プラントのように多数の構成要素からなり、輸入国において機械を組み立てる場合、HS番号の分類方法には幾つかのパターンが考えられます。HS品目表に関する通則2(a)の適用や、第16部注3又は注4の適用により、プラント全体として一括分類が可能となる場合があります。
 分類方法により、輸出入手続き、輸出入申告方法が異なる場合があり、また、EPAを利用する場合には、特定原産地証明書の取得、原産品申告書の内容も異なることになる可能性があります。関税節減の額も分類方法により異なることともありますので、どのように分類していくかは輸入国の制度も考慮して検討しましょう。
 特に日EU・EPAでは、プラントの輸入に際して、複数回に分割して船積みする場合について、原産地証明に関する特別の規定が設けられており、EPA税率の適用に対して便宜が図られています。

目次

  1. プラント貨物への通則2(a)の適用
  2. 複合機械の分類 - 第16部注3
  3. 機能ユニット(Functional Unit)の分類 ー 第16部注4
  4. 複合機械と機能ユニットの第90類の貨物への適用
  5. プレハブ住宅(第94.06項)の関税分類
  6. EPA(FTA)と通則2(a)(組立てていない機械)の関係
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プラント貨物への通則2(a)の適用

 プラントを輸出入する際には、輸送上の必要性から未完成のまま、又は、分解して船積みを行うことがあります。この際、関税分類においては、通常、通則2(a)を適用して、組立て完了後の機器として分類することとなります。(提示の際に組立ててないもの及び分解してあるものの所属)
 多数の部分品からなるプラントの場合、それらの部分品一つ一つにHS番号を割り振り、それぞれのHS番号ごとの申告価格を計算することは非常に大きな事務負担となります。しかし、通則2(a)を適用できれば、組立て完了後の機器として一つのHS番号で申告できるので、輸出入申告に関するコストを大きく削減することが出来ます。
 さらに、プラントの全ての構成要素が揃っていない場合でも、ある特定の機器としての重要な特性を有する部分が提示される場合には、完成品と同じ項に分類できます。(未完成の物品の所属)
 通則2(a)をうまく活用することは、プラントの輸出入を行う際に重要な要素となります。
 但し、プラントの構成要素に原産地の異なる部分品が含まれている際には、場合によっては通則2(a)の適用が認められない可能性もありますので、詳しくは輸入国の税関にご相談ください。

機器を分割して船積みする場合の取扱い

 プラントは輸送の都合上、複数回の船積みに分割して輸送される場合があります。通則2(a)の規定は、「提示の際に組立ててないもの及び分解してあるもの」は組立て完了後の機器として分類することとされています。輸送上の都合で複数回の船積みに分割して輸送される場合、この「提示の際に」という言葉が問題となりますが、その解釈については、次の3通りがあると考えられます。

  1. 貨物の到着毎に提示が必要との考え方
     貨物の到着毎に輸入申告が必要であり、個々の船積みで完成品としての特性を有しない貨物については、通則2(a)の適用は認められない。この場合は、個々の船積みのインボイスに基づきプラントの構成要素一つ一つについて関税分類を行い、輸入申告を行う必要がある。関税分類が非常に煩雑となるデメリットがある。
  2. 全ての貨物が到着後に一括して提示が可能との考え方
     全ての貨物が到着後に、通則2(a)を適用して輸入申告を行う。その際、輸入申告前の貨物の国内引取は認められない。
  3. 貨物の到着毎に確認を行うが、最終的に全体として提示がなされていればよいとの考え方
     事前に税関への申し出を行うことにより、到着時に貨物の国内引取りが行うことが出来るほか、通則2(a)を適用して組立て完了後の機器として一括して一つの項(号)に分類して輸入申告を行うことができる。

 日本とEUにおいては、原則は上記1の取扱いとなりますが、事前に税関に申し出を行うことにより、上記3の取扱いが可能となり、輸入申告を大幅に簡素化することが可能です。これは、税関への事前の申し出がない限り、個々の船積み貨物の確認を行う際に、通則2(a)を適用できる貨物かどうかの確認ができないという理由によるものと思われます。

