2(b)の規定の適用により又は他の理由により物品が二以上の項に属するとみられる場合には、次に定めるところによりその所属を決定する。

(a)最も特殊な限定をして記載をしている項が、これよりも一般的な記載をしている項に優先する。ただし、二以上の項のそれぞれが、混合し若しくは結合した物品に含まれる材料若しくは物質の一部のみ又は小売用のセットの構成要素の一部のみについて記載をしている場合には、これらの項のうち一の項が当該物品について一層完全な又は詳細な記載をしているとしても、これらの項は、当該物品について等しく特殊な限定をしているものとみなす。

(b)混合物、異なる材料から成る物品、異なる構成要素で作られた物品及び小売用のセットにした物品であって、(a)の規定により所属を決定することができないものは、この(b)の規定を適用することができる限り、当該物品に重要な特性を与えている材料又は構成要素から成るものとしてその所属を決定する。

(c)(a)及び(b)の規定により所属を決定することができない物品は、等しく考慮に値する項のうち数字上の配列において最後となる項に属する。

目次

  1. 通則3(a)~(c)の適用順位
  2. 通則3(a)
  3. 通則3(b)
  4. 「小売用のセットにした物品」の分類
  5. 通則3(c)
  6. 雑談コーナー  卑金属製キーリングの関税分類
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通則3(a)~(c)の適用順位

 この通則は、通則2(b)の規定又は他の理由により二以上の項に属するとみられる物品の所属を決定する方法として三つの方法を規定したものです。適用の優先順位は
 (a)のより特殊な限定をしている項、
 (b)のより重要な特性を有している項、
 (c)の数字上の配列において最後となる項
の順序となります。

 通則3を適用した事例では、商品にもよりますが、どちらが重要な特性を有するかの判断や、通則3(b)又は3(ⅽ)のどちらを適用すべきか等、国、税関、人によって判断ががばらばらとなることが生じる可能性があるため、通則3を適用して分類する新規商品については、念のため、関税分類の事前教示を受けた方が良いと思われます。 (特に通則3(b)又は3(ⅽ)を適用して所属を決定する場合。)

通則3を適用しない場合

 この通則は、項、部注又は類注の規定において別段の定めがない場合にのみ適用されます。以下の事例では、類注に規定があるので、通則3の適用はありません。

(例)97類の物品書画、版画、絵画、標本等の分類
 97 類の注4(B)において、97.01 項から97.05 項(書画、版画、絵画、標本等)までのうちの一つの項及び97.06 項(骨董)の双方に属するとみられる物品は、97.01 項から97.05 項までのうちの一つの項に属すると定めています。
 したがって、このような物品は、通則3を適用せず、97 類の注4(B)を適用してその所属を決定します。

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通則3(a) 最も特殊な限定をして記載をしている項が一般的な記載をしている項に優先する

 所属を決定するに当たっての第1の方法は、物品について最も特殊な限定をして記載をしている項をこれよりも一般的な記載をしている項に優先させて適用することです。
 いずれの項が他の項よりより特殊な限定をして物品を記載しているかを決定する上で厳密な規定はHS上にはありませんが、一般的には次のように考えられています。

名称(name)による限定は種類(class)による限定よりも特殊な限定である

(例)モーター付きバリカン
 電動装置を自蔵するかみそり及びバリカンは第85.10 項に属し、電動装置を自蔵する手持電動工具として第84.67 項又は電動装置を自蔵する家庭用電気機器として第85.09 項には属さない。
  〇 バリカン(第85.10 項)    ⇒ 機器の名前(より特殊な限定)
  × 手持電動工具第(84.67 項)  ⇒ 機器の種類
  × 家庭用電気機器(第85.09 項) ⇒ 機器の種類

物品がより明確に同一性を確認できる項の記載に該当する場合、その項の記載は同一性の確認がより不完全な他の項の記載よりもより特殊な限定をしている

  • (例1)自動車用マット
     自動車用の「タフトしたじゅうたん」は、自動車の附属品として第87.08項には属さず、「じゅうたん」としてより特殊な限定をして記載した第57.03 項に属する。
    • 〇 じゅうたん(第57.03 項)の方が同一性の確認が容易(より特殊な限定)
    • × 自動車の部品(第87.08項)多種多様のものがあり、同一性の確認が不完全
  • (例2)飛行機用ガラス
     強化ガラス又は合わせガラスの枠付きでない安全ガラスで、特定の形状にし、飛行機用のものと認定できるものは、飛行機の部分品として第88.03 項には属さず、安全ガラスとしてより特殊な限定をして記載した第70.07 項に属する。
    • 〇 安全ガラス(第70.07 項)の方が同一性の確認が容易(より特殊な限定)
    • × 飛行機の部品(第88.03 項)は多種多様のものがあり、同一性の確認が不完全
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通則3(b) 重要な特性を与えている材料又は構成要素から成るものとしてその所属を決定する

