第39類は、合成重合体と天然重合体を分類する類です。
第39.01項から第39.14項までが、合成重合体と天然重合体の一次製品が分類され、第39.15項から第39.26項までにプラスチックのくず、半製品及び製品が分類されます。
目次
- HS品目表におけるプラスチックの定義
- 第39類に分類される重合体一次製品の分類体系
- 2以上の構成要素からなるプラスチック製品・ゴム製品の製造用セットの分類
- 第39類に分類されない重合体
- プラスチック製の機械類(第16部)及び輸送用機器(第17部)の部分品のHSコード
HS品目表におけるプラスチックの定義
第39類注1では、「プラスチック」を次のように定義しています。
この表において「プラスチック」とは、第39.01項から第39.14項までの材料で、重合の段階又はその後の段階で、加熱、加圧その他の外部の作用(必要に応じ溶剤又は可塑剤を加えることができる。)の下で、鋳造、押出し、圧延その他の方法により成形することができ、かつ、外部の作用の除去後もその形を維持することができるものをいう。
この表においてプラスチックには、バルカナイズドファイバーを含むものとし、第11部の紡織用繊維とみなされる材料を含まない。
HSでは、「この表において」と記載されていると、当該類、項の分類だけでなく他の類の分類にも適用されることとなります。
例:64.02項は次の様に規定されています。
「その他の履物(本底及び甲がゴム製又はプラスチック製のものに限る。)」
ここでいうプラスチックとは、上記の第39類注1で規定されている物品ということになります。
バルカナイズドファイバーとは、木材パルプや綿をシート状にしたものを、酸化亜鉛で処理し、圧縮、成型して得られる高絶縁性を有する物質です。
また、第11部に分類されるポリエステル、ナイロン等の合成繊維は、化学的には第39類の合成高分子化合物と同じですし、天然繊維でも綿は第39.12項と同じセルロースでできています。しかし、HS分類では紡織用繊維は「プラスチック」として取り扱いません。
第39類に分類される重合体一次製品の分類体系
第39類の高分子化合物の一次製品(第39.01項から第39.14項)の分類の概要を下記の表にまとめましたので、ダウンロードして参考にしていただければと思います。
なお、表中で「95」と表記のある号(6桁分類)は、共重合体の中で表示のあるポリマーの単量体ユニットの重量が全重量の95%以上含有されていることを表し、また、「Max」と表記のある号は、表示のあるポリマーの単量体ユニット又はコモノマーユニットの重量が共重合体中で他の単量体ユニットの重量と比べて最大であることを示します。
なお、合成重合体で平均5以上の単量体から成るものやプレポリマー等の低重合度のポリマーも第39類に含まれていますのでご注意ください。(詳しくは「第39類に分類される合成重合体」をご参照ください。)
一次製品とは
第39類の第39.01項から第39.14項までに分類される「一次製品(in primary forms)」は、第39類注6で次の物品に限ることが規定されています。
第39.01項から第39.14項までにおいて一次製品は、次の形状の物品に限る。
(a)液状又はペースト状のもの(ディスパーション(乳化し又は懸濁しているもの)及び溶液を含む。)
(b)塊(不規則な形のものに限る。)、粉(モールディングパウダーを含む。)、粒、フレークその他これらに類する形状のもの
従って、プラスチックを板や線、棒等に成形したものは、第39.15項以降の項に分類されます。ここでの分類上の注意点は下記の通りです。
- 液状又はペースト状のもの
硬化に必要な物質(硬化剤(架橋剤)その他の共反応剤及び促進剤等)の他に、主として最終物品に特別な物性その他の所望の特性を与えるために、可塑剤、安定剤、充てん料及び着色料のような他の物質を含んでいてもよいことになっています。 - 粉、粒及びフレーク
充てん料(木粉、セルロース、紡織用繊維、鉱物性物質、でん粉等)、着色料のほか上記a.に掲げた他の物質を含有していてもよいこととなています。 - 塊(不規則な形のものに限る。)
上記に掲げた重点量、着色料等を含んでいても良い。しかし、規則正しい幾何学的形状の塊は一次製品に該当せず、「板、シート、フィルム、はく及びストリップ」に含まれます。
なお、HS品目表で、同じく「一次製品」という言葉を使っていても、他の類では異なる定義となっていますので注意が必要です。ゴムの一次製品は第40類注3で規定されています。また、貴金属が分類される71類では、日本語では同じ「一次製品」という言葉を使用していますが、英語では、「in semi-manufactured forms」となっており、全く異なる用語を使用しています。
2以上の独立した構成要素からなるセットの分類