機器を分割して輸入する場合の日本の取扱い

 国内分類例規の第16部の「分割して輸入申告される機械類の取扱いについて」において、次のように規定されています。

(1)同一契約の機械類を輸送の都合等により、輸入者が数回にわたり分割して輸入申告を行った場合又は分割して輸入申告を希望する場合には、輸入申告された貨物が当該契約の一部であり、かつ、後続する貨物とともに当該機械類の重要な特性を有するものであることを確認することができることを条件として、同契約における最終貨物の到着を待って、当該機械類が属する号に一括して分類することとしてさしつかえない。
(2)上記(1)の条件を満たさない場合には、それぞれ該当する号に属する。

 この分類例規に従えば、貨物の到着の都度、許可前引取(BP:関税法第第73条)を行うことにより貨物を国内に引き取ることが出来ます。最終貨物が到着した時に一括して輸入申告(BPした貨物のIBPを含む。)を行います。BPを行うためには担保を税関に差し出す必要がありますので、担保にかかるコストと、輸入手続きの簡素化により節約できるコストを比較して、どちらの輸入手続きを行うか決めることになります。
 なお、国内分類例規の第16部にはプラントと共に輸入する予備部品、工具類及び附属品についても、詳細な分類方法についての規定がありますので、参考にして頂ければと思います。

機械を分割して輸入する場合のEUの取扱い

 日本の国内分類例規と同じような規定がEUの「EXPLANATORY NOTES TO THE COMBINED NOMENCLATURE OF THE EUROPEAN UNION」(日本の国内分類例規に相当)中の「SECTION XVI Additional note 3」にあります。
 複数の船積みに分割して輸送される場合において、組立て完了後の機器として一括して一つの項(号)に分類して輸入通関を希望する場合には、事前に文書により税関に申し出を行う必要があります。

A machine in a disassembled or unassembled state may be imported in several consignments over a period of time, if this is necessary for convenience of trade or transport. 
In order to be able to declare the different constituent parts under the same tariff heading or subheading as the assembled machine, the declarant must make a request in writing to the customs post not later than the first consignment and attach:

(a)a diagram or, if necessary several diagrams, of the machine showing the serial numbers of the most important constituent parts;

(b)a general inventory containing an indication of the characteristics and approximate weights of the different parts and the serial numbers of the principal parts referred to above.

The application may be accepted only in fulfilment of a contract for the supply or a machine which can be regarded as complete for the purposes of the Combined Nomenclature. 
All the constituent parts must be imported through the same entry point within the allowed time. However, in special cases, the competent authorities may authorise importation through several points of entry. This time limit may not be exceeded unless a reasoned and justified request for an extension is made to the competent authorities. 
Upon each partial importation, a list of the parts making up the consignment with references to the aforementioned general inventory must be provided. The customs declaration for each consignment must contain descriptions of both the part or parts making up the consignment and the complete machine.

EXPLANATORY NOTES TO THE COMBINED NOMENCLATURE OF THE EUROPEAN UNION Additional note 3 to SECTION XVI
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複合機械の分類 - 第16部注3

 複数の構成要素からなる機器の分類方法は、第16部注3及び注4に規定されています。
 第16部注3では、複数の機械を結合して一つの複合機械を構成している場合、その主たる機械の機能により分類を行うことを規定しています。

 二以上の機械を結合して一の複合機械を構成するもの及び二以上の補完的又は選択的な機能を有する機械は、文脈により別に解釈される場合を除くほか、主たる機能に基づいてその所属を決定する。

 この部注を適用して分類できる複合機械の事例としては、次のようなものがあります。

  • 紙の折畳み用の補助機械を結合した印刷機械(84.43)
  • 工業用炉に持上げ用又は荷扱い用の機械を結合したもの(84.17 又は85.14)
  • 水処理用複合機器(8421.21)
     本品は、同床に取り付けられた2つのフィルター(プレフィルター及びカーボンフィルター)、イオナイザー及び制御装置から成る。この機器において、水は沈澱物を除去するプレフィルターを通り、ろ過された水は、次に塩素、バクテリア及び臭気を除去するカーボンフィルターを通る。処理された水は、更に、陽イオンと陰イオンに分離するためイオン化される。

 なお、この注の後段の規定は、単一の機械で複数の機能を有する多機能機械の分類方法に関するものです。

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機能ユニット(Functional Unit)の分類 ー 第16部注4

