HSコードの第40類にはゴム及びゴム製品が分類されます。第40類には天然ゴム及び合成ゴムが分類されますが、シリコンゴム等、「・・・ゴム」と称されている合成重合体の中には、第40類に分類されず、第39類に属するものもあります。HS品目表におけるゴムの定義を含めて解説していきます。

目次

HS品目表におけるゴムの定義 (第40類注1)

 第40類に分類されるゴムは第40類注1で次のように規定されています 。

 この表において「ゴム」とは、文脈により別に解釈される場合を除くほか、天然ゴム、バラタ、グタペルカ、グアユール、チクルその他これらに類する天然ガム、合成ゴム及び油から製造したファクチス並びにこれらの再生品(加硫してあるかないか又は硬質化してあるかないかを問わない。)をいう。

 上記に掲げてある物品は次のものです。

  • 天然ゴム:主としてゴムの樹、特にhevea brasiliensis 種の樹木のラテックスから得られたもの
  • バラタ:赤鉄科(Sapotaceae family)、特にbullet-tree(Manikarabideatata)樹木(主としてブラジル産)のラテックスから得られたもの
  • グタペルカ:赤鉄科の各種の樹木(例えば、Palaquium 属、Payena 属)のラテックスから得られたもの
  • グアユール:メキシコ原産のかん木(Parthenium argentatum)のラテックスから得られたもの
  • チクル:アメリカの熱帯地方に生育する赤鉄科(Sapotaceae family)のある種の樹木の樹皮に含まれているラテックスから得られたもの
  • その他類似の天然ガム(例えば、ジュルトン)
  • 合成ゴム
  • 油から製造したファクチス:ある種の植物油又は魚油に硫黄又は塩化硫黄を反応させて製造したもの

 合成ゴムの定義については、次節で見ていきたいと思います。
 また、アラビアゴム(種々のアカシヤから得られ、時には Nile gum、Aden gum 又は Senegal gum と称せられる。)、トラガカントゴム(Astragalus 属のある種の植物から得られる。)、バスラガム、アナカジウム(カシューナット樹から得られる。)、インディアンガム等の天然ガムは、第13.01項に分類されます。

HS品目表における合成ゴムの定義(第40類注4)

 HS品目表で、第40類に分類される合成ゴムは次の第40類注4の条件を満たす合成重合体等に限られます。

「合成ゴム」とは、次の物品をいう。

  1. 不飽和の合成物質で、硫黄による加硫により不可逆的に非熱可塑性物質とすることができ、かつ、この非熱可塑性物質が、温度18 度から29 度までにおいて、もとの長さの3倍に伸ばしても切れず、もとの長さの2倍に伸ばした後5分以内にもとの長さの1.5 倍以下に戻るもの。この試験においては、加硫助剤、加硫促進剤その他の架橋反応に必要な物質を加えることができるものとし、5(B)の(ⅱ)又は(ⅲ)の物質の存在も許容される。ただし、エキステンダー、可塑剤、充てん料その他の架橋反応に必要でない物質の存在は許容されない。
  2. チオプラスト(TM)
  3. 天然ゴムにプラスチックをグラフトし又は混合することにより変性させたもの、天然ゴムを解重合したもの及び不飽和の合成物質と飽和の合成高重合体との混合物で、(a)に定める加硫、伸長性及び復元性に係る要件を満たすもの

 上記の規定により、第40類に分類される合成ゴムは次の3カテゴリーに該当する物品です。

a. 不飽和の合成物質

  このカテゴリーに分類される合成ゴムは次の3条件を全て満たす必要があります。

  1. 不飽和の合成重合体であること
  2. 硫黄による加硫により不可逆的に非熱可塑性物質とすることができること
  3. 硫黄による加硫後の非熱可塑性物質が、温度18 度から29 度までにおいて、もとの長さの3倍に伸ばしても切れず、もとの長さの2倍に伸ばした後5分以内にもとの長さの1.5 倍以下に戻るもの

ゴム試験

 実際に物品に硫黄による加硫を行い、伸長性及び復元性に係る基準を満たしているか否かを確かめる試験をゴム試験と呼んでいます。ゴム試験については財務省関税中分析所のホームページに解説記事があるのでご参照ください。
 加硫後のゴムについて上記の試験を行う必要があるときは、加硫前の生ゴム又は配合ゴムを用いることとされています。
 また、この硫黄による加硫の条件は、第40類に分類される物品が合成ゴムか否かを決定するためのものであって、第40類に分類される合成ゴムは必ずしも硫黄による加硫が行われている必要はなく、過酸化物加硫やその他の加硫を行ったゴムも第40類に含まれます。

