第38類には、第28類から第37類までに分類されない各種の化学品が分類されます。
 第38.02項から第38.07項までには、木材から得られる各種の化学品が分類されます。
 第38.25項には化学工業廃棄物及び都市廃棄物が、第38.27項にはオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書によって規制されているメタン、エタン又はプロパンのハロゲン化誘導体を含有する混合物が含まれます。

目次

第38.01項 人造黒鉛

 第38.01項には、次の物品が含まれます。

  • 人造黒鉛(化学的に単一な黒鉛を含む。)
  • コロイド状又は半コロイド状の黒鉛
  • 黒鉛その他の炭素をもととした調製品(ペースト状、塊状、板状その他半製品の形状にしたものに限る。)

 黒鉛は層状の六方晶系の結晶構造を有しているので、層状に剥離しやすくなっています。この点で同じ炭素からなるカーボンブラック(非晶質)やダイヤモンド(立方晶系)と異なります。
 天然黒鉛は第25.04項に分類されます。人造黒鉛と天然黒鉛は通常不純物の種類や含有量、エックス線回折のピークの形状等により区別することが出来ます。
 近年、精製法の進歩により、不純物の少ない天然黒鉛もあるようですが、人造黒鉛とはあくまでも製造方法によって区分されます。

第38.02項~第38.07項 木材由来の化学品等

 第38.02項~第38.07項には木材由来の各種化学品等が分類されます。

第38.02項 活性炭及び活性化した天然の鉱物性生産品並びに獣炭(廃獣炭を含む。)

 活性化したとは、炭素又は鉱物等を熱、化学品等により処理して、その表面構造を変性させ、湿気、臭気等の吸着、また、脱色、触媒、イオン交換、ろ過等に適合させたものをいいます。
 本項には、次の物品が含まれます。

  1. 活性炭
    • 植物由来の活性炭(木炭、やし殻活性炭)
    • 石炭から製造した活性炭
  2. 活性化した天然の鉱物性生産
    • 活性けいそう土
    • 活性粘土
    • 活性ボーキサイト
  3. 獣炭
    • 骨炭
    • 血炭
    • アイボリーブラック

 本項には、木炭(44.02)等、熱、化学処理等により、活性化を行っていない物品は含まれません。
 また、活性化アルミナ(28.18)、活性化シリカゲル(28.11及び38.24)、人造ゼオライトイオン交換体(28.42又は38.24)及びスルホン化石炭イオン交換体(sulphonated coal ion-exchanger)(38.24)等の活性化した化学品も含まれません。

第38.03項 トール油(精製してあるかないかを問わない。)

 トール油は、硫酸塩パルプ又はソーダパルプの製造の際に生じる黒色廃液から得られるものです。この液を沈殿おけに移すと泡状物質がその表面にでき、この泡状物質を加熱し、酸性化(通常は希硫酸酸性)して粗製トール油が得られます。
 粗製トール油は、脂肪酸、樹脂酸及び少量の不けん化物から成ります。精製トール油は粗製トール油を減圧蒸留その他の方法により精製して得られます。

第38.04項 木材パルプの製造の際に生ずる廃液

 本項には、第38.03項のトール油以外の木材パルプの製造の際に生ずる廃液が分類されます。
 また、ソーダ法又は硫酸塩法による木材パルプの製造の際に生ずる廃液で、トール油の原料となるものも含まれます。

第38.05項 ガムテレビン油、テルペン油、ジペンテン、パイン油

 本項に分類されるのは、針葉樹の浸出物又は樹脂分の多い針葉樹の木材から得られる主としてテルペン類(ピネン、ベータ-ピネン、リモネン等)に富む物品です。
 テルペン類とは、植物や菌類等によって作り出される生体物質です。炭素10個を単位として体系化されており、れぞれモノテルペン (C10)、セスキテルペン (C15)、ジテルペン (C20)、セスタテルペン (C25)、トリテルペン (C30)等があります。ラテン語で、セスキは1.5倍、セスタは2.5倍を表します。
 本項には次の物品が含まれます。

  • ガムテレビン油:松、もみ、からまつ等から浸出したオレオレジンを蒸留して得た揮発性の物品。
  • ウッドテレビン油、硫酸テレビン油その他のテルペン油(蒸留その他の方法により針葉樹から得たものに限る。)
  • 粗ジペンテン:粗ジペンテンはウッドテレビン油を分留するか又は合成しょう脳の製造の際に副産物として得たテルペン油(ジペンテンが約80%以下のもの)です。ジペンテンはリモネンの光学異性体の混合物で、純粋なもの又は商慣行上純粋なものとして取引されるジペンテンは29.02項に分類されます。
  • 亜硫酸テレビンその他のパラシメン(粗のものに限る。)
  • パイン油(アルファーテルピネオールを主成分とするものに限る。):一般に油分に富んだ松の切株から、水蒸気蒸留及び分解蒸留によってウッドテレビン油を採取した後に得た留分。α-ピネンの化学的な水和等によっても得られる。

