共重合体及びポリマーブレンドのHS分類は、項(HS4桁)及び号(HSHS6桁)で分類方法が異なるなるなど、かなり複雑なものとなっており間違われる方も多いので、分類の方法を解説します。

目次

  1. 共重合体及びポリマーブレンドの項(HS4桁)の分類
    1. 第39類注4
    2. 共重合体、ポリマーブレンド等の意味
    3. 重合体・共重合体の95%基準
    4. 最大の重量を占めるコモノマーユニット
    5. 同一の項に属する重合体
  2. 共重合体及びポリマーブレンドの号(HS6桁)の分類
    1. 第39類号注1
    2. 「その他のもの」を定める号がある場合
    3. 一連の号中に「その他のもの」を定める号がない場合

共重合体及びポリマーブレンドの項(HS4桁)の分類

第39類注4

 第39類注4では、共重合体の分類について下記のように規定しています。

 「共重合体」とは、重合体の全重量の95%以上を占める一の単量体ユニットを有しないすべての重合体をいう。
 この類において共重合体(共重縮合物、共重付加物、ブロック共重合体及びグラフト共重合体を含む。)及びポリマーブレンドは、文脈により別に解釈される場合を除くほか、これらを構成するコモノマーユニットのうち最大の重量を占めるコモノマーユニットの重合体が属する項に属する。この場合において、同一の項に属する重合体を構成するコモノマーユニットは、一のものとみなしその重量を合計する。
 最大の重量を占めるコモノマーユニットが存在しない場合には、共重合体及びポリマーブレンドは、等しく考慮に値する項のうち数字上の配列において最後となる項に属する。

共重合体、ポリマーブレンド等の意味

 注4では、これまで説明していない言葉が出てきますので、まず、HSで使用される場合の意味について説明します。

  • 共重合体には、共縮重合物、共重付加物、ブロック共重合体及びグラフト共重合体を含みます。
  • 共縮重合物、共重付加物はそれぞれ縮合重合、付加重合で合成された共重合体です。
  • ブロック共重合体とは、異なる単量体ユニットから成る少なくとも二種類の重合鎖が、結合した共重合体をいいます。

グラフト重合体

グラフト共重合体とは、主鎖となる重合鎖に、異なる単量体ユニットから成る側鎖が結合している共重合体をいます。グラフト(graft)とは、接ぎ木のことで、ここでは、主たる重合鎖に別の種類の重合鎖を結合させることにより生成させます。

  • (例1)スチレン-ブタジエン共重合体-グラフト-ポリスチレン  
      スチレン-ブタジエン共重合にポリスチレンが側鎖として結合したもの
  • (例2)ポリブタジエン-グラフト-スチレン-アクリロニトリル共重合体
     ポリブタジエンにスチレン-アクリロニトリル共重合体が側鎖として結合したもの

ポリマーブレンド

 複数のポリマーを混合したもの。通常は複数のポリマーを混合しても分離して均一にならないので、溶化材等を添加して均一にします。

重合体・共重合体の95%基準

 第39類注4の第1パラグラフには、「「共重合体」とは、重合体の全重量の95%以上を占める一の単量体ユニットを有しないすべての重合体をいう。」と規定されています。これは、逆に言うと、全重量の95%以上を占める単量体ユニットがある場合は、HS分類上「共重合体」とはみなさないということです。
 例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体で、エチレンの単量体ユニットの重量が96%、酢酸ビニルの単量体ユニットの重量が4%の場合は、共重合体としてではなく、エチレンの重合体として分類することとなります。
 日本に輸入する場合、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンの塊、粉、粒、フレーク等の形状の重合体の関税率は6.5%であるのに対し、これらの共重合体の関税率は2.5%であり、関税率に差があるので、時に税関から共重合の割合に関する資料の提示を求められることがあると思います。その場合は、税関はこの95%基準を念頭に資料を提示を求めているとご理解頂ければと考えます。

最大の重量を占めるコモノマーユニット

 第39類注4の第2パラグラフ前段には、「この類において共重合体(中略)及びポリマーブレンドは、(中略)これらを構成するコモノマーユニットのうち最大の重量を占めるコモノマーユニットの重合体が属する項に属する。」と規定されています。
 この規定をエチレン・酢酸ビニル共重合体に当てはめると、エチレンの単量体ユニットの重量が60%、酢酸ビニル単量体ユニットの重量が40%の場合は、第39.01項(エチレンの重合体)に、エチレンの単量体ユニットの重量が40%、酢酸ビニル単量体ユニット60%の場合は第39.05項(酢酸ビニルの重合体)に分類されることとなります。
 第3901.30号に「エチレン酢酸ビニル共重合体」がありますが、エチレンの単量体ユニットの重量が40%、酢酸ビニル単量体ユニット60%のエチレン酢酸ビニル共重合体は第3901項には分類されません。第39.02項にはエチレン酢酸ビニル共重合体を特掲した号はありませんので、第3905.29号(酢酸ビニルの共重合体)に分類されます。号の表記に惑わされず、まず、物品が属する項(HS4桁)を確定してから次に号(HS6桁)を決定するのは、HS分類の鉄則です。