合成ゴムとして第40類に分類される不飽和合成物質

イソプレンゴムの構造式
重合体内に二重結合がある

 一般に、ゴム試験を満足する不飽和合成物質には、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシル化スチレン-ブタジエンゴム(XSBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソブテン-イソプレンゴム(ブチルゴム)(IIR)、ハロ-イソブテン-イソプレンゴム(CIIR 又は BIIR)、クロロプレンゴム(クロロブタジエンゴム)(CR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン-プロピレン-非共役ジエンゴム(EPDM)、カルボキシル化アクリロニトリル-ブタジエンゴム(XNBR)及びアクリロニトリル-イソプレンゴム(NIR)等があります。
 これらの合成重合体でも、 伸長性及び復元性に係るゴム試験を満たさない物品は合成ゴムとは認められず、合成重合体として第39類に分類されます。

イソブチレンゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムはゴムではない

メチルシリコンゴムの化学構造式
重合体内に二重結合が無い

 一般にイソブチレンゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムは飽和の合成重合体であり、上記1.「 不飽和の合成重合体であること」 の条件を満しません。従って、通常、イソブチレンゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムは合成ゴムとして第40類には分類されず、合成重合体のエラストマーとして第39類に分類されます。
 HS品目表では、機械類の部分品の取扱いをはじめ、第40類のゴムと第39類のプラスチックでは、分類の方法が大きく異なるので注意が必要です。

b.チオプラスト(TM)

 チオプラスト(TM)は、脂肪族炭化水素のジハロゲン化物と多硫化ナトリウムを反応させて得られる飽和の合成物品で、一般に古典的なタイプの加硫剤で加硫されます。ある種のチオプラストは他の合成ゴムに比して機械的性質の劣るものがありますが、溶剤に対する抵抗性は強いのが特徴です。
  チオプラストは、ゴム試験を満たす必要はありません。

ⅽ.天然ゴム又は合成ゴムを混合・変性させたもの

 このカテゴリーに該当する物品は以下の3種類となります。これらは何れもゴム試験の伸長性及び復元性に係る基準を満たす必要があります。

  • 天然ゴムにプラスチックをグラフトし又は混合することにより変性させたもの
  • 天然ゴムを解重合したもの(depolymerized natural rubber)
  • 不飽和の合成物質と飽和の合成高重合体との混合物

天然ゴムにプラスチックをグラフトし又は混合することにより変性させたもの

 通常、このようなゴムは、重合触媒を使用してゴムの上へ重合可能な単量体を固定するか又は天然ゴムラテックスと合成重合体のラテックスとの共沈によって得られます。
 変性させた天然ゴムの主な特徴は、ある程度自己補強性があり、この点でその性質は天然ゴムにカーボンブラックを混合したものに類似しています。

天然ゴムを解重合したもの (depolymerized natural rubber)

 天然ゴムの開重合(depolymerization)は、一定の温度で機械的処理(pounding)を行うことにより得られます。

不飽和の合成物質と飽和の合成高重合体との混合物

 この種の物品の事例としては、アクリロニトリル-ブタジエンゴムとポリ(塩化ビニル)との混合物があります。

原料ゴム・非加硫ゴムのHSコード

原料ゴム(第40.01項及び第40.02項)に認められる添加剤

 第40類注5(B)において、次の物質を含有するゴム及びゴムの混合物も、第40.01項及び第40.02項 に分類される旨規定されています。(ゴム及びゴムの混合物が原材料としての重要な特性を保持する場合に限る。)

  1. 乳化剤又は粘着防止剤
  2. 乳化剤の分解生成物(少量を含有する場合に限る。)
  3. 主として感熱ゴムラテックスを得るための感熱剤、主として酸性ゴムラテックスを得るための陽イオン界面活性剤、老化防止剤、凝固剤、顆粒化剤、凍結防止剤、ペプタイザー、保存剤、安定剤、粘度調整剤その他これらに類する特殊な目的のための添加剤(極めて少量を含有する場合に限る。)

配合ゴムの定義

 第40類注5(A)において、 凝固の前又は後に次の物品を配合したゴム及びゴムの混合物は、第40.01項及び第40.02項 から除外される旨規定されています。通常、これらの物質を含む未加硫のゴムは、第40.05項又は第40.06項に分類されます。

  1. 加硫剤、加硫促進剤、加硫遅延剤又は加硫助剤(プリバルカナイズドラバーラテックスの調製のために加えたものを除く。)
  2. 顔料その他の着色料(単に識別のために加えたものを除く。)
  3. 可塑剤又はエキステンダー(油展ゴムの場合の鉱物油を除く。)、充てん料、補強剤、有機溶剤その他の物質((B)の(i)から(ⅲ)までのものを除く。)