 テルペン類は、第33.01項の精油にも数多く含まれていますが、本項に分類される物品は第33類には分類されません。(第33類注1(c))

38.06 ロジン及び樹脂酸並びにこれらの誘導体、ロジンスピリット、ロジン油並びにランガム

 ロジン及び樹脂酸は、松その他の針葉樹から浸出物の形で得たオレオレジン様物質の蒸留の際に、揮発性のテルペン系物品の分離、松の切株からの溶媒抽出、トール油(パルプ及び製紙工業の副産物)の分別蒸留によって得られるものです。

第38.07項 木タール、木タール油、植物性ピッチ等

 本項には、次の物品が含まれます。

  • 木タール
    木材を炭焼がまで炭化させる際にこれからしたたり落ちてきたもの及びかまで蒸留したもの
  • 木タール油
    木タールを蒸留したもの
  • 木クレオソート
    木タールの主成分で、通常、木タールを蒸留し、その留分に水酸化ナトリウムを加え分離し、再び酸性としてから再蒸留して得られたもの
  • 木ナフサ
    木酢液を処理して得られたもの
  • 植物性ピッチ
    植物性物質の蒸留その他の処理の残留物
  • ブルーワーズピッチその他これに類する調製品で、ロジン、樹脂酸又は植物性ピッチをもととしたもの

第38.08項 殺虫剤、殺菌剤、植物成長調整剤等

 本項には次の物品の内、下記の1~3に該当するものが分類されます。

  • 殺虫剤
  • 殺鼠(そ)剤
  • 殺菌剤
  • 除草剤
  • 発芽抑制剤
  • 植物生長調整剤
  • 消毒剤
  • その他これらに類する物品

1.小売用の物品

 殺虫剤、殺鼠(そ)剤、殺菌剤、除草剤、発芽抑制剤、植物生長調整剤、消毒剤として小売用に包装した物品は、本項に分類される。これらには次のような物品がある。

  • パラジクロロベンゼン(防虫剤として包装したもの):バルクの形状では第29類に分類される。
  • ポリ(ビニルピロリドン)よう素:うがい液等、外用消毒剤として使用される。

2.調製品

 2以上の物品から殺虫剤、殺鼠剤、殺菌剤、除草剤、発芽抑制剤、植物生長調整剤、消毒剤として調製を行った物品は、本項に分類される。

3.特定の形状の物品

 このカテゴリーの物品としては次のようなものがある。

  • 硫黄を含ませた帯及び芯
  • ろうそく(容器、住居等の消毒及びくん蒸に使用するもの。)
  • はえ取り紙(毒物を含まない粘着剤を塗布したものを含む。)
  • 果樹用のグリースバンド(毒物を含まないものを含む。)
  • ジャム保存用のサリチル酸含浸紙

殺菌剤と消毒剤

 殺菌剤(fungicides)と消毒剤(disinfectants)は一般に厳密に区分されずに使用されることも多いようです。しかし、HS品目表においては6桁の号が異なることもあり、厳密に区分されています。

殺菌剤

 関税率表解説では、「殺菌剤は、菌類の生長を阻止する物質(例えば、銅化合物をもとにした調製品)又はすでに発生している菌類を死滅させるための物品(例えば、ホルマリンをもととした調製品)である。」とされています。
 菌類(fungus)には細菌の他、カビ類やキノコ類も含まれます。殺菌剤はこれら菌類を死滅又は発育を抑止するための薬剤になります。
 殺菌剤は例えば、散布剤や燻蒸剤として使用されます。

消毒剤

 関税率表解説では、「消毒剤は、通常、無生物体上にある好ましくないバクテリア、ウイルスその他の微生物を死滅又は不可逆的に不活性化させる薬剤である。」とされています。
 infectantは、感染症を生じさせるもの、という意味がありますので、人体や動植物に感染症を生じさせるウイルス、バクテリア(細菌)をdisinfectantsで、感染症を生じさせるものを除くこと、ということになります。
 消毒剤は、病院では壁等の掃除又は器具の殺菌に使用したり、また農業では種子の消毒、好ましくない微生物を抑制するために飼料の製造に使用したりします。 
 殺菌剤と消毒剤の両方の作用を持つものは消毒剤として取扱われます。