 第16部注4を利用すると、複数の機械で構成される機械が全体として一つの第84類又は第85類に規定された固有の機能を有する機械、即ち、機能ユニットと認められる場合には、構成する個々の機械を含めて、全体を機能ユニットとして一つの項に分類することが出来ます。

 個別の構成機器から成る機械(機械を結合したものを含む。)については、当該構成機器(分離しているかいないか又は配管、伝動装置、電線その他の装置により相互に接続しているかいないかを問わない。)が第84 類又は第85 類のいずれかの項に明確に規定された単一の機能を分担して有している場合には、当該機械は、当該単一の機能に基づいてその所属を決定する。

 上記の日本語の注は非常に難解ですが、英語の方は日本語ほど難解ではないので、下記にご参考までにWCOのホームページから、同じ部分を引用します。

 Where a machine (including a combination of machines) consists of individual components (whether separate or interconnected by piping, by transmission devices, by electric cables or by other devices) intended to contribute together to a clearly defined function covered by one of the headings in Chapter 84 or Chapter 85, then the whole falls to be classified in the heading appropriate to that function.

 ここで、機能ユニットを構成する各種の構成機器が分離しているかいないか又は配管(空気、圧縮ガス、油等を送るため)、動力伝達装置、電線その他の装置により相互に接続してあるかないかを問わず、当該機能ユニットは、その機能に基づいて分類を決定することとなります。
 また、「明確に規定された単一の機能を分担して有している場合」とは、機能ユニット全体として、特定の機能を遂行する機械及び機械の結合した機能ユニットを意味し、全体の機能を分担しない補助的機能を遂行する機械又は装置を含まないこととなっています。
 機能ユニットの例には次のようなものがあります。

  • 液体原動機(主として液体ポンプ、電動機、調整弁及び油タンクから成るもの)、液体シリンダー及びシリンダーと液体原動機とを結合するための管又はホースから成る液圧装置(84.12)
  • かんがい装置(制御装置(フィルター、注入口、流量調整弁等)、地下配管、地表排水機構等から成るもの)(84.24)
  • 醸造機械(特に、発芽用機械、麦芽破砕機、仕込槽及びろ過槽から成るもの)(84.38)。ただし、瓶詰機、ラベル張付機等の補助装置は含まれず、それぞれ該当する項に属する。
  • アスファルトプラント(フィードホッパー、コンベヤ、乾燥機、振動ふるい、混合機、貯蔵箱、制御装置等の個々の構成機器を相互に連結したもの)(84.74)
  • フィラメント電球の組立て機械(構成部分がコンベアにより相互に結合されており、かつ、ガラスの熱処理装置、ポンプ及び電球の試験装置からなるもの)(84.75)
  • 溶接機械(溶接用のヘッド又はトング及び電流供給用のトランスフォーマー、発電機又は整流器)(85.15)
  • 受信機、パラボラアンテナ用反射鏡、反射鏡用制御回転装置、フィードホーン(導波管)、ポララザー、低雑音増幅機能を有するダウンコンバーター及び赤外線遠隔操作機から成る衛星テレビジョン受信システム(85.28)

 但し、機能ユニットを構成する機器が異なる国で製造された機器であった場合、機能ユニットとして一括分類が認められないことが考えられますので注意が必要です。

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複合機械と機能ユニットの第90類の貨物への適用

 第90類注3に、「第16部の注3及び注4の規定は、この類においても適用する。」と規定されています。従って、上記の複合機械や機能ユニットの規定は第90類の貨物につても適用可能です。
 国際分類例規には、次のような測定装置が機能ユニットの適用事例として掲載されています。

第9032.89号
System for controlling and monitoring paper
(紙の製造工程において紙を監視及び制御する装置)
次の構成要素から成る。

  1. 紙を横切って動くセンサー・ヘッドを有するスキャナー:本品は、一以上のセンサー及び一つのマイクロプロセッサを有し、センサーは製造工程を監視し製品を測定する。
  2. マイクロプロセッサを自蔵するプロセス・サポート・ステーション:スキャナーとその他の残りのシステムとを結合するもの
  3. 第84.71項のセントラル・コンピューター・ユニット:これは、制御装置であり、目標値と測定値を比較し、紙の技術仕様(例えば、厚さ及び湿度)を調整するための電気信号を作動機器に送信するものである。
  4. マイクロプロセッサを自蔵し、ビデオディスプレイとキーボードを有するオペレーター・ステーション
  5. マイクロプロセッサを自蔵するプリンター・プロッター
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プレハブ住宅(第94.06項)の関税分類

