EUの化学品HSコードデータベース(ECICS :European Customs Inventory of Chemical Substances)は、欧州委員会 税制・関税同盟総局が運営する化学品のHSコード(EUの8桁の番号)を検索できるサイトです。HSコードの上6桁は世界共通ですので、日本に輸入する際にも、EU以外の国に輸出する場合にも活用できます。
EUの税制・関税同盟総局が運営する信頼できるサイトで、誰でも無料で利用できるのでご活用をお勧めいたします。
ここでは、ECICSの利用方法と利用上の注意点について述べたいと考えます。
目次
ECICSの概要
ECICSの検索サイトにアクセスします。
検索のキーとしては、次のものが利用できます。
- CAS RN (Chemical Abstracts Service Registry Number)
- CUS (Customs Union and Statistics number )
- CN Number (combined nomenclature:EU版HS品目表)
- EC Number (EUが定めた化学物質の同定番号)
- UN Number (国連番号:輸送上の危険性や有害性がある化学物質に付与された番号)
- 化学名 (一般名、IUPAC名等)
CAS RNを利用した検索
化学品の名称又はCAS RNの何れでも検索できますが、名称の場合は同一の化合物に対し複数の名称が存在し、必ずしもその名称がデータベースに登録されているとは限りませんので、CAS RNによる検索をお勧めします。
具体的な検索方法は下記の通りです。
一番上のCAS RNの欄にSDSに記載されているCAS RN(CAS No.)を入力します。
例えば、はエタノールアミン(CAS RN 141-43-5 )のHSコードを検索してみましょう。
CAS RNの欄にエタノールアミンのCAS RN「141-43-5」を入力し、「Submit」のボタンをクリックします。そうしますと、検索結果が現れます。「CN Code」と記載されている番号が、EUの8桁の関税番号で、その上6桁が世界共通のHSコードです。エタノールアミンの場合は、第2922.11号となります。一番下に構造式も表示されているので、化学品の分類ができる方は、本当にその分類が正しいか、自分で確かめることもできます。
CAS RNとは
「CAS RN」は、「Chemical Abstracts Service Registry Number」の略です。
CAS NO、CAS番号とも呼ばれています。
アメリカ化学会は、世界各国で発表される学術雑誌の論文、特許、学会議事録などを要約した「Chemical Abstracts」誌を発行しています。基本的に化学物質一つ一つに番号が振られており、その番号がCAS RNです。
化合物は様々な別名を持つこともあり、複雑な化合物の場合は同一の化合物かどうかを確認することが化学品の名称だけでは大変なことがあります。CAS RNは化合物一つ一つに異なる番号が振られているので、化学品が同一であるかどうかの確認を行う際にはCAS RNを用いるのが世界のデファクトスタンダードとなっています。
化学名による検索
化学名には、IUPAC名、一般名、商品名等、複数の名称が存在します。
例えば、エタノールアミンのように比較的簡単な有機化合物でも、エタノールアミン( ethanolamine)、2-アミノエタノール(2-aminoethanol)、モノエタノールアミン(monoethanolamine, 略:MEA)という、複数の名称があります。
IUPAC名は、International Union of Pure and Applied Chemistry(国際純正・応用化学連合)の勧告に基づく命名法です。
名称による検索では、スペルを間違えないように注意します。データベースには一部の名称しか掲載されていないことを前提に検索を行う必要があります。
化学名からCAS RNを調査して検索する
化学名が日本語で表記されていたり、CAS RNが不明な場合には、NITTE-CRIP(独立行政法人製品評価技術基盤機構の化学物質総合情報提供システム)等の検索システムでCAS RNを調査してからECICSを利用することができます。
この他、ウィキペディアや化学品メーカーのサイトに掲載されているカタログでもCAS RNを調査することができます。
ECICSで検索結果が表示されない場合の対応方法
ECICSで検索結果が表示されない場合でも、次のような方法で検索できることがあります。