物品の形状によるHSコードの相違(第40.01項~第40.08項)

一次製品の定義

  第40類注3には、 第40.01項、第40.02項及び第40.05項に分類される「一次製品」を次のように定めています。

  1. 液状又はペースト状のもの(ラテックス(プリバルカナイズしてあるかないかを問わない。)その他のディスパーション及び溶液を含む。)
  2. 塊(不規則な形のものに限る。)、ベール、粉、粒、小片その他これらに類する形状のもの

板、シート及びストリップの定義

 第40類注9において、第40.01項~第40.03項、第40.05項及び第40.08項に分類される「板、シート及びストリップ」は次のように規定されています。

板、シート、ストリップ及び規則正しい幾何学的形状の塊で、切ってないもの及び単に長方形(正方形を含む。)に切ったもの(製品としての特性を有するか有しないか又はプリントその他の表面加工をしてあるかないかを問わない。)に限るものとし、その他の特定の形状に切ったもの及び更に加工したものを除く。

棒及び形材の定義

第40類注9には、もう一つ、第40.08項の形材についての規定があります。

40.08 項において棒及び形材は、棒及び形材で、一定の長さに切ってあるかないか又は表面加工をしてあるかないかを問わないものとし、その他の加工をしてないものに限る。

 第40.08項の形材に関しては、第40.07項の「糸及びひも」とを区分するために、第40類注7に次のような規定があります。

加硫したゴムのみから成る糸で横断面の最大寸法が5ミリメートルを超えるものは、ストリップ、棒又は形材として 40.08 項に属する。

 この規定により、横断面の最大寸法が5ミ 第40.06項 リメートルを超える糸は第40.08項に、5ミリメートル以下の糸は第40.07項に分類されることとなります

未加硫ゴムの形状によるHSコード(まとめ)

  第40.01項、第40.02項及び第40.05項には、項の規定により「一次製品」及び「板、シート及びストリップ」が分類されることとなります。この形状以外の未加硫ゴムは、第40.06項に分類されます。これをまとめると以下の表の通りとなります。

原料ゴム配合ゴム
「一次製品」及び「板、シート及びストリップ」 第40.01項、第40.02項 第40.05項
その他の形状の物品 第40.06項 第40.06項

加硫ゴムの形状によるHSコード(まとめ)

加硫ゴムは第40.07項から第40.17項に属しますが、形状により、次のように分類されます。

  • 糸及び紐(横断面の最大寸法が5ミリメートル以下の物):第40.07項
  • 板、シート、ストリップ、棒及び形材(横断面の最大寸法が5ミリメートルを超える糸を含む。):第40.08項
  • その他の形状の物品:第40.09項から第40.07項

第40類に含まれないゴム製品

  第40類注2には、第40類に含まれない物品として、下記のものか掲げられています。

  1. 第 11 部の物品(紡織用繊維及びその製品)
  2. 第 64 類の履物及びその部分品
  3. 第 65 類の帽子(水泳帽を含む。)及びその部分品
  4. 第 16 部の機械類及び電気機器(電気用品を含む。)並びにこれらの部分品で、硬質ゴム製のもの
  5. 第 90 類、第 92 類、第 94 類又は第 96 類の物品
  6. 第 95 類の物品(運動用の手袋、ミトン及びミット並びに 40.11 項から 40.13 項までの製品を除く。)

第 11 部の物品(紡織用繊維及びその製品)

 上記の物品の中で、「第 11 部の物品(紡織用繊維及びその製品)」には注意が必要です。
 ゴムを染み込ませた織物(編み物を含む。)は第59類に分類されます。第59類注4には第59.06項に分類される物品が規定されていますので、この規定に該当しないゴムを染み込ませた織物は、通常、第40類に分類されます。

第59類注4
 第 59.06 項において「ゴム加工した紡織用繊維の織物類」とは、次の物品をいう。

  1. ゴムを染み込ませ、塗布し、被覆し又は積層した紡織用繊維の織物類で、次のいずれかの要件を満たすもの
    1. 重量が1平方メートルにつき 1,500 グラム以下であること。
    2. 重量が1平方メートルにつき 1,500 グラムを超え、かつ、紡織用繊維の重量が全重量の50%を超えること。
  2. 第 56.04 項の糸、ストリップその他これらに類する物品(ゴムを染み込ませ、塗布し又は被覆したものに限る。)から成る織物類
  3. 平行した紡織用繊維の糸をゴムにより凝結させた織物類(1平方メートルについての重量を問わない。)