プラスチック製品の製造やゴム製品の製造のために、2種類以上の物質を予めセットとして販売している場合があります。例えば、右の図のようにポリウレタン製品の製造のために第39類に属するA液とB液をセットにして販売しているような場合です。このような商品については、HS品目表では通常A液とB液を別々に分類しますが、第7部(第39類のプラスチック製品及び第40類のゴム製品)においては、第7部注1において、次のように規定し、A液とB液を一括して1つの項に分類することを可能にしています。
二以上の独立した構成成分(その一部又は全部がこの部に属し、かつ、第6部又はこの部の生産品を得るために相互に混合するものに限る。)から成るセットにした物品は、当該構成成分が次のすべての要件を満たす場合に限り、当該生産品が属する項に属する。
- 取りそろえた状態からみて、詰め替えることなく共に使用するためのものであることが明らかに認められること。
- 共に提示するものであること。
- 当該構成成分の性質又は相対的な量の比のいずれかにより互いに補完し合うものであることが認められること。
上記の注は、二以上の独立した構成成分(その一部又は全部が第7部に属するものに限る。)から成るセットにした物品の分類について規定しているものです。ただし、セットにした生産品のうち、当該構成成分が第6部又は第7部の物品を得るために共に混合するためのものに限られます。
また、前もって混合することなく順次使用するものは、本規定は適用されず、それぞれ別々に分類します。
第6部の独立した構成要素からなるセットの分類
第6部(化学工業製品)注3に上記第7部注1と同様の規定があります。
二以上の独立した構成成分(その一部又は全部がこの部に属し、かつ、この部又は第7部の生産品を得るために相互に混合するものに限る。)から成るセットにした物品は、当該構成成分が次の全ての要件を満たす場合に限り、当該生産品が属する項に属する。
(a)取りそろえた状態からみて、詰め替えることなく共に使用するためのものであることが明らかに認められること。
(b)共に提示するものであること。
(c)当該構成成分の性質又は相対的な量の比のいずれかにより互いに補完し合うものであることが認められること。
この規定により、上記のポリウレタン製造用のセットが、共に第29類や第38類の物品のからなるものであっても、第7部注1を適用した場合と同じように分類を行うことが出来ます。
小売用のセットの取扱い
第6部注3及び第7部注1の規定を適用するセットの代表が、A液(エポキシ樹脂を主とした主剤)及びB液(変成ポリアミン等からなる硬化剤)の2種類の合成重合体を別々の容器に入れて、小売用に一つに包装した接着剤です。これらは、接着剤として第35.06項に分類されます。
通則3(a)を適用する小売用のセット
小売用のセットのうち、前もって混合することなく順次使用するものは、第6部注3及び第7部注1の規定は適用されないので、このような物品は通常、小売用のセットとして一般に通則3(b)を適用してその所属を決定します。
第39類に分類されない重合体
第39類に分類されない重合体には次のようなものがあります。
- 第 27.10 項又は第 34.03 項の調製潤滑剤
- 第 27.12 項又は第 34.04 項のろう
- 化学的に単一の有機化合物(第 29 類)
- ヘパリン及びその塩(第 30.01 項)
- 第 39.01 項から 39.13 項までの物品を揮発性有機溶剤に溶かした溶液(溶剤の含有量が全重量の 50%を超えるものに限るものとし、コロジオンを除く。第 32.08 項)及び第 32.12項のスタンプ用のはく
- 第 34.02 項の有機界面活性剤及び調製品
- ランガム及びエステルガム(第 38.06 項参照)
- 鉱物油(ガソリンを含む。)用又は鉱物油と同じ目的に使用するその他の液体用の調製添加剤(第 38.11 項)
- ポリグリコール、シリコーンその他の第 39 類の重合体をもととした調製液圧液(第 38.19項)
- 診断用又は理化学用の試薬(プラスチック製の支持体を使用したものに限る。第 38.22 項)
- 第 40 類の合成ゴム及びその製品
下記の物品については、第39類に分類される合成重合体か否かを決定するために、数値基準を含めた定義が定められています。
有機界面活性剤
アルキルポリエーテル硫酸塩等、低重合度の合成重合体には界面活性剤の作用を有するものがあります。第34類注3において、第34.02項に分類される有機界面活性剤を定義しており、この要件を満たす合成重合体は第34.02項に分類されます。
第 34.02 項において有機界面活性剤は、温度 20 度において 0.5%の濃度で水と混合し、同温度で1時間放置した場合において、次のいずれの要件も満たす物品をいう。
- 不溶物を析出することなく透明若しくは半透明の液体又は安定したエマルジョンを生成すること。
- 水の表面張力を1メートルにつき 0.045 ニュートン(1センチメートルにつき 45 ダイン)以下に低下させること。
合成ロウ
第27.12項には、パラフィン等の鉱物性ロウが分類され、これに類似した、例えば、炭化水素を主成分としたフィッシャートロプシュろうが分類されます。