- 複数のCAS RNがある場合には、他のCAS RNで検索してみる
- 化学名で検索してみる
- 酸・塩基の種類を変えて検索する
他のCAS RNで検索する
複数のCAS RNを持つ化学品もあります。
また、結晶水の有無や結晶構造の違いによりCAS RNが異なる場合があります。これらの相違では一般的にHSコードが異なることはありません。
検索結果が表示されない場合でも、他のCAS RNで検索してみましょう。
化学名で検索する
複数のCAS RNを持つ化学品の場合、全てのCAS RNに対してHSコードのデータがあるわけではありません。このような場合、化学品名で検索するとHSコードが検索することができる場合があります。
酸・塩基の種類を変えて検索する
有機酸や有機塩基の場合、一部の例外を除いて、フリーの酸、塩基とこれらの塩のHSコードは同じです。
もし、検索したい化合物がフリーのアミンであれば、その塩酸塩や酢酸塩のCAS RNをインターネットで調査して検索することが考えられます。
同様にもし有機酸のアンモニウム塩でHSコードが表示されない場合、ナトリウム塩やフリーの有機酸で検索してみることが考えられます。
これらの化学品のCAS RNはNITE-CHRIPや化学品メーカーのサイトで調査することが可能です。
ECICS利用の注意事項
SDSに記載された成分から検索する場合
化学品を輸出入しようとすると、多くの場合、SDS(安全データシート:Safety Data Sheet)が必要になります。そのSDSには、通常、化学品の名称とCAS RNが記載されています。SDSの情報を基にECICSで検索して化学品のHSコードを調査される方も多いと思います。
しかし、SDSには、化管法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律 )で指定された物質又はそれを含有する製品に関する情報を記載することになっており、必ずしもHSコードの決定に必要な成分情報が全て記載されているとは限りません。
SDSにHSコード特定に必要な情報が全て記載されているか否かを確認の上ご利用ください。
詳しくは、SDSとHSコードのページをご参照ください。
化学的に単一の化合物であるか否か
第28類及び第29類には原則として、化学的に単一の化合物のみが分類されます。物品に2種類以上の化合物が含有されている場合は、調製された化学品ではないか、副成分が第28類注1若しくは第29類注1の不純物に該当するか、又は保存、輸送のために添加されたものかどうか等を検討の上、HSコードを決定することになります。
検索結果に2以上のHSコードがある場合
検索結果に2つ以上のHSコードが記載されている場合には、ECICSの注を参考にしてHSコードを決定します。
例えば酸化チタン(CAS: 13463-67-7)をECICSで検索すると、多数のHSコードが記載されています。
化学的に単一な酸化チタンは2823.00となりますが、顔料として使用するために酸化チタンの表面を有機化合物等で処理した酸化チタンは化学的に単一な化合物ではなく、無機顔料として第32.06項に分類されます。
両者ともに酸化チタンとして取引されており、CAS RNも同じですので注意が必要です。
酸化チタンで検索すると、上記以外のHSコードも表示されますが、それぞれの酸化チタンがどのような目的で調製されたのかによってHSコード異なることとなります。
化学的に単一の化合物ではない場合
ECICSは基本的に化学的に単一の化合物に対するHSコードの検索システムです。しかし、一部ではありますが化学的に単一ではない化合物も検索可能です。
第39類の高分子の場合においても、単量体ユニットの重量比等を勘案の上、最終的にHSコードを決定することになります。
また、低重合度の合成高分子においては、単量体ユニットの数でHSコードが異なることがあります。
調製化学品の場合には、調製方法によりHSコードが異なることがあります。ECICSに掲載されている場合には、注を参考にHSコードを決定します。
100%正しいとは限らない
ECICSは信頼のおけるデータベースですが、人間が作成する以上、完璧ということはありません。
誤りが発生する可能性があるほか、EU各国政府間の解釈の相違が反映する可能性もあります。
同一のHSコードであるべき2つの物質に異なったHSコードが附されていた場合もありますので、ご留意ください。
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