同一の項に属する重合体

 第39類注4の第2パラグラフ後段には、「同一の項に属する重合体を構成するコモノマーユニットは、一のものとみなしその重量を合計する。」という規定がありますが、下記に本規定の適用例を示します。

  •  エチレン45%、プロピレン35%及びイソブチレン20%の単量体ユニットから成る共重合体は、プロピレン及びイソブチレンの各々の重合体が第39.02項に属するので、これらを合計すると共重合体の55%を構成しており、エチレンの単量体ユニットより大きい重量を占めるので、第39.02項に属する。
  •  トルエンジイソシアネートとポリエーテルポリオールをもととしたポリウレタン55%とポリ(オキシキシリレン)45%から構成されるポリマーブレンドは、ポリウレタンの単量体ユニットがポリ(オキシキシリレン)によるポリエーテルの重量より大きい重量を占めるので第39.09項に属する。ポリウレタンを定義するにあたってはポリウレタンの単量体ユニットの全て(ポリウレタンの一部分を形成するポリエーテルポリオールの単量体ユニットを含む。)を第39.09項に属する単量体ユニットとしてその重量を合計する。

共重合体及びポリマーブレンドの号(HS6桁)の分類

第39類号注1

 共重合体及びポリマーブレンドのHS6桁(号)の分類方法については、第39類号注1に次のように規定されています。

 この類の各項において重合体(共重合体を含む。)及び化学的に変性させた重合体は、 次に定めるところによりその所属を決定する。

⒜ 一連の号中に「その他のもの」を定める号がある場合には、次に定めるところによる。
⑴ 号において接頭語として「ポリ」が付された重合体(例えば、ポリエチレン及びポリアミド-6,6)は、重合体を構成する一の単量体ユニット又は当該重合体の名称が由来する二以上の単量体ユニットが全重量の95%以上を占める重合体のみをいう。
⑵ 第3901.30 号、第3901.40 号、第3903.20 号、第3903.30 号又は第3904.30 号の共重合体は、当該共重合体の名称が由来するコモノマーユニットが全重量の95%以上を占める場合に限り、それらの号に属する。
⑶ 化学的に変性させた重合体は、当該重合体がより明確に他の号に該当しない場合に限り、「その他のもの」を定める号に属する。
⑷ ⑴、⑵及び⑶のいずれにも該当しない重合体は、一連の号中の他の号のうち、当該重合体を構成するいずれのコモノマーユニットをも重量において上回る単量体ユニットの重合体が属する号に属する。この場合において、同一の号に属する重合体を構成する単量体ユニットは、一のものとみなしその重量を合計するとともに、当該一連の号に属する重合体を構成するコモノマーユニット同士のみの重量を比較する。

⒝ 一連の号中に「その他のもの」を定める号がない場合には、次に定めるところによる。
⑴ 重合体は、当該重合体を構成するいずれのコモノマーユニットをも重量において上回る単量体ユニットの重合体が属する号に属する。この場合において、同一の号に属する重合体を構成する単量体ユニットは、一のものとみなしその重量を合計するとともに、当該一連の号に属する重合体を構成するコモノマーユニット同士のみの重量を比較する。
⑵ 化学的に変性させた重合体は、化学的に変性させていない重合体が属する号に属する。

 ポリマーブレンドは、これを構成する単量体ユニットを同一の割合で有する重合体が属する号に属する。

 この号注では、「この類の各項において重合体(共重合体を含む。)及び化学的に変性させた重合体は、次に定めるところによりその所属を決定する。」とあり、HS分類の中に「その他のもの」という号のある場合と、無い場合の2つに分けて定義しています。
 ここで注意すべきことは「その他のアミノ樹脂」、「その他のポリエステル」とるのは、「その他のもの」ではないことです。
 また、「その他のもの」という号のある場合と、無い場合は、まず、一段落ちの号(HS5桁)において決定し、その後、2段落ちの号(HS6桁)で検討を行ないます。けっして、1段落ちの号と2段落ちの号に跨って検討を行ってはなりません。
 具体的にどのように分類するかについては、分かりにくいと思いますので、参考までに、添付のPDFを参照していただければと思います。

 プラスチックの分類体系(39.01~39.06)
 プラスチックの分類体系(39.07~39.13)

 なお、表中で「95」と表記のある号(6桁分類)は、共重合体の中で表示のあるポリマーのポリマーユニットの重量が全重量の95%以上含有されていることを表し、また、「Max」と表記のある号は、表示のあるポリマーのポリマーユニットの重量が共重合体中で他のポリマーユニットの重量と比べて最大であることを示します。