 通則2(a)の適用を前提とし、かつ、いち早く機能ユニットの考え方を取り入れていたのが、第94.06項に分類されるプレハブ住宅です。
 プレハブ住宅とは、第94類注4で次のように規定されています。

第94.06 項において「プレハブ建築物」とは、工場で完成した建築物及び現場で組み立てて完成することが可能な要素としてまとめて提示する建築物(例えば、家屋、作業現場の宿泊設備、事務所、学校、店舗、物置、ガレージその他これらに類する建築物)をいう。

 第94.06項には、通常プレハブ住宅に装備されている備品・付属品(電気用附属品(電線、ソケット、スイッチ、遮断器、ベル等)、暖房用又は空気調和用の機器(ボイラー、ラジエーター、エアコンディショナー等)、衛生用器具(浴槽、シャワー、湯沸器等)、台所用器具(流し台、フード、クッカー等)及び組み込んである又は組み込むように設計してある家具(食器棚等))も一括して分類できるので大幅に輸入申告を簡素化することが出来ます。
 また、プレハブ住宅の日本の関税率は無税ですが、プレハブ住宅に使用する構成要素には、木製の建材やプラスチック製の衛生用品等、有税の物品も多いので、プレハブ住宅として一括して輸入すると関税削減効果も得られることとなります。
 日本への輸入の際には、プラント貨物と同様に、輸送の都合上、複数回の船積みに分割して輸入する際においても、貨物の到着の都度、許可前引取(BP:関税法第第73条)を行うことにより第94.06項に一括して分類して輸入申告を行うことが出来ます。(第94類国内分類例規

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EPA(FTA)と通則2(a)(組立てていない機械)の関係

日EU・EPAの場合は船積を分割しても通則2(a)を利用できる

 日EU・EPAにおいては、通則2(a)に規定する組み立ててないか又は分解してある機械類のEPAの利用に関して、特別の規定を設け、分割して船積みを行う場合でも、単一の原産品申告書で有効とされています。

日EU・EPA 第3.17条第6項
 統一システムの解釈に関する通則2(a)に規定する組み立ててないか又は分解してある産品であって、統一システムの第15部から第21部までに該当するものが輸入者の要求により複数回に分けて輸入される場合には、当該産品についての単一の原産地に関する申告については、輸入締約国の税関当局が定める条件に従って使用することができる。

 現実的には、日本の機械類の関税は無税ですので、日本に輸入する際にこの規定を使用することはないと思います。
 EUへ輸出する際には、この規定の活用により、プラントの原産品申告書の作成が容易になるのではないかと思われます。その際には、複数の船積み貨物を一括して一つのHS番号に分類できるように、上記のEUの規則(ECTION XVI Additional note 3)に沿って税関に前もって申し出る必要がありますので、活用するためには輸入者との連携が必須と思われます。

第三者証明のEPA(FTA)における通則2(a)の利用

 第三者証明のEPA(FTA)の場合も、原産地証明を行う物品の範囲と一つの物品として関税分類を行う単位は同一ですので、通則2(a)や機能ユニットの規定は利用可能です。
 しかしながら、第3者証明のEPA(FTA)の場合は、特定原産地証明書は船積毎に発行されるため、分割して輸出する場合においては、船積毎に原産性を判断することになります。(原則、上記のMETHOD 1)の利用)

通則2(a)を適用してEPAを利用する場合の注意事項

 通則2(a)を利用して組み立ててないか又は分解してある機械類を輸出する場合、表面的には原産地基準を満たしているとしても、実質的な加工・製造が日本で行われていない場合は、EPAを適用することはできませんのでご注意ください。

十分な変更とはみなされない作業又は加工
 (品目別原産地規則を満たしていたとしても、)締約国における産品の生産において、非原産材料に対して次に掲げる一又は二以上の工程のみが行われる場合には、当該産品は、当該締約国の原産品としてはならない。
(略)
(p) 完成した物品若しくは統一システムの解釈に関する通則2(a) の規定に従って完成したものとして分類される物品とするための部品の単純な収集若しくは組立て又は産品の部品への分解

日EU・EPA 第3・4条
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日EU-EPA/TPP11の原産品申告書作成のアドバイス

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