繊維製品が分類される第11部は第50類から第63類まで、14の類で構成されるHS品目表で最大の部です。その上、分類が細かく、難解な部であると言えます。
 第11部がこれだけ細かくなったのは、HS品目表の前身の関税協力理事会品目表(CCCN)からHS品目表に移行する際に、米国がHS条約に加盟する条件として、繊維関係の分類を細かく規定することを要求したということを聞いたことがあります。
 今でも、米国では繊維産業はセンシティブな産業で、TPPの繊維章が別建てとなっており、非常に厳しい3工程ルール(ヤーンフォワードルール)が採用されているのも、そのためです。

目次

  1. 第11部の構成
    1. 第11部に分類されない繊維製品
  2. 繊維原料・糸・織物の分類
    1. 糸の太さ
  3. 特殊織物、不織布、編み物、網、ひも等の分類
  4. 「製品にしたもの」の定義と繊維製品のHSコード
  5. 衣類の分類
    1. 男子用の衣類と女子用の衣類
    2. 乳児用の衣類
    1. カタカナ表記の衣類の分類

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第11部の構成

 
 第11部は大きく分けて、次の3グループに分かれています。 

  1. 第51類~第55類
    繊維原料、糸、織物を分類
  2. 第56類~第60類
    特殊織物、不織布、編み物、網、ひも等
  3. 第61類~第63類
    衣類、紡織用繊維の製品

第11部に分類されない繊維製品

 第11部注1には、第11部に含まれない物品として、(a)から(V)まで列挙されていますが、主なものは次の通りです。特に炭素繊維とガラス繊維は第11部の紡織用繊維には含まれませんのでご注意ください。

  • プラスチックの単繊維で横断面の最大寸法が1ミリメートルを超えるもの及びプラスチックのストリップその他これらに類する物品(例えば、人造ストロー)で見掛け幅が5ミリメートルを超えるもの(第39 類)
  • 上記のプラスチックの組物、織物類、かご細工物及び枝条細工物(第46 類)
  • セルロースウォッディング(第48類)
  • 石綿及びその製品(糸、織物類、衣類等)(25.24、68.12 又は68.13)
  • 炭素繊維及びその製品(第68.15項)
  • 研磨材料を塗布した紡織用繊維(第68.05 項)
  • ガラス繊維及びその製品(第70類)

 また、紡織用繊維製の物品でも、かばん(第42類)、履物(第64類)、帽子(第65類)、傘(第68類)、寝具(第94類)、紙おむつ(第96類)等、他により限定された項がある場合は、第11部には分類されません。

繊維原料・糸・織物の分類

 上記の第1のカテゴリーとして、第50類から55類に分類される物品は次のような物品です。

  • 第50類
    繭、生糸、絹糸、絹織物
  • 第51類
    羊毛、繊獣毛、毛糸、毛織物(羊毛及び獣毛製のもの)
  • 第52類
    実綿、綿花、綿糸、綿織物
  • 第53類
    麻、その他の植物繊維、糸、織物(麻その他の植物先生のもの)
  • 第54類
    人造繊維の長繊維の糸及び織物
  • 第55類
    人造繊維の長繊維のトウ、短繊維、人造繊維の短繊維の糸及び織物

糸の太さ

 糸の太さは、番手を使用する場合が多いと思いますが、HSでは、「テックス(tex)」、「デシテックス(decitex)」という単位を使用します。1テックス=10デシテックスです。
 テックスとは、糸、フィラメント、ファイバーその他の紡織用繊維の糸、ひも等の1キロメートルあたりのグラム数に相当する繊維を表示する単位です。
 メートル式番手からデシテックスへの換算式は以下の通りです。
  10,000÷メートル式番手=デシテックス

特殊織物、不織布、編み物、網、ひも等の分類

 第2のカテゴリーの特殊織物、不織布、編み物、網、ひも等には次の物品が含まれます。

  • 第56類
    ウォッディング、フェルト、不織布、特殊糸、ひも、網、ケーブル及びこれらの製品
    この類には、漁網も分類されます。
  • 第57類
    紡織用繊維製のじゅうたん、床用敷物
  • 第58類
    特殊織物、タフテッド織物、レース、つづれ織物、トリミング、刺しゅう布
    この類には、幅30センチメートル以下の細幅織物、紡織用繊維製のラベル等も含まれます。
  • 第59類
    プラスチック、ゴム等を染み込ませ、塗布し、被覆し又は積層した織物類
    この類には、壁紙、リノリウム、コンベヤ用のベルト等も含まれます。
  • 第60類
    編み物(メリヤス編物及びクロセ編物)
    製品にしたものは、この類には分類されません。