「その他のもの」を定める号がある場合

 細分に「その他のもの」のある項においては、次のように分類を行います。

接頭語として「ポリ」が付された重合体

(1)号において接頭語として「ポリ」が付された重合体(例えば、ポリエチレン、ポリアミド-6,6)は、重合体を構成する一の単量体ユニット又は当該重合体の名称が由来する二以上の単量体ユニットが全重量の95%以上を占める重合体のみをいう。

  • 例1
     エチレン単量体ユニット96%とプロピレン単量体ユニット4%から構成され比重が0.94以上のものは、エチレン単量体ユニットが重合体の全重量に対して95%以上を占め、一連の号中に「その他のもの」を定める号が存在するので、3901.20号に分類する。(39類注4の規定により、共重合体ではなく、重合体として取り扱われる。)
  • 例2
     3911.10号のポリテルペンは、テルペン類を全て合計した単量体ユニットの重量が重合体の重量の95%以上含まれていなければならない。

第3901.30号、第3901.40号、第3903.20号、第3903.30号、第3904.30号の共重合体

  1. 第3901.30号:エチレン-酢酸ビニル共重合体
  2. 第3901.40号:エチレン-アルファーオレフィン共重合体
  3. 第3903.20号:スチレン-アクリロニトリル共重合体
  4. 第3903.30号:アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体
  5. 第3904.30号:塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体
  • 例1
     塩化ビニル61%、酢酸ビニル35%及び無水マレイン酸4%の各単量体ユニットから構成される共重合体(39.04項の重合体)は、塩化ビニル及び酢酸ビニル単量体ユニットを合計すると全重合体の96%を占めるので、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体として3904.30号に分類する
  • 例2
     スチレン60%、アクリロニトリル30%及びビニルトルエン10%の各単量体ユニットから構成される共重合体(39.03項の重合体)は、スチレンとアクリロニトリルを単量体ユニットとして合計したものが、重合体の90%だけであるので、3903.90号(「その他のもの」を定める号)に分類され、3903.20号には分類されない。

化学的に変性させた重合体

(3)化学的に変性させた重合体は、当該重合体がより明確に他の号に該当しない場合に限り、「その他のもの」を定める号に属する。

 化学的に変性させた重合体は、化学的に変性させた重合体がより特殊な限定をした号に含まれない限り、「その他のもの」を定める号に分類されます。項の分類とは規定が異なるので注意が必要です。

上記に該当しない重合体

(4)(1)、(2)及び(3)のいずれにも該当しない重合体は、一連の号中の他の号のうち、当該重合体を構成するいずれのコモノマーユニットをも重量において上回る単量体ユニットの重合体が属する号に属する。この場合において、同一の号に属する重合体を構成する単量体ユニットは、一のものとみなしその重量を合計するとともに、当該一連の号に属する重合体を構成するコモノマーユニット同士のみの重量を比較する。

  • 例1
     エチレン40%及びプロピレン60%の各単量体ユニットから構成されるエチレン-プロピレン共重合体(重合体は39.02項に分類される。)は、プロピレンが考慮すべき唯一の構成単量体ユニットであるので、プロピレンの共重合体として3902.30号に分類される。
  • 例2
     エチレン45%、プロピレン35%及びイソブチレン20%の各単量体ユニットから構成される共重合体(重合体は39.02項に分類される。)は、プロピレン及びイソブチレンのみが比較されるべき(エチレンは無視する。)でありさらにプロピレンはイソブチレンより多くの重量を占めるので3902.30号に分類される。
  • 例3
     エチレン45%、イソブチレン35%及びプロピレン20%の各単量体ユニットから構成される共重合体(重合体は39.02項に分類される。)は、イソブチレンとプロピレンが比較されるべきで、またイソブチレンがプロピレンに比べて大きい重量を占めるので、3902.90号に分類される。

一連の号中に「その他のもの」を定める号がない場合

(1)重合体は、当該重合体を構成するいずれのコモノマーユニットをも重量において上回る単量体ユニットの重合体が属する号に属する。この場合において、同一の号に属する重合体を構成する単量体ユニットは、一のものとみなしその重量を合計するとともに、当該一連の号に属する重合体を構成するコモノマーユニット同士のみの重量を比較する。

 これは、第39類注4で重合体のHS4桁(項のレベル)での分類に対して示した分類方法と同様です。

(例)
 尿素及びフェノールのホルムアルヒデドとの共重縮合物(重合体は39.09項に分類される。)は、一連の号中に「その他のもの」を定める号が存在しないので、尿素単量体ユニットがフェノール単量体ユニットより多いならば3909.10号に、フェノール単量体ユニットのほうが多いときは3909.40号に分類する。

化学的に変性させた重合体

(2)化学的に変性させた重合体は、化学的に変性させていない重合体が属する号に属する。

(例)
 アセチル化フェノール樹脂(重合体は39.09項に分類する。)は、一連の号中に「その他のもの」を定める号がないので、フェノール樹脂として3909.40号に分類する。

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