 通則3(b)は、通則3(a)により所属を決定することができない場合にのみ適用するもので、次の場合に限り適用されます。
(ⅰ)混合物
(ⅱ)異なる構成材料から成る物品
(ⅲ)異なる構成要素で作られた物品
(ⅳ)小売用のセットにした物品

 これらの場合において、上記の物品は、この規定を適用することができる限り、当該物品に重要な特性を与えている材料又は構成要素から成るものとしてその所属を決定します
 重要な特性を決定するための要素は、物品の種類によって異なります。例えば、その材料若しくは構成要素の性質(容積、数量、重量、価格等)又はその物品を使用する際の構成材料の役割によって決定することになります。
(例)

  • ミルクカートン紙(牛乳パック用の紙):4811.51、4811.59
     片面に中身に関する説明文及びイラストレーションが印刷されており、両面を透明の薄いポリエチレンシ一トで被覆している。幅が15 センチメートルを超えるロール状で、個々の容器に相当する部分を識別してロールから切断するために、折り目及び印がついている。
    (板紙(第48.11項)か、プラスチック製のシート(第39.21項)か?)
  • 卑金属性のキーリング
     雑談コーナー参照

 この通則の適用上、分離可能な構成要素から成る物品を含みます。当該構成要素は相互に適合性を有し、また相互に補完し合い、かつ、共に全体を構成するものであって、個々の部分品として通常小売用とならないものに限られます。
 一般にこれらの組み合わせた物品の構成要素は、一緒に包装されます。
(例)

  • 灰皿(取りはずすことができる灰用ボールとこれを支えるスタンドから成るもの)
  • 家庭用の香辛料置き台(特別に作ったフレーム(通常木製)とフレームに適合する形状及び寸法にした適当な数の香辛料用のあき瓶から成るもの)
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「小売用のセットにした物品」の分類

 次の3条件を全て満たす物品について、「小売り用のセットにした物品」として、セットに含まれる全ての物品を一括して分類し、通則3(b)を適用することが出来ます。

  1. 異なる項に属するとみられる二以上の異なった物品から成るもので、
  2. ある特定の必要性を満たすため又はある特定の活動を行うため、共に包装された産品又は製品から成りかつ
  3. 再包装しないで、使用者に直接販売するのに適した状態に包装されている物品

 この通則は、小売用でないもの、例えば、工業製造用(例えば、飲料製造用)に特定の割合の構成成分を取りそろえた物品で、当該構成成分を個々に包装(包装の形態の如何を問わない。)したものには適用されません。

通則3(b)を適用して所属が決定されるセットの事例

  • ハンバーガー(16.02)とポテトチップス(フレンチフライ)(20.04)を一緒に包装したセット第16.02項に分類
  • スパゲティ料理を調理するためのセット第19.02項に分類
     生スパゲティの包み(19.02)、すりおろしチーズの袋(04.06)及びトマトソースの小さな缶(21.03)を紙箱に収めたもの
  • 理髪用セット第85.10項に分類
     電気式バリカン(85.10)、くし(96.15)、はさみ(82.13)、ブラシ(96.03)及び織物製タオル(63.02)を、革製のケース(42.02)に収めたもの
  • 製図用キット第90.17 項に分類
     定規(90.17)、計算盤(90.17)、製図用コンパス(90.17)、鉛筆(96.09)及び鉛筆削り(82.14)を、プラスチックシート製のケース(42.02)に収めたもの

 上述のセットの所属(HS番号)については、当該セット全体に重要な特性を与えるとみなされる構成要素(単一又は同一項に属する複数の構成要素)によって決定されます。例えば、ハンバーガーとポテトチップスの小売用のセットの事例では、ハンバーガーに重要な特性ありとして第16.02項に分類されます。通常、店頭でも、ハンバーガーセットとして販売されていますので、HSコードの考え方と一致しています。

「小売り用のセット」に該当しない例  

同一の項に属する物品からなるセット

 6本のフォンデューフォークセットは同一の項に分類されるので、通則3(b)のセットとはみなしません。物品が全て同一の項に分類されるので、通則3を用いる必要はありません。

ある特定の必要性を満たすため又はある特定の活動を行うためのセットではないもの

 下記の事例のように、ある特定の必要性を満たすため又はある特定の活動を行うためにセットとしたものではない場合は、共に小売用に包装されたものであっても、構成要素の各々の物品が属する項に分離して分類します(分離課税)。

  • シュリンプの缶詰(16.05)、レバーパテの缶詰(16.02)、チーズの缶詰(04.06)、薄切りベーコンの缶詰(16.02)及びカクテルソーセージの缶詰(16.01)
  • 22.08 項の蒸留酒の瓶詰及び22.04 項のぶどう酒の瓶詰
  • ガラス瓶に詰めた可溶性コーヒー(21.01)、陶磁製のカップ(69.12)及び陶磁製の受皿(69.12)をともに板紙製の箱に入れて小売用にしたもの

使用者に直接販売するのに適した状態に包装されていない物品

 セットとなるべき物品が一つの箱、ケース等に入られれていない、また同一梱包となっていない場合など、使用者に販売するためにさらに再包装する必要が生じる物品については、通則3(b)の小売用のセットの規定は適用されません。

