重合反応が起こる前の低分子化合物を「単量体(モノマー)」と言い、重合体の中に組み込まれた単量体のことを「単量体ユニット(monomer unit)」と言います。 単量体ユニットを正しく理解することはHS分類を行うためには不可欠です。
 また、TPPの第39類の品目別規則を正しく理解するためにも、単量体ユニットの概念を理解しておく必要があります。

目次

  1. 単量体ユニットとは
  2. 単量体ユニットの事例
  3. 第39類注3(c)の「平均5以上の単量体」
  4. CTPPの39類品目別規則における「重合体の総含有量の50%」の意味

単量体ユニット(monomer unit)とは

 重合反応が起こる前の低分子化合物を「単量体(モノマー)」、出来た後のより大きな分子を「重合体(ポリマー)」ということは、「重合体とHS」のところで説明しました。
 重合の結果、重合体の中に組み込まれた単量体一つ一つのことを「単量体ユニットmonomer unit)」とよんでいます。
 関税率表解説には、単量体ユニット及びそのユニットの数え方について事例が掲げられています。当ホームページでは、これらの事例に単量体及び単量体ユニットの分子量相当量を追記しています。
 しばしば勘違いされる方がいらっしゃいますが、HS番号の決定に当たって単量体の重合体に占める重量比が問題となることがありますが、それは、原料の投入量の割合ではなく、重合した後のポリマーに含まれる単量体ユニットの重量比となります。特に共縮合物では、単量体の重量割合と、単量体ユニットの重量比が異なるので、注意が必要となります。

単量体ユニットの事例

ポリ塩化ビニル

 ポリ塩化ビニルは、塩化ビニル(単量体)を重合させた重合体で、重合体の単量体ユニットは「-CH-CHCl-」です。下記の図の重合鎖の単量体ユニットは3となります。

ポリアミド-6,6(6,6-ナイロン)

 ポリアミド-6,6は、アミン(R-NH)のヘキサメチレンジアミンとカルボン酸(R-COOH)のアジピン酸が連続して縮合することによりアミド結合を形成したもので、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸が対となって高分子を形成していきます。
 単量体の分子量と単量体ユニットの分子量相当量が異なるので、注意が必要です。
 下記の図の重合鎖の単量体ユニットは4となります。
 重合鎖において、ヘキサメチレンジアミン及び単量体ユニットが交互に繰り返されています。

エチレン・酢酸ビニル共重合体

 エチレン・酢酸ビニル共重合体は、エチレンと酢酸ビニルの共重合体です。エチレンと酢酸ビニルの2重結合の部分が反応して重合していくことから、エチレンと酢酸ビニルは任意の割合で重合することが出来、エチレンが連続して重合したり、酢酸ビニルが連続して重合したりすることもあり、繰り返しの単位はありません。
 下記の図の重合鎖の単量体ユニットは6となります。

第39類注3(c)の「平均5以上の単量体」の意味

 第39類注3(c)に「その他の合成重合体で平均5以上の単量体からなるもの」という規定がありますが、この平均5以上という計算をする単位は、単量体ユニットになります。平均5以上の単量体を合成させたものには、異なる単量体(モノマー)を重合させたものでもよいこととなっています。合成重合体において、平均5以上の単量体ユニットから構成されているものが、39類に分類されることとなります。

CTPPの39類品目別規則における「重合体の総含有量の50%」の意味

 CPTPPの第39類の品目別原産地規則で、例えば、第39.08項(ポリアミド)の原産地規則に、「第39.08項から第39.15項までの各項の産品への他の項の材料からの変更及び重合体の総含有量の50%が原産品であること」とありますが、この場合も、原料の投入量の割合ではなく、重合した後のポリマーに含まれる単量体ユニットの重量比となりますので、注意が必要です。

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