第38.08項に分類されない物品

 次の物品は本項には分類されません。

  • 上記の1~3に該当しない物品
    • 粉末にした除虫菊の花(12.11)
    • 除虫菊エキス(鉱物油を添加して標準化してあるかないかを問わない。)(13.02)
    • クレオソート油又は鉱物性クレオソート(27.07)
    • 化学的に単一の化合物(水溶液を含む。)(28類及び29類
    • 殺鼠(そ)剤等のベースとして使用する培養微生物(30.02)
  • 他の項に含まれる調製品及び消毒、殺菌等の性質を副次的に有している調製品
    • 消毒石鹸(34.01)
    • 抗菌剤入りペイント(32類)
  • 消毒剤、殺虫剤等であるが、医薬品としての重要な特性を有するもの(30.03及び30.04)
  • 室内防臭剤として調製した製品(33.07)

(余談)蚊取線香とピレスロイド

mosquito coil

 蚊取線香は、除虫菊から作られていました。現在は、天然除虫菊から製造された蚊取線香もありますが、合成化学物質を有効成分として含有しているものもあります。
 除虫菊の有効成分はピレスロイドと呼ばれています。ピレスロイドは哺乳類や鳥類には比較的毒性が低くく、昆虫類に対しては強い毒性を有するという特徴があります。
 このとこから、現在では蚊取線香の他、タンス用の防虫剤、スプレー式の殺虫剤等、ピレスロイド系の化合物が幅広く使用されています。
 ピレスロイドの代表的な化合物としては、ピレトリン、アレスリンがあります。これらは殺虫剤や防虫剤として調製されている場合には本項に分類されますが、化学的に単一な化合物の場合には、第2916.20号に分類されます。
 

各種の工業用調製品

このグループには次のような調製品が含まれます。

  • 第38.09項 仕上剤、促染剤、媒染剤その他の物品及び調製品(繊維工業、製紙工業、皮革工業その他これらに類する工業において使用する種類のものに限るものとし、他の項に該当するものを除く。)
  • 第38.10項 金属表面処理用の調製浸せき剤、はんだ付け用、ろう付け用又は溶接用のフラックスその他の調製した助剤、はんだ付け用、ろう付け用又は溶接用の粉及びペーストで金属と他の材料とから成るもの並びに溶接用の電極又は溶接棒のしん又は被覆に使用する種類の調製品
  • 第38.12項 調製したゴム加硫促進剤、ゴム用又はプラスチック用の複合した可塑剤(他の項に該当するものを除く。)及びゴム用又はプラスチック用の調製した老化防止剤その他の複合した安定剤
  • 第38.15項 反応開始剤、反応促進剤及び調製触媒(他の項に該当するものを除く。)

自動車用の各種化学調製品

このグループには次のような調製品が含まれます。

  • 第38.11項 アンチノック剤、酸化防止剤、ガム化防止剤、粘度指数向上剤、腐食防止剤その他の調製添加剤(鉱物油(ガソリンを含む。)用又は鉱物油と同じ目的に使用するその他の液体用のものに限る。)
  • 第38.19項 液圧ブレーキ液その他の液圧伝動用の調製液(石油又は歴青油を含有しないもの及び石油又は歴青油の含有量が全重量の70%未満のものに限る。)
  • 第38.20項 調製不凍液及び調製解凍液

有機物の液体混合物

このグループには次のような調製品が含まれます。

  • 第38.14項 有機の配合溶剤及び配合シンナー(他の項に該当するものを除く。)並びにペイント用又はワニス用の調製除去剤
  • 第38.17項 混合アルキルベンゼン及び混合アルキルナフタレン(第27.07項又は第29.02項の物品を除く。)
  • 第38.23項 工業用の脂肪性モノカルボン酸、アシッドオイルで油脂の精製の際に生ずるもの及び工業用の脂肪性アルコール

その他の化学工業製品

このグループには次のような調製品が含まれます。

  • 第38.13項 消火器用の調製品及び装てん物並びに装てんした消火弾
  • 第38.16項  耐火性のセメント、モルタル、コンクリートその他これらに類する配合品(ドロマイトラミングミックスを含むものとし、第38.01項の物品を除く。)
  • 第38.18項 元素を電気工業用にドープ処理したもの(円盤状、ウエハー状その他これらに類する形状にしたものに限る。)及び化合物を電子工業用にドープ処理したもの
  • 第38.21項 微生物(ウイルス及びこれに類するものを含む。)用又は植物、人若しくは動物の細胞用の調製培養剤(保存用のものを含む。)