【参考】通則1の小売用のセット

 小売用のセットの中には、通則3を用いずに、通則1を用いて分類するものがあります。
 例えば、第63.08項の織物と糸からなるセット、第96.05項のトラベルセットは、項の規定により特定の使用目的に適するように種々の物品を小売用に取りそろえたものを分類することを規定しています。
 第96.05項は「トラベルセット(化粧用、洗面用、裁縫用又は靴若しくは衣服の清浄用のものに限る。)」となっていますので、旅行用の洗面セットや裁縫セットが分類されることになります。

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通則3(c) 等しく考慮に値する項のうち数字上の配列において最後となる項に分類する

 通則3(a)及び3(b)の規定により物品の所属を決定できない場合には、所属を決定するに当たって等しく考慮に値する項のうち数字上の配列において最後となる項に分類します。
 適用事例は多くありません。

通則3(ⅽ)の適用事例(その1)

水で希釈したのちフロントガラスの洗浄又は凍結防止に使用する調製品
商品名:Rozmrazovac-80℃
成分:
 エチルアルコール 83.6 %
 “Laurylan N-28”(陰イオン界面活性剤) 0.5 %
 メチルエチルケトン 0.18 %
 着色料(PR3) 0.001%
 水

(参考)HS分類の考え方:

  • フロントガラスの洗浄剤と考えると 第34.02項(調製界面活性剤、洗浄剤等)
  • 凍結防止剤と考えると 第38.20項(調製不凍液及び調製解凍液)
  • 洗浄剤と凍結防止剤の両者の特性が等しくあると考えられることから、通則3(ⅽ)を適用して第38.20項に分類する。

通則3(ⅽ)の適用事例(その2:小売用のセットの事例)

植物油、酢又は植物油及び酢を混合したもののそれぞれに食材を加えて取り揃えた物品
国際分類例規2209.00

 本品は、それぞれ砂時計型のガラス瓶に入れられ、これらはともに特別にデザインされた金属フレーム(スタンド)にのせて提示され、小売用のセットにしたものである。それぞれの瓶は混合品から成るもので、以下の3つの製品の組み合わせのうちのひとつを有している:

  1. カノーラ油(低エルカ酸菜種油)、チリペッパー及び黒こしょう
  2. カノーラ油、バルサミコ酢、白酢及びローズマリー
  3. 白酢、チリペッパー、ローズマリー、あんず、塩、抗酸化剤及び保存料

 この小売用セットにおいて、1~3の物品は、それぞれが等しくこのセットに特性を与えていると考えられ、HS品目表の最後に属する食酢として、第22.09項に分類されます。

出所:税関ホームページ「国際分類例規」
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雑談コーナー

卑金属製キーリングの関税分類

 キーリングは通常、キーリングに色々な装飾品を付けて売られています。観光地でお土産用に沢山のご当地の装飾物を付けたキーリングが売られています。
 これらの商品は、鉄(ステンレスを含む。)や銅(真鍮を含む。)の卑金属製のリングと、プラスチック製、木製等の装飾部分からなっています。これらの物品は、リング部分に特性ありとして卑金属製品として分類すべきか、装飾部分に特性ありとしてその装飾部分の属する項に分類すべきか、本ホームページをご覧になっている皆様はどのようにお考えでしょうか。

 右のキーリングはリング部分が鉄製で飾り部分(GUAMのロゴがある。)がプラスチック製です。リング部分に特性ありとすれば、その他の鉄鋼製品として、第73.26項に、プラスチックの飾り部分に特性ありとするとその他のプラスチック製品として第39.26項に分類されることとなります。
 どちらに特性があるかを判断するのは中々難しいですが、我が国では第73類の国内分類例規に「卑金属製キーリングと各種物品とを結合したもの」があります。そこでは、下記のように規定されています。
 この規定によれば、右の物品は第7326.90号に分類されることとなります。

7326.90 4.卑金属製キーリングと各種物品とを結合したもの
 本品は、卑金属製キーリングに各種の物品(例えば、小型懐中電灯、はさみ、ナイフ、人形、つめ切り等)を取り付けた物品である。キーリングの部分は、鉄鋼、黄鋼等で製造されている。キーリングに取り付けられるものには、実用的な性格を有するもの又は装飾的な性格を有するものがあり、通常、キーリング部分の価格よりも高い。
 卑金属製キーリングに各種の物品を取り付けたものについては、取り付けられた物品が単独で実用品として販売可能であると認められる場合は、その物品の属する号に分類し、その他の場合(単なるバランシング又は装飾品等)は、原則としてキーリングの属する号(例えば、第7326.90号)に分類する。
 ただし、その他の場合であっても取り付けられる物品が、象牙、貴石又は貴金属等を使用した特に高価なものであるときは、重要な特性がこれらの物品にあるものと認め、取り付けられた物品の属する号に分類する。

国内分類例規

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