「製品にしたもの」の定義と繊維製品のHSコード

 第3のカテゴリーの衣類、紡織用繊維の製品には、次の物品が含まれます。

  • 第61類
    編物の衣類及び衣類付属品(靴下、手袋等)
    メリヤス編物及びクロセ編物を製品にしたもののみが分類されます。
    第60類に分類されるメリヤス編物及びクロセ編物から製造したものの他、特定の形状に編み上げたもの(ホールガーメント)も第61類に分類されます。
  • 第62類
    織物の衣類及び衣類付属品(靴下、手袋等)
    ブラジャー、コルセット等は、編物であっても、この類に分類されます。
  • 第63類
    • 第1節:毛布、ベッドリネン、キッチンリネン、カーテン、ぞうきん、テント、その他の繊維製品
    • 第2節:織物と糸からなるセット
    • 第3節:中古衣類、ぼろ

「製品にしたもの」の定義

 第11部注7では、「製品にしたもの」は次のように定義されています。

この部において「製品にしたもの」とは、次の物品をいう。

  1. 長方形(正方形を含む。)以外の形状に裁断した物品
  2. 完成したもので、単に分割糸を切ることにより又はそのままで使用することができるもの
    (縫製その他の加工を要しないものに限る。例えば、ダスター、タオル、テーブルクロス、スカーフ及び毛布)
  3. 特定の大きさに裁断し、少なくとも一の縁を熱溶着し(縁を先細にし又は圧着したのが見えるものに限る。)、その他の縁をこの注に規定される他の加工をした物品(反物の裁断した縁にほつれ止めのための熱裁断その他の簡単な加工をしたものを除く。)
  4. 縁縫いし、縁かがりをし又は縁に房を付けた物品(反物の裁断した縁にほつれ止めのための簡単な加工をしたものを除く。)
  5. 特定の大きさに裁断した物品でドロンワークをしたもの
  6. 縫製、のり付けその他の方法によりつなぎ合わせた物品(同種の織物類を二以上つなぎ合わせた反物及び二以上の織物類を重ね合わせた反物(詰物をしてあるかないかを問わない。)を除く。)
  7. メリヤス編み又はクロセ編みにより特定の形状に編み上げたもの(単一の物品に裁断してあるかないかを問わない。)

繊維製品のHSコード

 第11部注8(a)において、上記の「製品にしたもの」の定義に当てはまる物品のHSコードについて次のように規定しています。

第50類から第55類まで、第60類及び、文脈により別に解釈される場合を除くほか、第56類から第59類までには、7に定義する製品にしたものを含まない。

 従って、 第11部注7の「製品にしたもの」の定義に該当する物品は、無条件に第50類から第55類まで及び第60類には含まれないことになります。
 第56類から第59類までの物品が上記の注7の定義に該当する際は、原則として第56類から第59類までには分類されず、第61~第63類に分類されることとなります。但し、「 文脈により別に解釈される場合を除くほか」とされていることから、類注の規定又は項の規定により 第56類から第59類までに分類されることがあります。例えば、劇場用の背景幕は、注7に該当する加工がしてあっても、第59.07項の「劇場用背景幕」に該当することとなります。

第50類から第55類までの「織物」と第62類及び第63類の「織物類」

  第50類から第55類までの「織物」と第62類及び第63類の「織物類」 は日本語では同じ「織物」という言葉が使用されていますが、英文では異なった表現となっており、カバ-する範囲も異なりますので注意が必要です。

第50類から第55類までの「織物」

 第50類から第55類までの織物は、英語では全て「woven fabrics」となっており、糸を縦・横に組み合わせて製造された布地のこととなります。
 また、第11部注9の規定により、これらの織物には「紡織用繊維の糸を平行に並べた層を鋭角又は直角に重ね合わせ、糸の交点で接着剤又は熱溶融により結合した物品を含む。」とされています。

第62類及び第63類の「織物類」

 第62類に分類される物品については、第62類注1で次のように規定されています。

この類の物品は、紡織用繊維の織物類(ウォッディングを除く。)を製品にしたものに限るものとし、メリヤス編み又はクロセ編みの物品(第 62.12 項のものを除く。)を含まない。

