴青油の含有量が全重量の70%以上のバイオディーゼルの混合物。

廃油

 このカテゴリーには、石油及び歴青油を主成分とする廃棄物が含まれます。例えば、使用済みの潤滑油、作動油及びトランス油、石油貯蔵タンクから得られた汚泥等です。

第29類の物品との純度基準

 第27類に分類される非環式炭化水素の異性体の混合物と第29類に分類される化学的に単一な化合物のどちらに分類されるかについて、純度基準が第27類の国際分類例規に規定されています。
 次の物品が第27.10項に分類され、これより純度の高い非環式炭化水素は第29.01項に分類されます。

飽和非環式炭化水素の単離した異性体及び異性体の混合物
  1. 単離した異性体で、その含有量が全量の 95%未満のもの
  2. 異性休の混合物で、一つの異性体の含有量が全量の 95%未満のもの
モノオレフィン系又はポリオレフィン系の非環式炭化水素の単離した異性体及び異性
体の混合物(立体異性体を除く。)
  • 単離した異性体で、その含有量が全量の 90%未満のもの
  • 異性体の混合物で、一つの異性体の含有量が全量の 90%未満のもの
モノオレフィン系又はポリオレフィン系の非環式炭化水素の立体異性体の混合物

 これらの混合物のうち、特定の炭化水素の立体異性体の含有量が全量の 90%未満のもの

第27.10項に分類されない物品

 上記の第29類に分類される化学的に単一な化合物のほか、以下のような物品は第27.10項には分類されません。

石油又は歴青油の含有量が全重量の70%未満の物品

 これらには下記のような物品があります。

  • 紡織用繊維のオイリング又は加脂処理用調製品その他の調製潤滑剤(34.04)
  • 液圧ブレーキ液(38.19)
  • バイオディーゼルオイル(38.26)

石油又は歴青油の含有量が全重量の70%以上の物品

 石油又は歴青油の含有量が全重量の70%以上の物品であっても、下記の調製品は第27.10項には分類されません。

この表の他の項においてより特殊な限定をしている調製品
  • 消毒剤、殺虫剤、殺菌剤等の調製品(38.08)
  • 鉱物油用の調製添加剤(38.11)
  • ワニス用の配合溶剤及び配合シンナー(38.14)
石油及び歴青油以外の物品が基礎的な成分を成す調製品
  • 調製防錆剤(34.04):ラノリンのホワイトスピリット溶液で、基礎的な構成物質はラノリンであるもの
  • ガソリンエンジンの起動液(ジエチルエーテル並びに全重量の70%以上の石油及びその他の成分から成る液体で、ジエチルエーテルが基礎的な成分を成すもの)

芳香族成分の重量が非芳香族成分の重量を上回るもの

 第27.10項には、石油精製又はその他の処理により得られたもので重量において芳香族成分を主成分とする油は分類されません。(27.07)

第39類のポリオレフィン

 第27.10項には、減圧蒸留法により蒸留した場合において1,013ミリバール101.3kPa)に換算したときの温度300度における留出容量が全容量の60%未満の液状の合成ポリオレフィンは分類されません。(39.01又は39.02)

第27.10項の細分(号)について

 第27.01項には石油から製造される広範な物品が分類されます。
 燃料だけをみても、ガソリン、軽油、灯油、ジェット燃料、重油(我が国ではA重油、B重油、C重油の3つの規格がある。)があります。これに、近年はバイオディーゼルオイルやガソリンにエタノールを混ぜた燃料もあります。
 さらに、第27.01項には、潤滑油、トランス油、液圧プレーキオイル等の各種の調製品が分類されています。
 しかし、その細分は、僅かに5です。この内、第2710.20号はバイオディーゼルオイル、第2710.91号と2710.99号には廃油が分類されます。従って、石油からなる数多くの物品が2710.12号と2710.19号に分類されていることになります。
 1988年にHS条約が発効したときには、第27.10項には細分がありませんでした。各国とも細分の必要性は認めていたものの、規格がそれぞれ異なり、コンセンサスを得ることが出来なかったためでした。
 現在の2710.12号には、「軽質油及びその調製品」が分類されることとなっていますが、この定義は第27類号注4に次のように規定されています。

 第 2710.12 号において「軽質油及びその調製品」とは、ISO 3405 の方法(ASTM D 86の方法と同等の方法)による温度 210 度における減失量加算留出容量が全容量の 90%以上のものをいう。

 一方、我が国の関税定率法の備考に規定されている第27類の備考に揮発油、灯油及び経由の定義は次のようになっています。

  • 「揮発油」とは、政令で定める分留性状の試験方法による減失量加算 90%留出温度が 200 度以下の石油及び歴青油をいう。
  • 「灯油」とは、政令で定める分留性状の試験方法による 95%留出温度が 320 度以下の石油及び歴青油(⒜のものを除く。)をいう。
  • 「軽油」とは、政令で定める分留性状の試験方法による 90%留出温度が 350 度以下で、かつ、温度 15 度における比重が 0.8757 以下の石油及び歴青油(中略)をいう。

 このことから、HSコードの細分と我が国の石油の規格が一致していないことが分かります。
 減失量加算留出容量が全容量の 90%以上となる温度が200度から210度となる灯油、軽油は軽質油として第2710.12号に、その他の灯油、軽油は重油と同じ2710.19号に分類されることとなります。

第27.11項 石油ガスその他のガス状炭化水素

 第27.11項には、「天然ガスとして若しくは石油から得られ又は化学的に製造された未精製のガス状炭化水素」が含まれます。本項に分類される代表的なガスは、LNG(液化天然ガス)及びLPG(液化石油ガス)です。
 メタン及びプロパンは、純粋なものであってもこの項に分類されます。
 これらの炭化水素は、温度15度、圧力1,013ミリバール(101.3kPa)の条件下においてガス状のもので、この条件を満たさない炭化水素の混合物は第27.10項に分類されます。

第29.01項の炭化水素との分類基準

 関税率表解説には、第27.11項に分類される石油ガスと第29.01項に分類される炭化水素化合物の基準が下記のように規定されています。

化合物27.1129.01
エタン、エチレン、nーブタン、イソブタン95%未満95%以上
プロピレン、ブチレン、ブタジエン90%未満90%以上

第27.12項~第27.15項 パラフィンロウ、アスファルト等

 第27.12項~第27.15項には次の物品が分類されます。

  • 第27.12項 ペトロラタム並びにパラフィンろう、ミクロクリスタリン石油ワックス、スラックワックス、オンケライト、モンタンろう、泥炭ろうその他の鉱物性ろう及びこれらに類する物品で合成その他の方法により得たもの(着色してあるかないかを問わない。)
  • 第27.13項 石油コークス、石油アスファルトその他の石油又は歴青油の残留物
  • 第27.14項 天然ビチューメン、天然アスファルト、歴青質頁(けつ)岩、油母頁(けつ)岩、タールサンド、アスファルタイト及びアスファルチックロック
  • 第27.15項 歴青質混合物(天然アスファルト、天然ビチューメン、石油アスファルト、鉱物性タール又は鉱物性タールピッチをもととしたものに限る。例えば、マスチック及びカットバック)

第27.10項、第27.12項及び第27.13項の物品の分類基準

 国際分類例規には、第27.10項、第27.12項及び第27.13項の物品の分類基準が規定されていますので、必要に応じご参照ください。

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