第38.22 診断用又は理化学用の試薬及び認証標準物質

 本項には、診断用又は理化学用の試薬の他、認証標準物質が分類されます。

診断用又は理化学用の試薬

 診断用試薬は、人間及び動物の物理的、生物物理的又は生物化学的経過及び状態の検査に使用されるものです。
 理化学用調製試薬は、診断用試薬のみならず、検査又は診断以外の目的に使用するその他の分析用の試薬を含みます。
 この項の試薬は、支持体を使用しているもの又は調製した形態のものです。また、2以上の構成要素からなるキットの形態のものもあります。
 本項に分類されるためには、成分、ラベル表示、試験管用又は理化学用の取扱い説明書、どのような診断用検査に用いられるかに係る表示又は物理的形態(例えば、支持体又は補体の存在)により明確にされている必要があります。
 本項に含まれる物品には次のようなものがあります。

  • リトマス試験紙
  • 免疫分析プレート
  • マラリア診断用キット
  • 血液用判定用試薬

認証標準物質

 認証標準物質は第38類注2に次のように規定されています。

  1. 第38.22項において「認証標準物質」とは、認証することとなる特性値、精度及びその特性値を求める際に用いられた方法を示す証明書が添付されており、分析用、検定用又は標準用として適する標準物質をいう。
  2. 認証標準物質は、第28類及び第29類の物品を除くほか、第38.22項に属するものとし、この表の他のいずれの項にも属しない。

 認証標準物質には次のようの者があります。但し、認証することとなる特性値、精度、その特性値を求める際に用いられた方法及び認証機関を示す証明書が添付されていなくてはなりません。

  • 濃度が正確に確定している被分析物質を添加した基質物質
  • 混合されてない物質で、特定の成分濃度(例えば、粉乳中のたんぱく質又は脂質の含有量)が正確に確定しているもの
  • 特定の性質(例えば、張力、比重)が正確に確定している物質(天然の物質であるか合成の物質であるかを問わない。)

第38.22項に分類されない物品

 本項に分類されない物品には次のような物があります。

  • 28.43項から28.46項まで及び28.52項の物品(同位元素からなる物品等)
  • 28類注1又は29類注1の物品(濃度を正確に測定した化学的に単一な化合物及び化学的に単一な化合物の水溶液等)
  • 30.06項の物品の特性を有する診断用キット(例えば、認可された臨床試験で使用される盲検又は二重盲検臨床試験キットで、投与量にしたもの)
  • 32.04項の着色料(32類注3の調製品を含む。)
  • 微生物(ウイルス及びこれに類するものを含む。)用又は植物、人若しくは動物の細胞用の調製培養剤(保存用のものを含む。)(38.21)

第38.24項 他の項に分類されない化学品

 本項には、鋳物用の鋳型又は中子(なかご)の調製粘結剤及び他の項に分類されない各種の化学品及び化学調製品が分類されます。

鋳物用の鋳型又は中子(なかご)の調製粘結剤

 調製粘結剤は鋳物砂に混合して、鋳物砂を鋳物用の鋳型又は中子に使用するのに適した堅さにし、また、鋳造後砂の除去を容易にするために使用します。
 本項に分類される調製粘結剤には、天然樹脂状物質(例えば、ロジン)、亜麻仁油、植物性粘質物、デキストリン、糖みつ、第39類の重合体等をもととした鋳物用の中子の粘結剤等があります。
 なお、鋳型は通常、第84.80項に分類されます。

ハロゲン化アルカリ金属等の培養結晶

 本項には、1個の重量が2.5g以上の酸化マグネシウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物を培養した結晶が分類されます。但し、第90類に分類される光学用の培養結晶は含まれません。(第38類注3(a))

他の項に分類されない化学品

 本項には、他の項に該当しない化学品及び各種の化学工業の調製品が分類されます。
 第28類及び第29類に該当する化学的に単一な化合物を水以外の溶媒に溶解させたもので、他の項に該当しない場合は、通常、本項に分類されます。

第38.25項 化学工業の残留物・都市廃棄物等

 本項には、都市廃棄物、下水汚泥及びその他の廃棄物が分類されます。
 通常、ゴミと称されているもので、通常、輸出入の際には関税関係法令以外の所定の手続きが必要となります。

第38.26項 バイオディーゼル及びその混合物

 本項に分類されるバイオディーゼルは、第38類注7に次のように規定されています。石油を70%以上含むバイオディーゼルは、第27.10項に分類されます。

 第38.26項において「バイオディーゼル」とは、動物性油脂、植物性油脂又は微生物性油脂(使用済みであるかないかを問わない。)から得た燃料として使用する種類の脂肪酸モノアルキルエステルをいう。

第38.27項 モントリオール議定書で規制されている物質の混合物

 本項には、モントリオール議定書(オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書)で規制されているメタン、エタン又はプロパンのハロゲン化誘導体を含有する混合物が分類されます。HSの2022年の改正で新設された項です。
 HS品目表では、国際条約で規制されている各種の物品を特定するために数多くの細分が設けられています。詳しくは「HSコードと世界的な化学物質の貿易管理」のページをご参照ください。
 

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