第34.04項には、低重合度のポリエチレン、ポリエチレングリコール等の合成重合体からなる人造ロウ(合成ロウ)が分類されます。第34.04項に分類される人造ロウは次の条件を満たすことが必要で、この条件に合致しない合成重合体は一般に第39類に分類されます。
関税率表解説 第34.04項
- 滴点が 40 度を超えること、かつ、
- その滴点より 10 度高い温度で、回転粘度計で測定した粘度が 10Pa・s(又は 10,000cP)以下であること
この滴点及び回転粘度計を測定するには、特別の機器が必要となります。
低重合度のポリエチレン、ポリエチレングリコール等の合成重合体については、税関や輸入者から滴点及び粘度に関する情報が要求されることがあります。
合成ゴム
ポリブタジエンやポリイソプレン等の不飽和の合成重合体は、一般には合成ゴムとして知られています。下記の第40類注4の規定を満たす合成重合体は合成ゴムとして第40類に分類され、満たさない合成重合体は第39類に分類されます。
詳しくは、「ゴム及びゴム製品のHSコード(第40類)」のページの「HS品目表における合成ゴムの定義(第40類注4)」の記事をご覧ください。
- 不飽和の合成物質で、硫黄による加硫により不可逆的に非熱可塑性物質とすることができ、かつ、この非熱可塑性物質が、温度 18 度から 29 度までにおいて、もとの長さの3倍に伸ばしても切れず、もとの長さの2倍に伸ばした後5分以内にもとの長さの 1.5 倍以下に戻るもの。この試験においては、加硫助剤、加硫促進剤その他の架橋反応に必要な物質を加えることができる(中略)。ただし、エキステンダー、可塑剤、充てん料その他の架橋反応に必要でない物質の存在は許容されない。
- チオプラスト(TM)
- 天然ゴムにプラスチックをグラフトし又は混合することにより変性させたもの、天然ゴムを解重合したもの及び不飽和の合成物質と飽和の合成高重合体との混合物で、a.に定める加硫、伸長性及び復元性に係る要件を満たすもの
上記a.のゴム試験は、実際に合成重合体を加硫し、ゴム状の物質を製造したうえで、ゴムとしての性質(力を加えると伸び、放すと元の形に戻る)を有するか否かを試験するものです。ポリブタジエンやポリイソプレン等、合成ゴムとして知られている合成重合体でも、上記の条件を満たさなければ、第39類に分類されます。
ここで注意する必要があるのは、上記の注4(a)の既定で、「不飽和の合成物質で、硫黄による加硫により不可逆的に非熱可塑性物質とすること」が条件となっていることです。そもそも、重合体中に二重結合や三重結合を有していない合成重合体はこの規定を満たしません。ポリイソブチレンゴム、シリコンゴム、ウレタンゴムやフッ素ゴムは一般に「不飽和の合成物質で、硫黄による加硫により不可逆的に非熱可塑性物質とすることができ」という条件を満たすことが出来ず、合成重合体のエラストマーとして第39類に分類されます。
プラスチック製の機械類(第16部)及び輸送用機器(第17部)の部分品のHSコード
プラスチック製の第16部の機械類(第84類及び第85類)の部分品のHSコード
第16部の機械類(第84類及び第85類)の部分品として使用するプラスチック製品は、第39類注2(s)で第39類から除外されています。
一方、第16部注1で、「 (a) 伝動用又はコンベヤ用のベルト及びベルチングで第 39 類のプラスチック製のもの」及び「(g)第 15 部の注2の卑金属製のはん用性の部分品(第 15 部参照)及びプラスチック製のこれに類する物品(第 39 類参照)」は第16部から除外されています。
従って、第16部の機械類(第84類及び第85類)の部分品として使用するプラスチック製品は、原則として機械の部分品として第16部に分類されるが、伝動用のベルトやネジ、ワッシャー等の汎用性の部分品は第39類に分類されることとなります。
プラスチック製の第17部の車両・航空機の部分品のHSコード
プラスチック製の第17部の車両・航空機の部分品は第39類注2(t)で第39類から除外されています。
一方、第17部注1で、「(a)ジョイント、ワッシャーその他これらに類する物品(構成する材料により該当する項又は第 84.84 項に属する。)」及び「(b)第 15 部の注2の卑金属製のはん用性の部分品(第 15 部参照)及びプラスチック製のこれに類する物品(第 39 類参照)」は第17部から除外されています。
従って、第17部の車両・航空機の部分品として使用するプラスチック製品は、原則として車両・航空機の部分品として第17部に分類されるが、ジョイント、ワッシャー、汎用性の部分品は第39類に分類されることとなります。
ゴム製の機械類及び輸送用機器の部分品のHSコード (まとめ)
上の表に記載している、「原則2」、「原則3~5」、「原則4」、「番外」については、「機械類の部分品のHSコード分類5原則」及び「自動車等、輸送機器(第17部)の部分品HSコード分類4原則」のページをご参照ください。
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