 もっとも、この項には、紡織用繊維の織物類とセルラーラバーの板、シート又はストリップとを結合したもので当該紡織用繊維の織物類を単に補強の目的で使用したもの(第 40 類参照)及び第 58.11 項の紡織用繊維の物品を含まない。 

 ゴムを染み込ませたフェルト・不織布は第56.02項又は第56.03項に分類されますが、これらの項に含まれる物品は第56類注3に規定されている条件を満たすもののみです。この規定に該当しない物品は、通常、第40類に分類されます。

第56類注3
 第 56.02 項及び第 56.03 項には、それぞれフェルト及び不織布で、プラスチック又はゴム(性状が密又は多泡性であるものに限る。)を染み込ませ、塗布し、被覆し又は積層したものを含む。
 また、第 56.03 項には、プラスチック又はゴムを結合剤として使用した不織布を含む。
 ただし、第 56.02 項及び第 56.03 項には、次の物品を含まない。

  1. フェルトにプラスチック又はゴムを染み込ませ、塗布し、被覆し又は積層したもので紡織用繊維の重量が全重量の 50%以下の物品及びフェルトをプラスチック又はゴムの中に完全に埋め込んだ物品(第 39 類及び第 40 類参照)
  2. 不織布をプラスチック又はゴムの中に完全に埋め込んだ物品及び不織布の両面をすべてプラスチック又はゴムで塗布し又は被覆した物品でその結果生ずる色彩の変化を考慮することなく塗布し又は被覆したことを肉眼により判別することができるもの(第 39 類及び第40 類参照)
  3. フェルト又は不織布と多泡性のプラスチック又はセルラーラバーの板、シート又はストリップとを結合したもので、当該フェルト又は不織布を単に補強の目的で使用したもの(第39 類及び第 40 類参照)


 紡織用繊維にゴムを染み込ませたゴム糸及びゴム紐及び紡織用繊維で被覆したゴム糸及びゴム紐は第56.04項に分類されます。この内、ゴムを染み込ませ、塗布し又は被覆したことを肉眼により判別することができないものは、通常、第50類から第55類に分類されます。

第56類注4
 第 56.04 項には、紡織用繊維の糸及び第 54.04 項又は第 54.05 項のストリップその他これに類する物品で、染み込ませ、塗布し又は被覆したことを肉眼により判別することができないものを含まない(通常、第 50 類から第 55 類までに属する。)。この場合において、染み込ませ、塗布し又は被覆した結果生ずる色彩の変化を考慮しない。

ゴム製の機械類(第16部)及び輸送用機器(第17部)の部分品のHSコード

ゴム製の第16部の機械類(第84類及び第85類)の部分品のHSコード

 第16部の機械類(第84類及び第85類)の部分品として使用するゴム製品で第40類注2により第40類から除外されているのは硬質ゴム製品のみです。通常の加硫ゴム製品の取扱いはどうなっているでしょうか。
 第16部注1(a)により、「伝動用又はコンベヤ用のベルト及びベルチングで加硫ゴム製のもの(第 40.10 項参照)並びに機械類、電気機器その他の技術的用途に供する種類の加硫ゴム(硬質ゴムを除く。)製品(第 40.16 項参照)」は、第16部から除外されていますので、基本的にゴム製の機械類の部分品は第40類に分類されます。
 また、 第16部注1(c)により、 ゴム製のボビン、スプール、コップ、コーン、コア、リールその他これらに類する巻取用品も第40類に分類されます。

ゴム製の第17部の車両・航空機の部分品のHSコード

  第17部注1(a)により、 「ジョイント、ワッシャーその他これらに類する物品(構成する材料により該当する項又は第 84.84 項に属する。)及びその他の加硫ゴム(硬質ゴムを除く。)製品(第 40.16 項参照)」が第17部から除外されていますので、これらのゴム製の物品も第40類に分類されます。
 また、第17部から明確に除外されていない、加硫ゴム(硬質ゴムを除く。)の形材(特定の長さに切ってあるかないかを問わない。)(40.08)、 伝動用のベルト(加硫ゴム製のものに限る。)(40.10) 、ゴム製のタイヤ、インナーチューブ等(40.11から40.13 まで)も通則3(a)により第40類に分類されることとなります。

ゴム製の機械類及び輸送用機器の部分品のHSコード (まとめ)

 上の表に記載している、「原則2」、「原則3~5」、「原則4」、「番外」については、「機械類の部分品のHSコード分類5原則」及び「自動車等、輸送機器(第17部)の部分品HSコード分類4原則」のページをご参照ください。

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