第11部の繊維製品の分類で、最も基礎的でかつ、重要な規定ですが、複雑な規定となっているのが、2以上の紡織用繊維からなる物品(例えば混紡繊維)の分類です。
 アセアン諸国とのEPAの繊維製品の原産地規則はそれ程複雑なものではありませんが、日EU・EPAの繊維製品の品目別規則は、殆どが加工工程基準を採用している上に、2以上の紡織用繊維からなる物品に関する許容限度(DMI)の規定は複雑です。TPP(CTPP)の繊維章の品目別規則は一般的にはヤーンフォワードルール(衣類の原産地基準を満たすには、糸から製造しなければならない。即ち、糸の原料⇒糸⇒織物⇒衣類の3工程が必要。)という非常に厳しいルールを原則としていますが、特定の原料についてはこの規定の例外となっています。
 これらのEPAの規定を正しく理解するためにも、混紡繊維のHS分類の仕組みを理解しておく必要があると思います。

目次

  1. 混紡繊維分類の原則 第11部注2(A)
  2. 第11部注2(A)適用に当たっての紡織用繊維の取扱い
    1. 紡織用繊維以外の素材を用いた場合の糸・織物の分類
    2. 2以上の紡織用繊維からなる物品の具体的な分類方法

混紡繊維分類の原則 第11部注2(A)

 2以上の紡織用繊維からなる物品の分類に関する第11部注2(A)の規定は次のようになっています。

 第 50 類から第55 類まで、第58.09 項又は第59.02 項のいずれかに属するとみられる物品で二以上の紡織用繊維から成るものは、構成する紡織用繊維のうち最大の重量を占めるものから成る物品とみなしてその所属を決定する。
 構成する紡織用繊維のうち最大の重量を占めるものがない場合には、当該物品は等しく考慮に値する項のうち数字上の配列において最後となる項に属するもののみから成る物品とみなしてその所属を決定する。

 前段の規定は、例えば、麻(亜麻:第53類)70%、綿(第52類)30%からなる織物は、麻製の織物として、第53.09項に分類されることを示します。また、麻40%、綿30%、ポリエステル短繊維(第55類)30%からなる織物は、麻が最大重量を占めることから、麻製の織物として、第53.09項に分類されます。
 後段の規定では、例えば、綿(第52類)50%、麻(第53類)50%からなる織物は、麻の織物の方が綿織物より後の項であるので、第53.09項に分類されます。

第11部注2(A)適用に当たっての紡織用繊維の取扱い

 第11部注2(A)の適用に当たり、上記3事例では、紡織用繊維繊維が属する類が全て異なっています。しかし、混紡された繊維が同じ項や類に属している場合など、具体的にどのようにこのルールを適用していくのでしょうか。第11部注2(B)に注2(A)の適用に当たっての、4つのルールが規定されています。

紡織用繊維以外の素材を用いた場合の糸・織物の分類

第11部注2(B)(a) 
 馬毛をしん糸に使用したジンプヤーン(第51.10 項参照)及び金属を交えた糸(第56.05 項参照)は、単一の紡織用繊維とみなすものとし、その重量は、これを構成する要素の重量の合計による。
 また、織物の所属の決定に当たり、金属糸は、紡織用繊維とみなす。

 本規定は、紡織用繊維ではない素材を使用した糸及び織物に関するものです。
 ジンプヤーン(gimp yarn)は、日本語で「ささべり糸」といわれ、精選版 日本国語大辞典によれば、「笹縁糸(ささべりいと)とは 飾撚糸(かざりねんし)の一種。細糸を芯にして、太糸を速く送り出して、心糸の回りに巻きつけ、さらに細糸を引き揃え、その回りに巻きつけたもの。」とあります。馬の毛をしん糸に使用したジンプヤーンは第51.10項に分類されます。馬毛は、紡織用繊維ではなく、第05.11項に分類されますが、第11部注2(A)適用に当たっては、馬毛の部分を含めて単一の紡織用繊維とみなし、その重量も含めて計算することを規定したものです。
 また、第56.06項の金属を交えた糸(metallized yarn:紡織用繊維等を金属と結合させ、又は被覆させたもの)についても、第11部注2(A)適用に当たっては、単一の紡織用繊維とみなし、使用されている紡織用繊維及び金属も含めて重量を計算することを明確にしています。
 後段の部分は、金属糸(metal thread:通常は第15部の卑金属に分類)を使用した織物の取扱いについて規定したものです。金属糸を使用した織物は、金属糸が最大重量を占める場合には、第58.09項の金属糸の織物を分類する項に分類され、それ以外の場合は最大重量を占める紡織用繊維の織物が属する項に分類されます。

2以上の紡織用繊維からなる物品の具体的な分類方法

 第11部注2(A)の適用に当たり、下記の(b)から(d)の規定の規定は、一体となった規則ですので、まとめて説明します。

第11部注2(B)
(b) 
 所属の決定に当たっては、まず類の決定を行うものとし、次に当該類の中から、当該類に属しない構成材料を考慮することなく、項を決定する。
(c) 
 第54 類及び第55 類の両類を他の類とともに考慮する必要がある場合には、第54 類及び第55 類は、一の類として取り扱う。
(d) 
 異なる紡織用繊維が一の類又は項に含まれる場合には、これらは、単一の紡織用繊維とみなす。

異なる紡織用繊維が一の類又は項に含まれる場合の取扱い

 2以上の紡織用繊維からなる物品の分類を決定する場合には、先ず、類の決定を行いますが、その際には、同一の類及び項に分類される紡織用繊維は、一つの紡織用繊維として取扱います。

(例1)

綿(第52類)40%、ポリエステル短繊維(第55類)25%、アセテート短繊維(第55類)35%の織物

 ポリエステル短繊維とアセテート短繊維は共に第55類に属するので、類の決定に当たっては、この2つの繊維の重量を合算して綿の重量と比較する。第55類の繊維の重量の方が大きいのでこの織物は第55類に属する。項の決定に当たっては、ポリエステル短繊維(合成繊維)とアセテート短繊維(半合成繊維)の重量を比較し、項を決定する。この織物は、アセテート繊維の重量の方が大きいので、合成繊維の短繊維の織物の属する項(第55.12項~第55.15項)には分類されず、再生繊維又は半合成繊維の属する第55.16項に分類される。

 *合成繊維、再生繊維又は半合成繊維についてはこちら

(例2)

亜麻(第53類)35%、ジュート(第53類)25%、綿(第52類)40%の織物

 第53類の亜麻とジュートの重量を合算して第52類の綿の重量と比較する。第53類の繊維の方の重量が多いので、この織物は第53類に分類される。亜麻の織物は第53.09項に、ジュートの織物は第53.10項に分類されるが、亜麻の重量の方が多いので、この織物は第53.09項に分類される。

人造繊維の長繊維と短繊維の両方の繊維を含む物品の分類

(例3)

ナイロン長繊維(第54類)35%、アクリル短繊維(第55類)25%、羊毛(第51類)40%からなる織物

 ナイロン長繊維とアクリル短繊維は類は異なるが、上記(ⅽ)の規定で「第54 類及び第55 類の両類を他の類とともに考慮する必要がある場合には、第54 類及び第55 類は、一の類として取り扱う。」とされており、ナイロン長繊維とアクリル短繊維の重量を合算して羊毛の重量と比較する。ナイロンとアクリルの合繊繊維の重量が羊毛より重いので、この織物は第54類又は第55類に分類される。第54類のナイロン長繊維の方が重いので、この織物は合成繊維の長繊維の織物として第54.07項に分類される。

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