  また、第63類に分類される繊維製品については、第63類注1で次のように規定されています。

第1節の物品は、紡織用繊維の織物類を製品にしたものに限る。

 ここで、英文をみてみますと、織物の所は、「any textile fabrics」となっており、 「woven fabrics」 という限定されたものではなく、種々の紡織用繊維の生地からなる物品が分類されることが分かります。
 従って、第62類、第63類には不織布、フェルトやプラスチックを染み込ませた第59類の物品を使用した製品も分類されることとなります。
 また、類注の注の規定から、第62類(第 62.12 項を除く。) には編物の衣類は含まれませんが、第63類には編物の製品も含まれることとなります。

衣類の分類

男子用の衣類と女子用の衣類

 第61類と第62類の衣類の分類では、外衣類やシャツ、ブラウス等、男子用の衣類と女子用の衣類が別々に分類されている項目があります。大部分の衣類は、男子用の衣類と女子用の衣類と一目で峻別できると思いますが、中には男子用の衣類と女子用の衣類と判別がつかない、又は、そもそもユニセックス商品として製造されている衣類があります。
 このため、第61類注9と第62類注8には次のような規定が設けられています。

 この類の衣類で、正面で左を右の上にして閉じるものは男子用の衣類とみなし、正面で右を左の上にして閉じるものは女子用の衣類とみなす。この注9の規定は、衣類の裁断により男子用の衣類であるか女子用の衣類であるかを明らかに判別することができるものについては、適用しない。
 男子用の衣類であるか女子用の衣類であるかを判別することができないものは、女子用の衣類が属する項に属する。

第61類注9の規定(第62類注8の規定では、上記の「注9」は「注8」となっている。)

 この注の規定は、洋服では男物が右前、女物は左前として区別されていることに由来します。
 和服では、男性用も女性用も同じ右前となりますが、中段の規定で、「この注9の規定は、衣類の裁断により男子用の衣類であるか女子用の衣類であるかを明らかに判別することができるものについては、適用しない。」となっており、通常、和服は男性用と女性用が容易に区別されますので、この第61類注9と第62類注8の規定は適用されません。
 また、HSの分類では、男子用の衣類の方が先に分類され、女子用の衣類はその後に分類されている(例えば、第61.01項は男子用のコート、第61.02項は女子用のコート)ことから、後段の規定は、HSの通則3(c)の規定と整合的です。

乳児用の衣類

 第61.11項及び第62.09項に乳児用の衣類を分類する項が設けられていますが、乳児用の衣類にはどの程度の大きさのものまで分類するのでしょうか。
 第61類注5及び第62類注4には次の規定が設けられています。

(a) 「乳児用の衣類及び衣類附属品」とは、身長が86 センチメートル以下の乳幼児用のものをいう。
(b) 第61.11項(第62.09項)及びこの類の他の項に同時に属するとみられる物品は、第61.11項(第62.09項)に属する。

 この規定により、身長が86センチメートル以下の乳児用の衣類は、外衣でも下着でも、全て第61.11項又は第62.09項に分類されることとなります。

カタカナ表記の衣類の分類

 第61類及び第62類においては、項のテキストに沢山のカタカナ表記の衣類が出てきます。しかし、このカタカナ表記の衣類については、日本で通常使用されている衣類とは別のものを指す場合があるので注意が必要です。
 カタカナには和製英語もあります。米語はHSの正式な言語ではありません。衣類の分野では、イギリス英語と米語では全く異なったものを指すことも多いようです。
 日本語のテキスト(関税定率法別表)は、イギリス英語をそのままカタカナにしたものと日本語に直したものが混在しており注意が必要です。
 例えば、第61.04項には、「女子用のスーツ、アンサンブル、ジャケット、ブレザー、ドレス、スカート、キュロットスカート、ズボン、胸当てズボン、半ズボン及びショーツ(水着を除く。)(メリヤス編み又はクロセ編みのものに限る。)」とありますが、ここで「ショーツ」は文脈からも分かる通り女性用の下着(パンティー)ではありません。膝上までしかない短いズボンの事で外衣として使用するものです。研究社の英和中辞典では米語では男性用の下着(ブリーフ)を指すことがあるようですが、女性用の下着(パンティー)の意味はありません。
 衣類の分野では日本では米語もたくさん使用されていますが、米語はHSの正式な言語ではありません。インターネットや辞書等で意味を調べる際には、イギリス英語の意味を調べてください。

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